「つかの間の停泊者」展、と称する展覧会が、銀座メゾンエルメスフォーラムにて開催中です。「つかの間の停泊者」、それはいったい何なのでしょう? アーティストたちのトークセッションと内覧会に参加しました。
銀座のメゾンエルメスの中にある「フォーラム」というギャラリースペースにいらしたことは、ありますか? 芸術や技術伝承、 環境問題、教育などにかかわる活動への支援を行うエルメス財団主催のギャラリーです。こちらで現在、アートとエコロジーの実践にフォーカスした「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」のグループ展 ダイアローグ2「つかの間の停泊者」という名の展示が行われています。
内覧会では、出展しているアーティストたちによるトークセッションが行われました。
フランスからニコラ・フロックさんとラファエル・ザルカさん、ニュージーランド出身のケイト・ニュービーさん、そしてパリと千葉を拠点に活動されている保良雄さん。
それぞれ写真、彫刻、陶芸……など、様々なアプローチで作品を発表されています。
お話を伺っていると、それぞれ扱う対象も水、土、木、氷……と様々で「エコロジー」という言葉のもと、その対象の幅広さ、大きさの途方もなさを思い知らされます。
保良さんが「異なる人種間で争いがあっても、誰もが同じ水を必要としている」とお話されていたのが印象に残ったのですが、途方もなく大きな地球環境の中の、小さな存在も、必要なものは同じところにいきつく……。いつになっても穏やかでない世の中ですが、そんなことを感じさせられました。
会場の「フォーラム」は、8階・9階の2フロアで構成され、高い天井を活かし、大胆な展示がされているのも見どころの一つです。
写真家のニコラ・フロックさんによる、海の中を自然光で撮影したモノクロ写真の美しさに目を奪われました。それだけでも静かな迫力のある写真が、大きなプリントで掲示されていると、グンと力をもって迫ってきます。一連のモノクロ写真は”Invisible”というタイトルが付けられていますが、フランスのほか日本の海で撮影されたものも。
同じくニコラ・フロックさんの美しいブルーのグラデーションが続く写真。「水の色、水柱」というタイトルで、海岸から外洋にむかって、水深5~30mの水中を撮影していったものなのだそう。自然のカラーパレットの色合いの深さに驚かされます。
さて、また一方にはたくさんの「何か」がぶら下がっています。ケイト・ニュービーさんが焼いた、たくさんのセラミックがロープにつながれ、ゆらゆらと動きながらかすかな音をたてています。銀座という大都会の真ん中で、こんなにも、風や、土や、荒野なのか海なのか、見えない自然の光景を感じるのは、本当に興味深い体験です。
近くに寄ってみました。一つ一つ、色も大きさも異なるセラミック。そしてその下に目をやると隆起する大地のような床面が広がっていて、どれもテキサスや日本の益子町で製作されたものなのだとか。
ラファエル・ザルカさんの木の組み立て彫刻は、会場内に複数展示され、どれもが見る場所や視点が変わるとその見える形が異なる、不思議な作品。「……なんだろう?」としばし立ち止まってしまいます。
保良雄さんの「Cosmos」という作品。美しい台の上にのったフラコンのようなガラスの中には、何か水のような氷のようなものが入っています。聞けばこれは氷河が溶け出した水、なのだそうです。水が氷河となり、溶け出す、その膨大な時間にも思いを馳せてしまいますし、いま現在あちこちで溶け出している氷の存在も思い出させられます。本当にこの膨大な時間を紡ぐ地球環境の中では、われわれ人間の存在なんて「つかの間の停泊者」であるわけですね。それは人間だけではないですが……。そんなことをぼんやりと思いながらも、壊れそうなガラスの入れ物に入った水は、ただ美しく、静かに波打っています。
ところで、ぐるっと会場を一周してみると、このスペースの貴重さを改めて感じます。先ほども書きましたが、銀座のど真ん中で静かにひとり、アートに触れられる空間。なんて贅沢なんでしょう! しかも予約も入場料も不要です。
以前拝読した竹宮惠子先生の「エルメスの道」の新版には、この銀座のメゾンエルメスが作られるまでのストーリーも登場して、とても興味深く一気読みしてしまいましたが(未読の方は、ぜひ読んでみてください)、伺うたびに素晴らしさを感じさせられるこの場所の、また新たな魅力に触れることができました。
<エコロジー:循環をめぐるダイアローグ 2 「つかの間の停泊者」展>
会期:2024年2月16日(金)~5月31日(金)
開館時間:11:00–19:00(入場は18:30まで)
休館日:不定休
※開館日時は予告なしに変更の可能性があります。
入場料:無料
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
(中央区銀座5-4-1 TEL 03-3569-3300)
主催:エルメス財団
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ