人には聞きにくい「更年期の不安」や「閉経後の体の変化」と上手に向き合うQ&A

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更年期に入ると、体や心にさまざまな変化があらわれ、「これって普通?」「いつまで続くの…」と不安になることもあります。さらに、閉経後の体の変化やデリケートゾーンの悩み、セックスや尿トラブル、メンタルの不調など、人には聞きにくいテーマも増えていきます。この記事では、更年期の基本から閉経後に起こる変化、よくある悩み別の対処法、そしてHRT(ホルモン補充療法)や漢方といった治療・ケア方法まで、知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

まず知っておきたい「更年期の基本」

Q1. どんな症状が出たら「更年期に入った」とわかる?

A1. おもに月経の乱れ始めが目安です。次に体の不調、閉経、後にはメンタルや腟まわり、泌尿器系のトラブルも加わります
「一般的な傾向として最初に月経が乱れ始め、次に体の不調、メンタルの不調、更年期の真ん中で閉経が起き、最後にフェムゾーンや泌尿器系の不調が起きてきます(体より先にメンタルの不調が現れる人も)。ただ、実際にはいつからいつまでが更年期だったのかは、閉経して初めてわかるもの。症状から判断できるものでもありません」

一般的な更年期の時期と症状
1更年期の入り口
月経がバラバラになるなど、出血トラブル。体の不調

2更年期の中頃
閉経。体の不調。メンタルの不調

3更年期の出口
体・メンタルに加えてフェムゾーン・泌尿器系トラブル

Q2. 肌も目も鼻も、実は腟まで乾燥しています。この症状も更年期?

A2. 乾燥はよくある症状です。腟の乾燥感があれば決定的
「更年期には女性ホルモン『エストロゲン』がそれまでになく急に減ってしまうものです。エストロゲンは妊娠に備えるだけでなく、女性の健康と美容に対してさまざまな役割を担っていました。

①女性らしい体つきをつくる ②皮膚や粘膜に潤いを与える ③骨や血管の健康を守る ④脳の機能を保つ…そのほかにもあります。そんななくてはならない守り神がいなくなるので影響は顕著。肌や粘膜の乾燥はとてもわかりやすいエストロゲン減少の証拠です。腟の乾燥感や性交痛などは多数の人が感じています」。

読者アンケートでも、更年期に感じる不調は多岐にわたっていました。体の不調、心の不調、どちらにもかかわる不調などさまざまですが、肌や髪の乾燥や痩せにくいなど美容的なものも多数含まれています。

更年期に感じる代表的な不調
●体の不調
多汗、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、冷え、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、動悸、関節の痛み、手指のこわばり・変形、肌や髪の乾燥、腟の乾燥・性交痛、むくみ、痩せにくさ、下痢・便秘、フェムゾーンのトラブル、排尿トラブルなど

●体と心、両方にかかわる不調
睡眠障害、もの忘れなど

●心の不調
イライラ、不安感、落ち込み、疲労感・倦怠感、やる気が出ないなど

Q3. 今、更年期なのかどうか自分で知る方法はありますか?

A3. おすすめは郵送でできる更年期検査キット。女性ホルモンと排卵機能から判断します
「本来は、更年期の指標となるFSH(卵胞刺激ホルモン)と女性ホルモン値を婦人科で調べてもらうのが一番。でも、相談できる婦人科がないなどの場合は、郵送で検査できるキットを利用するのも手です。指先から採血できるキットなので、自宅にいながら結果がわかります。

OurAge×Webエクラ 更年期検査キット

自宅にいながら郵送でホルモン値などを検査できるcanvasキット。更年期キットでは排卵機能をみる女性ホルモン値と、甲状腺機能をみる甲状腺関連ホルモン値を測定。不調の原因が女性ホルモンにあるのかどうか、更年期と似た症状を起こす甲状腺の不調がないかを調べてくれるセットです。

【検査するのは…】
●FSH(卵胞刺激ホルモン)
●E2(エストロゲン)
●TSH(甲状腺刺激ホルモン)
canvas Menopause Check(更年期)¥19,800/Vitalogue Health
ただ、更年期にはホルモンが揺らいでいるので、数値が乱高下しやすく、たまたま採血した日の状態が数値に表れてしまいます。婦人科でも検査キットでも、1回の検査だけで判断できるものではない前提で受けましょう」。閉経の時期を予測したい場合には、卵巣予備能(※)検査を合わせて行うことも。

※卵巣予備能:卵巣に残っている卵子数の目安

撮影/中川十内<アイキャッチ> スタイリスト/高橋尚美 構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2023/12/31

Q4. 私は更年期のつらい症状があるのに、何もない友人もいます。人によって差が大きいのはなぜ?

A4. 症状の出る要因に個人差があるためです
「症状の現れ方は、外的要因と心身で起こる内的要因が影響します。同じ症状でもあまり負担を感じない人もいれば、耐え切れないと感じる人も…。特にそのとき置かれている環境は症状の起こる原因になりやすく、ストレスが取り除かれると途端に不調が改善する人も多いようです」
不調の出る要因に個人差が!

●そのとき置かれている環境
親の介護、家族関係、人間関係などのストレスは大きな要因

●もともとの体質
抵抗力、免疫力など生まれ持った性質もおおいに関係あり

●気質・性格
生まれつきの気質、培われてきた性格も不調の出やすさに影響

●自律神経の健康度
もともと自律神経が乱れやすい人や、整いにくいなども要因

●ホルモンの揺らぎの大きさ
揺らぎの幅が激しく高低差がある人ほど不調を感じやすい

●ホルモンの揺らぎ期間の長さ
ホルモンの揺らぎ期間が長いほど、不調も長期化しやすい傾向に

Q5. 更年期の年齢を過ぎても症状が続きます。どうしてですか?

A5. 長期化する人もいますが、自律神経失調症なども考えられます
「平均的な閉経年齢が50歳頃ということから、更年期はその前後5年ずつ、45〜55歳頃という目安ができました。これはあくまで目安で、更年期の症状が10年以内に終わるという意味ではありません。数年で『抜けた!』と感じる人もいれば、更年期症状が長期化する人も。

一度治まった症状がしばらくしてぶり返す場合は、女性ホルモンの急減による更年期症状ではなく自律神経失調症など別の要因も考えられます」

構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/1/10

Q6. PMS(月経前症候群)がつらかった人は更年期もつらい?

A6. 今のところ、PMSと更年期症状の関連はないといわれています
「PMSの重さと更年期症状の重さに関係があるというデータは見当たりません。出産の有無やつわりのつらさ、子宮の有無などにも関係がないといわれています」

Q7. 母が更年期症状がつらいと私もそうなる?

A7. 更年期の症状は遺伝はしませんが、生活習慣が似ていると症状の出やすさも似てきます
「症状は遺伝子に関係ありません。ただ、親子で体質や性格が似ていたり生活習慣が似ていると同じような不調が出やすく、遺伝だと思いがちです」

Q8. なぜ更年期にはつらい症状が出るの?

A8. 脳が一気にパニック状態になり、指令がうまく行かなくなるからです
「女性ホルモンが減少すると、脳の視床下部から過剰に卵胞刺激ホルモン(FSH)が出ます。ホルモンによってコントロールされている脳の中は一気にパニック状態に。自律神経がバランスを失って、いわゆる自律神経症状が出る。それが更年期の不調の正体です」

Q9. 生活習慣と更年期症状って関係ある?

A9. 運動、食事、睡眠の習慣が症状を大きく左右します
「睡眠不足や運動不足、栄養不足は更年期の症状を悪化させることにつながります。特に睡眠と運動を見くびらないで。適度な運動は男性ホルモン『テストステロン』の分泌を増やし、脳の機能をアップ。質のよい睡眠は、きちんと体や脳を休ませて自然治癒力・回復力を上げてくれます」
・適度な運動習慣=テストステロンを増やして元気に
・食生活=腸内環境は変化する。腸活次第で症状が改善
・快眠=何はなくとも質のよい睡眠は健康の要

構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/1/15

閉経で体はどう変わる?

Q1. 閉経が早いと遅い、どちらが得ですか?

A1. どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらがいいとは言えません
「女性ホルモンは健康と美を守ってくれるので、長い目で見ると閉経が遅いほうが若さと元気を保つことができます。また閉経が遅いとエストロゲンの恩恵が長く受けられ、生活習慣病や骨粗しょう症などのリスクが下がるのがメリットです。

さらにエストロゲンには血管を守る作用もあるので閉経が遅いと心血管疾患の予防にも。ただ、乳がんなどエストロゲンに依存するがんのリスクは高くなります。また、月経が重かった人にとっては閉経が早いほうが楽。ひと口にどちらがいいとは言えません」

閉経が早い人
●メリット
・月経痛やPMSに悩まされることがなくなる
・月経の煩わしさがなくなり、白い服も楽しめる
・旅行などの計画が立てやすくなる
・子宮筋腫が小さくなり、手術の心配もなくなる

●デメリット
・骨粗しょう症や動脈硬化、高血圧や心血管疾患などの病気リスクが早まる
・肌や髪の潤いが早く失われる

閉経が遅い人
●メリット
・エストロゲンの恩恵が続き、生活習慣病や骨粗しょう症のリスクが低い
・同じく、肌や髪などの潤いが長く保たれる

●デメリット
・月経トラブルからなかなか解放されない
・月経の煩わしさから抜けられない
・子宮筋腫・子宮内膜症・乳がんなどエストロゲン依存性の病気リスクが高まる

Q2. 初潮(初経)が早い人は閉経も早いって本当?

A2. 初経年齢は体重に直結。それと閉経年齢とは関係がないと考えられます
「初潮(初経)は、年齢というよりおもに体重が関係していて、体格のよい女子のほうが早く迎える傾向にあります。この50年ほどで子どもの体格がよくなり、初潮も早くなりました。でも、閉経年齢は50年前とほぼ変わりません。ということは、両者には関係がないということに。研究データとして明確に示されたものはないようです」

構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/1/30

Q3. 閉経したら男性ホルモンが増えるの? オジサン化するのではないかと心配…

A3. むしろ男性ホルモンを味方につけて
「女性の卵巣や副腎でもつくられている男性ホルモン『テストステロン』。やる気・活動力・社会性をアップしたり筋肉や骨を丈夫にする働きがあります。更年期に女性ホルモンが激減しても、テストステロンはあまり変化しません。そのため、ホルモンバランスが乱れ、ひげが濃くなったりする場合もあります。

ただし更年期には、少なくなった女性ホルモンの代わりに、心と体の健康を支えてくれる強い味方です。むしろ、意識的にテストステロンの維持に努めましょう。具体的には運動が一番です。運動によりテストステロンが増えると、血流がよくなったり筋肉が増えて、更年期太りも防いでくれます」

Q4. 太っている自分が嫌です。運動しなければと思っても、更年期のせいか、だるくて動けません

A4. 少しずつでも筋肉を増やす工夫を。男性ホルモンが増えて痩せやすく、更年期症状も改善してきます
「エストロゲンが減ったあとの体をサポートするのは男性ホルモン『テストステロン』です。増やすには運動が一番。筋トレではなくても、ヨガなどに通う、コンビニジムに行くなどギアチェンジしてみませんか? 家なら椅子やテーブルを使って足腰を動かすだけでも違います。一度筋肉がつくと痩せやすくなり、気分も変わるはず。何よりテストステロンが増えると更年期症状が改善されます」

撮影/中川十内<アイキャッチ> スタイリスト/高橋尚美 構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/2/4

見過ごせない「デリケートゾーンの変化」

Q1. ポスト更年期も腟ケアは必要なの?

A1. 病気予防のセルフケアとして、腟免疫を上げる習慣は必要です
「閉経により、本格的に善玉菌のラクトバチルス乳酸菌の自家産生ができなくなるポスト更年期。腟内の善玉ラクトバチルス乳酸菌を補い、腟免疫を高めるには、①善玉菌のラクトバチルス乳酸菌含有のフェムケア用品を使う、②女性ホルモン含有の腟坐薬を使う、③更年期症状もある場合はHRTも選択に、という3つの方法があります。

特にラクトバチルス乳酸菌含有のフェムケア用品の使用では、病気の原因となる雑菌のブロックや、過活動膀胱の改善が明らかになりました。フェムケアは、病気の予防にもつながるセルフケア。ポスト更年期も続けることを推奨します」

OurAge×Webエクラ 過活動膀胱の有病率のグラフ

過活動膀胱の有病率(OABSSスコアより)

閉経後の被験者3人に1人が過活動膀胱の疑い。腟免疫の低下がうかがわれます
閉経後で過活動膀胱の疑いのあるグループ(未閉経例1人を含む)が、ラクトバチルス乳酸菌含有のフェムケア用品を4週間使用する研究を吉形玲美先生が実施。その結果、腟内へのラクトバチルス乳酸菌介入前と介入後では、過活動膀胱症状質問票(重症度の判定に用いるスコア)で、OABSSスコア3点以上(=過活動膀胱の疑いあり)の人で平均2.2ポイントの有意な改善が見られました

OurAge×Webエクラ ラクトバチルス含有プロダクトによるフェムケアを4週間使用した後の病原菌割合の比較データのグラフ

ラクトバチルス含有プロダクトによるフェムケアを4週間使用した後の病原菌割合の比較データ 

閉経した人のうち、ラクトバチルス乳酸菌含有のソープ、クリーム、腟ジェルを使用したグループでは、病原菌の割合が有意になったことを確認。未閉経例を含む全体でも減少傾向に

Remi Yoshikata,et al.PLOS ONE 2022.より引用

 

イラスト/平松昭子 小柳東子<グラフ> 構成・原文/井尾淳子
初出:OurAge 2024/6/20

Q2. 腟まわりのできものは放っておいて大丈夫?

A2. 感染症や臓器脱という病気のことも。医療機関の受診を!
「フェムゾーンにできる『できもの』で多いのは次の3つ。

①『毛嚢炎(毛包炎)』は毛穴が細菌に感染して炎症を起こすニキビのようなもの。
②『バルトリン腺嚢胞』は腟口にある粘液を分泌するバルトリン腺の炎症で外陰部が腫れます。
③『尖圭コンジローマ』は性感染症で外陰部にイボのようなものができ、人にうつります。

また、『骨盤臓器脱』をできものだと思って来院するケースがあります。子宮、膀胱、直腸などが腟から体外に出てしまう病気で更年期から増えます。いずれも婦人科で適切な治療を!」

骨盤臓器脱をイラスト解説

正常な子宮
健康な人は骨盤底により、子宮や膀胱、直腸などの臓器を支え、適正な位置に保たれています

OurAge×Webエクラ 正常な子宮イラスト

子宮脱
子宮が腟から落ちた状態。顔を出すくらいから、完全に脱出したものなど程度はさまざま

OurAge×Webエクラ 子宮脱イラスト

直腸瘤
直腸が腟壁と一緒に落ちてきた状態。飛び出した部分に便がたまり排便障害になることも

OurAge×Webエクラ 直腸瘤イラスト

膀胱瘤
骨盤底の前側が緩み、膀胱が腟壁とともに落ちるケースが、最も多い臓器脱です

OurAge×Webエクラ 膀胱瘤イラスト
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/1/23

Q3. 最近よくフェムケアと聞きますが、何をすればいいの?

A3. 優しく洗い、しっかり保湿することが基本です
「更年期になると腟まわりにいち早く起こるのが乾燥です。特に小陰唇とその内側の粘膜に潤いがなくなり硬くなります。こうなると陰部がかゆく感じたり、入浴中やお風呂上がりにひりひりすることも。

◆フェムゾーン

OurAge×Webエクラ フェムゾーンのイラスト

自分のフェムゾーンを見たことがありますか? 腟まわりは顔よりも老化が早いともいわれています。

とてもデリケートな状態なので、トイレでゴシゴシ拭かずに、尿はそっとペーパーを押し当てるようにします。またお風呂で体用のボディソープでゴシゴシ洗うのも禁物。指の腹で大陰唇と小陰唇、腟の入り口をなぞるようにして、お湯でそっと洗います。力が入りすぎないように立って洗うのがおすすめ。お風呂上がりはたっぷりのワセリン(もしくは専用の保湿剤)で保湿をします」

毎日、そっと洗って保湿する…そのケアを実践したいですね

◆保湿オイル

OurAge×Webエクラ モア ゴールド ミニ

入浴後、清潔なフェムゾーン(外陰と腟前庭)に塗布。オーガニックエクストラヴァージンオリーブオイルをベースに100g中、エストラジオール2.0㎎配合。全身に使用できる保湿オイル。

モア ゴールド ミニ 30㎖ ¥5,445/ホルモードオリーブ研究所

フェムケアで大事なこと

・トイレでゴシゴシ拭かない
・お風呂でゴシゴシ洗わない
・お風呂上がりに保湿する

Q4. 脱毛したらフェムゾーンの黒ずみにびっくり!

A4. 年齢とともに色は薄くなります
「最近は色や形を気にする女性が増えました。その理由のひとつがVIO脱毛(陰毛をレーザーなどで処理すること)の流行です。これを行うと、大陰唇や小陰唇が目立つので気になるのでしょう。特に黒ずみを気にする人が多いのですが、もともとの肌色と摩擦や乾燥による色素沈着が原因。

きついガードル、ストッキング、パンツなどで締めつけないことが大切。私は夜寝るときはノーパンを推奨しています。閉経後はメラニン色素が減り、自然と色は薄くなるものなので、あまり気にしすぎないで!」

Q5. フェムゾーンのにおいやおりものの変化が気になります

A5. 通気性が大事。おりものシートの常用が一因の場合も
「フェムゾーンには多くのにおいの元があります。おりもの、尿、便、汗、細菌など。においを回避するには、清潔を保つことは重要です。しかし、そのために洗いすぎるのも禁物。肌や粘膜を健康に保ち、においを防いでくれるよい常在菌も減ってしまいます。

またおりものシートで覆うと、摩擦や乾燥を助長し、さらに細菌の温床になるので常用はNG。更年期にはおりものの量は減り、無色でほぼ無臭なのが普通です。黄色くにおいが強い場合は性感染症の可能性があるので婦人科を受診しましょう」
GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の問題はこれからもっと相談しやすくなります。「女性泌尿器科」がめっちゃ頑張っているんです!(二宮典子先生)

イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子 山村浩子
初出:OurAge 2024/1/1

セックスの悩みと向き合う

Q1. 閉経したら、セックスに影響はありますか?

A1. 腟乾燥や腟萎縮で、性交痛を訴える人は多くいます。治療法も進んでいるのでぜひ対応を
「更年期後半、腟が乾燥して腟壁が硬くなり、腟萎縮が進みます。性交痛のためにセックスを避けるようになり、パートナーとの関係が悪化することも稀ではありません。ある程度性生活が保たれている人、自分でケアしている人の腟の状態はいいのですが、ほとんど腟に触っていない、使っていない人は内診で指を入れることが難しいほど萎縮していることも。婦人科ではレーザー治療などもあるので、臆せず受診してみてください」

Q2. 急に腟まわりのにおいがきつくなったのは、更年期と関係が?

A2. 更年期には腟内環境が大きく変わります。においが気になるのも当然です
「腟まわりのにおい、一番の原因は更年期に起こる腟内環境の変化です。本来、腟内は善玉菌であるラクトバチルス乳酸菌が多いのがよい状態。これがフェムゾーンを酸性にするほか、自浄作用を活発にして病原体の侵入や細菌の繁殖を防いでくれます。でも、更年期に女性ホルモンの分泌量が急激に低下すると、ラクトバチルス乳酸菌も減少。腟内の免疫力や自浄作用が衰えて、大腸菌などの雑菌が増えやすい状態になり、においにつながるのです。

こういった更年期に起こるフェムゾーンのトラブルをGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)といいますが、GSMには腟内フローラの状態が深くかかわっています。セルフケアによって良好な状態に保つことは十分可能ですが、ケアのしすぎも最近よく見られます。洗いすぎ、こすりすぎなど、特に気をつけてください」

●フェムケア意識も高まっています!

OurAge×Webエクラ エストール デリケートソフトジェルクリーム 100g・エストール デリケートソフトウォッシュ 100㎖・エストール デリケートリッチオイルセラム 15㎖

フェムゾーンの皮膚は唇よりも薄いため、優しく正しくケアすることが大切です。吉形玲美先生がブランド監修しているエストールは、更年期に減る善玉常在菌を補う対策として、全アイテムにラクトバチルス乳酸菌を配合。

[右から]エストール デリケートソフトジェルクリーム 100g¥3,520・エストール デリケートソフトウォッシュ 100㎖¥2,475・エストール デリケートリッチオイルセラム 15㎖ ¥8,800/アドバンスト・メディカル・ケア

撮影/中川十内<アイキャッチ> スタイリスト/高橋尚美 構成・原文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/2/9

Q3. 閉経してもセックスはできる?

A3. 潤いがなくなるので工夫が必要な場合も
「もちろん閉経してもセックスはできます。ただ、閉経した頃から濡れにくくなり、腟自体に潤いがなくなり萎縮して狭くなります。

パートナーができて久しぶりに行う場合でも、ずっと定期的にしてきた人でも、挿入が困難になったり、ピストン運動で痛みを感じ、その後もひりひり感が残るという声をよく聞きます。

これを性交痛といいますが、この時期にセックスレスになるケースも。これも日頃のフェムケアをしっかりすることが大切。女性ホルモンを補充する腟錠で潤いを取り戻したり、低下した分泌物を補う潤滑剤を上手に使うといいでしょう」(二宮典子先生)

OurAge×Webエクラ リューブゼリーポーション

容器から取り出したときはジェル状で扱いやすく、使用するとサラサラに変化。痛みや違和感を軽減する1回使い切りの潤滑ゼリー。リューブゼリーポーション6g×4本¥1,100/ジェクス

Q4. 潤い不足で入りません。性交痛も病院で治療できる?

A4. レーザーや高周波の治療が効果的です
「性交痛をはじめ、性欲やオーガズムの悩みなど、セックスに関するトラブルは多くの人が感じています。これらを総合的に診断・治療する医療機関はまだ少ないのですが、改善することは可能です。

HRTのほかにも、レーザーや高周波による、より効果的な治療も行うことができます。腟内に照射して、腟粘膜の線維芽細胞を活性化させ、新たなコラーゲンを生成させることで、腟壁に潤いと厚みを取り戻します。

最新機器であるウルトラフェミー360は特殊なチップで、高周波と超音波を同時に、一度に360度照射できるため、効率がいいのが特徴です。治療法は患者の状態に応じて選ばれます」

●クリニックでできる治療
医療機器:インティマレーザー(ヤグレーザー)
対応する症状:性交痛、尿もれ、腟の緩み、臓器脱 

医療機器:モナリザタッチ(CO2レーザー)
対応する症状:腟の乾燥、腟のかゆみ、性交痛、GSM、頻尿

医療機器:ウルトラフェミー360(高周波治療)
対応する症状:腟の緩み、性交痛、尿もれ、おりもののにおい

Q5. HRT(ホルモン補充療法)で性交痛は治る?

A5. 腟錠と併用がおすすめです
「HRT(ホルモン補充療法)はホットフラッシュなどの更年期症状だけでなく、セックスやフェムゾーンの悩みにも一定の効果があります。ただし、HRTは全身に向けてのアプローチなので、特に性交痛をはじめとしたGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の悩みには、十分な効果が得られないことも。

その場合はエストロゲン製剤の腟錠を併用して、局所に効かせる方法があります。顔のお手入れと同様に、フェムゾーンの健康や機能の低下にも気を配り、しっかりとケアをすることは、QOLの向上にとても大切なことです」

イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/4/7

尿トラブル・体の不調を改善

Q1. 風呂上がりに腟から湯もれが…。これって腟の緩み?

A1. 骨盤底筋と粘膜のケアで改善します
「お風呂から上がるときに腟から湯がもれる、腟からおならのような空気がもれる、またはセックスのときにパートナーから締まりがないと言われたなど、クリニックに腟の緩みの相談に来る患者さんは結構います。原因は女性ホルモンの低下のほかに、腟を支える骨盤底筋の衰えもあります。

◆骨盤底筋とは

骨盤底筋イラスト

骨盤底筋は膀胱、子宮、肛門などの臓器を、ハンモックのように支えている筋肉。ここが衰えると、フェムゾーンに関するトラブルが現れやすくなります

もうひとつは腟全体を覆う粘膜が薄くなっているケースも。出産時に腟の入り口部分が肛門側に大きく開いたままになっていたり、無理なダイエットで骨盤底筋まで痩せてしまうことでも起こります。また、清潔を意識しすぎて、腟まわりを毎日強く洗いすぎると粘膜へのダメージに。この解決にも骨盤底筋を鍛えるエクササイズ(次のQ参照)と正しいフェムケアが有効です」(二宮典子先生)

Q2. くしゃみをするだけで尿もれが…。何が原因?

A2. 「尿道の問題」「膀胱の問題」「その他の問題」が考えられます
「尿もれにはおもに3つのタイプがあります。そのひとつは尿道とそれを支える部位が弱くなることによる『腹圧性尿失禁』。くしゃみや咳など、腹圧がかかったときにもれがちです。

ふたつめは膀胱の柔軟性がなくなり、少しの尿量でも尿意を感じてもれてしまうもの。これを『切迫性尿失禁』といい、寒さを感じたときなどに突然起こります。このふたつの混合型もあります。

さらに考えられるのが、フェムゾーンの乾燥などでイガイガしたかゆいような症状が起きることで、尿意を感じてもれてしまうケースです。いずれの尿もれにも骨盤底筋トレーニングや正しいフェムケアが役に立ちます」

尿もれの3つのタイプ
●腹圧性尿失禁
女性の短い尿道とそれを支える部位が弱ることが原因。くしゃみや咳、重い物を持つなどして腹圧がかかったときにもれます

●切迫性尿失禁
尿を貯蔵する膀胱が柔軟性を失い、少量でも尿意を感じるように。水の音を聞いたり、寒さを感じるなどで突然尿意を感じてもれます

●その他の原因
そのひとつがフェムゾーンの乾燥によりイガイガかゆくなることで、強い尿意を感じるケース。これは洗いすぎが原因のことも

骨盤底筋エクササイズ

あお向けになって膝を立てます

1.あお向けになって膝を立てます。左右の膝の間をこぶし1~2個くらい開け、両腕は自然に体の横に伸ばし、体をリラックスさせます

息を吐きながらお尻を持ち上げます。斜め上からの図/こぶし1〜2個分開く

2.息を吐きながらお尻を持ち上げます。このとき、お尻の穴と腟に意識を集中させて、キュ~ッと引き締めて20秒キープします。お尻を下げて5秒休憩。これを3回繰り返します

取材・文/蓮見則子
初出:OurAge 2024/2/11

Q3. 尿もれを自分で治す方法は?

A3. まずは「朝トレ」から!
「毎日の習慣にしてほしいのが『朝トレ』です。それは朝一番のトイレで尿を出しているとき、その尿を故意に止めるトレーニングです。ポイントは朝の尿がしっかりたまっている状態で行うこと。

また止めるタイミングは最後のほうで、いったん止めたら、体の力を抜いてから最後に残った尿をじわっと出して終わります。また、日頃からトイレに入って座ったとたんに出すのではなく、座って1回深呼吸をしてから、意識的に出すことを習慣にすることも大切です。

こうすることで、骨盤底筋が鍛えられて、尿のコントロールもしやすくなります。ほかには、骨盤底筋エクササイズが大切で、横にならなくても、信号待ちや電車で立っているとき、家事や仕事で座っているときでも、思いついたときに、お尻の穴と腟をギュッと引き締めるエクササイズを一日何度も行いましょう」

●「朝トレ」とは?

OurAge×Webエクラ 朝トレのイラスト

朝一番の尿を出しているとき、最後のほうでキュッと一度止めます。そして、体の力を抜いてからじわっと出しきります

イラスト/かくたりかこ 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/3/25

心の不調・メンタルケア

Q1. 更年期うつは普通のうつと違うの?

A1. 女性ホルモンの変化が大きくかかわっています
「心は女性ホルモンに大きく影響されるため、女性は生涯でメンタルダウンを起こす3つのタイミングがあります。それは月経前、出産後、更年期です。

うつを発症する3つのタイミング
●月経の前
エストロゲンとプロゲステロンが減少するため、メンタルが不安定に。PMSがこれにあたります

●産後
妊娠中にはとても多かったエストロゲンが分娩後にほぼなくなる、そのアップダウンが原因

●更年期
女性ホルモンの分泌が急に減少。それに伴い幸せホルモン・セロトニンも産生しにくくなります

いずれも女性ホルモンの変動がおもな原因。エストロゲンが減ると、別名『幸せホルモン』といわれ、精神を安定させるセロトニンの分泌も減ってしまいます。プロゲステロン(黄体ホルモン)が減ると、自律神経のうち心身をリラックスさせる副交感神経が優位になりにくくなります。これらが重なってメンタルの不調を起こしやすくなるのです。

更年期うつと通常のうつの症状を見分けるのは医師でも難しく、問診や検査で総合的に判断します。更年期うつが疑われる場合は、ホルモン補充療法(HRT)を行うことで改善効果が期待できます」

Q2. うつ症状かもと思ったら、まず何科に行けばいい?

A2. ほかの更年期症状もあるなら、まずは婦人科へ!
「メンタルの不調というと心療内科や精神科が思い浮かびますが、年齢が40歳を過ぎていて、ホットフラッシュなどメンタル以外の更年期症状があるようなら、女性ホルモンの低下が原因の可能性が高いので、まず婦人科を受診するのがいいと思います。個人差はありますが、漢方薬の服用やホルモン補充療法(HRT)を行うことで、症状の緩和が期待できます。

ただ、更年期の一時的な不調であっても、そのタイミングでショッキングなことが重なると、そのまま本格的なうつ病に発展することもあります。そんなときは専門性の高い、心療内科や精神科を受診するのがいいでしょう」

科による特徴
●婦人科
女性ホルモンの低下が原因の場合は、それに対応した治療を行います。ほかの更年期症状を解決することも可能

●心療内科
ストレスなどの心理的なことが原因で起こる、心身の不調(気分の落ち込み、めまい、吐き気)などを診ます

●精神科
心の不調(うつ病、幻覚、統合失調症、パニック障害など)そのものに対して治療を行います

Q3. 家事もする気になれず、家族からなまけ病だと言われます。病院に行くべき?

A3. うつのサインで判断を!
朝からやる気が起きない、何かに取り組む意欲が出ない…。そんな不調を感じても、どうしていいのか困ってしまいます。まわりからはただ怠けているだけと思われることも。

「少し重いメンタル不調にはふたつのサインがあります。ひとつは『特別なことがあったわけでもないのに涙が出る』こと。もうひとつは『大好きなことをやる気になれない』状態です。これらのサインがあったら、専門医に相談するのがいいでしょう」

これがあったら更年期うつかも…
●わけもなく涙が出る
悲しいことやつらいこと、感動したことがあったわけでもないのに、自然と涙が出たら要注意

●好きなことをやる気になれない
好きでやっていた趣味や推し活も、やる気になれない。何にも関心が持てないのはうつの可能性大

Q4. 職場で集中力も段取り力も低下。もう仕事は無理?

A4. 更年期を理由に退職する必要はありません
「日本人の閉経年齢の中央値は50.54歳。そこから考えると更年期の平均は45~55歳あたりに。この年代はちょうど仕事で、管理職など責任のある立場になる年齢でもあります。実際に私のクリニックにも、仕事に支障をきたすほどのメンタルダウンに悩んで、来院する更年期世代の人が多くいます。

それを理由にそのポストを断念したり、退職したりする必要はありません。更年期であることをひたすら隠すのではなく、まわりに一定の理解をしてもらいつつ、健康管理をするのも社会人の義務です。

今はホルモン補充療法(HRT)などを選ぶことで楽になる人がたくさんいます。治療を積極的に受けることも大切です。更年期の知名度は上がってきていますが、もっと理解のある社会になっていくといいですね」

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/3/3

Q4. 更年期で気持ちの浮き沈みが激しくて…メンタルを強くする方法は?

A4. 自律神経を整えて、セロトニンを増やして!
「生活習慣のちょっとした工夫がメンタルダウンの改善に役立ちます。それは適度な運動、栄養バランスのいい食事、規則正しい生活。まずは健康管理の3大要素を実践して、適正体重を維持することもメンタルダウンの改善に重要です。精神的なストレスも体を動かすことで解消され、実際に運動習慣のある人はうつになりにくいという研究結果があります。また、朝起きて朝の光を浴びて朝食をとるなど、自律神経を整える生活をして体をベースから改善していくことが大切です」(高尾美穂先生)

[適度な運動]
運動習慣がある人はメンタル不調が圧倒的に少ない
「メンタル不調にはヨガやウォーキングをおすすめしています。最も手軽で少し前向きになれるヨガポーズを紹介します(下参照)。片足を1歩前に出して両手を上げ、体をしっかり伸ばします。これだけですが、数回行うだけでやる気が出てきます。またウォーキングの歩く速さは軽く息が弾む程度。隣の人と話ができるのがベストです。10分当たり1000歩ちょっと、1日の歩数は8000歩を目安に!」

少し前向きになれるヨガポーズ

OurAge×Webエクラ 足を肩幅に開いて立つ

①背すじを伸ばして、両手は体の横に、足を肩幅に開いて立ちます

OurAge×Webエクラ 片足を1歩前に出し、後ろの足のかかとを上げる

②上体を真っすぐ保ったまま、片足を1歩前に出し、後ろの足のかかとを上げます

OurAge×Webエクラ 両腕を上げて体を伸ばす

③両膝は伸ばしたまま体重を前足にかけて息を大きく吸い、両腕を上げて体を伸ばします

OurAge×Webエクラ 吐きながら元に戻る

④体が伸びたら息を4回に分けて吸い、吐きながら元に戻ります。反対の足も同様に

[3食の食事]

栄養バランスのいい食事が心をバックアップする

「更年期の不調には、タンパク質、脂質、糖質の3大栄養素に加え、緑黄色野菜やきのこ類などで食物繊維やビタミン、ミネラルなどをバランスよくとることが大切です。それに加えて、メンタルダウンには精神を安定させるセロトニン合成に必要なトリプトファンとビタミンB6を意識してとるとよいでしょう。14~16時間後の夜にメラトニンになり、質のよい睡眠に導くので、特に朝食でとるのがおすすめです」

セロトニンを増やす食材

OurAge×Webエクラ セロトニンを増やす食材

バナナ、赤身魚(マグロやカツオ)、赤身肉、卵、大豆製品(納豆や豆腐)など。ほかにレバーや乳製品、ナッツ類にも多く含まれます。朝食に卵料理や納豆を食べるのは、とても理にかなっています。ヨーグルトにバナナを加えて食べるのもいいでしょう

[規則正しい生活]

朝の時間が大事。朝の光を浴びて体内時計を整えよう!

「実はそのメンタル不調の原因は睡眠不足の可能性があります。もともと年齢を重ねると、眠りが浅く短くなる傾向ですが、更年期で発汗などの寝苦しい症状があると良質な睡眠がとれません。睡眠を充実させるためには、朝の太陽光を浴びて体内時計をリセットし、昼間は活動的に過ごし、夜はリラックスタイムを設けることが重要です。こうした規則正しい生活をして自律神経を整えることで、メンタルを支えるさまざまなホルモンが元気になります。心を落ち着かせるメラトニンとオキシトシン、うれしいことで分泌されるドーパミンを上手に味方につけましょう」

メンタルを支えるホルモン

OurAge×Webエクラ メンタルを支えるホルモン

安らぎをもたらすオキシトシン、やる気スイッチとなるドーパミン、幸福感をもたらすセロトニンを産生できる生活習慣を! 特にセロトニンは眠りをもたらすメラトニンに変化します

イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/3/10

Q5. 婦人科でのメンタル不調にはどんな治療がありますか?

A5. 投薬治療と心理療法を行います
「心の不調は女性ホルモンに揺さぶられて起こる一時的な情動のことが多いのですが、中には実際にうつ病の方もいらっしゃいます。

婦人科に来院した患者さんのうち、最終的に女性ホルモンの減少による更年期症状だった人は約26%、うつ病や気分障害が27.6%、不安症が12.3%というデータがあります。

うつ病も軽度な場合は婦人科で対応するところもあります。更年期の抑うつである可能性が高い場合はHRT(ホルモン補充療)や漢方薬が第一選択肢ですが、軽度なうつ病には心理療法でカウンセリングや行動療法などをベースに、必要に応じて向精神薬が処方されることも。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが使われます。これはHRT(ホルモン補充療)が使えない更年期の抑うつにも有効です。しかしながら重度の場合は、婦人科よりも専門である精神科や心療内科を受診したほうがいいので、紹介するのが一般的です」

メンタル不調で婦人科で行われる治療
●HRT(ホルモン補充療)
減少した女性ホルモンを補充することで、更年期のさまざまな症状を緩和する療法。メンタル不調にも効果的

●漢方薬
東洋独特の「気・血・水」から原因を探ります。一人一人の体質を見極めて決めるので、同じ症状で薬が異なることも

●向精神薬
メンタル分野の薬の総称で、抗うつ薬のように病気そのものに効くものと、睡眠薬のように症状を緩和するものがあります

●心理療法
カウンセリング、リラクセーション法のひとつである自律訓練法、思考の歪みに働きかける行動療法、ストレス対処法のマインドフルネスなど

婦人科では投薬療法が主流になり、おもにHRT(ホルモン補充療)と漢方薬が2大療法。しかしうつ症状が強い場合は、向精神薬や心理療法などを実践するところもあります

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/4/20

HRT(ホルモン補充療法)を正しく理解

Q1. HRT(ホルモン補充療法)を始めるタイミング終えるタイミングはある?

A1. 始めるのは閉経前~閉経後10年が目安
「閉経していなくても、月経周期が不規則になっていて、更年期症状があり、卵巣の働きが低下していると考えられれば始めることができます。ベストタイミングは閉経前から閉経後早期。一般的には閉経後5年以内に始めることが推奨されています。60歳以上や閉経後10年以上たってから始めると、狭心症や心筋梗塞のリスクが上がるといわれていますが、事前の検査などで、問題ないと医師が判断すれば行えることも。ただし、60歳以上の保険適用は病院の判断によります。

HRT(ホルモン補充療法)を始めるタイミング

OurAge×Webエクラ HRTを始めるタイミング/図

① 女性ホルモンの減少による不調があれば、閉経前でも開始できます
② できれば、閉経後5年以内に始めるのが理想
③ 事前の検査などにより、医師の判断で始めることも可能です

ベストなタイミングはありますが、上記以外にも、40歳未満で閉経した人や卵巣を摘出した人も受けることができます

一方、やめる時期はつらい症状が緩和されたタイミングでもいいし、ずっと続けることも、いったん中止してまた再開することもできます。その場合は医師と相談しながら行うことが大切です。以前は乳がん発生リスクが高まるとして、継続は5年未満を目安にするケースがありましたが、日本女性医学学会の最新のガイドラインでは投与期間の制限はありません」

Q2. HRT(ホルモン補充療法)ができない人もいる?

A2. 昔NGと言われていた子宮筋腫の人も可能です
「行えないケースは乳がんの経験者や治療中、血栓症や動脈硬化がある、重い肝臓病の人などです。子宮筋腫は『慎重投与』に入り、大きくならないかを確認しながら行います。大きくなるようなら、投薬方法を検討し直したり、漢方薬に切り替えるなどして対応します。HRT(ホルモン補充療法)を始める前には、さまざまな検査をして問題がないかを判断します」。

その検査は月経の状態、過去の既往歴(問診)などに加え、ホルモン値、内診、乳がん・子宮がん・卵巣がんの検査、中性脂肪や肝機能、血圧、必要に応じ骨密度の検査などを行います。

HRT(ホルモン補充療法)を受けられないケース
・乳がん
・肝障害、腎障害
・原因不明の不正出血
・妊娠の可能性
・血栓症疾患、動脈硬化

注意が必要なケース
・子宮内膜症
・子宮筋腫
・肥満
・高血圧、糖尿病

Q3. プラセンタ注射も更年期治療に効きますか?

A3. 更年期症状の軽減を感じる人もいます
「プラセンタは胎盤のことで、美容用のプラセンタの材料は馬や豚の胎盤が一般的なのに対し、医療用はヒトの胎盤から有効成分を抽出した胎盤エキスが主成分です。厚生労働省が認可しているのは2種類の注射剤のみ。

メルスモンは更年期治療で保険がきき、もうひとつのラエンネックは慢性肝疾患における肝機能の改善に認可されているもので、更年期症状では保険対象外になります。女性ホルモンが補充されるわけではないのでHRT(ホルモン補充療法)の代替にはなりませんが、症状を軽減する効果を実感する人も多いです。

HRT(ホルモン補充療法)が行えないケースでも受けられることが大きなメリットですが、投与すると献血はできません。また、他の方法として、保険はききませんが、エストロゲンと似た働きをするといわれるエクオール配合のサプリメントも人気があります」(小川真里子先生)

イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/2/24

Q4. HRT(ホルモン補充療法)ってそもそもどんな薬剤を使うの?

A4. 飲み薬・貼り薬・塗り薬などがあります
「HRTの投薬方法はおもに4種類あり、子宮がある人と摘出してしまった人、年齢や月経の有無などを考慮して、その人に合った方法が選ばれます。

エストロゲンは子宮内膜を厚くする作用があるため、子宮体がんの発症リスクがあるとして、エストロゲン製剤に加えて、黄体ホルモン製剤を併用して投与するのが一般的です。特に最近は天然型の黄体ホルモンが保険適用になり、安全性も格段にアップしています」(小川真里子先生)。

投与方法は大きく3パターン。①閉経前~閉経後早期はエストロゲン製剤と黄体ホルモンを周期的に使います。これはさらに2パターンあり、どの使い方も効果は同じです。②閉経後時間が経過している場合はエストロゲン製剤と黄体ホルモンを持続的に使い、③子宮を摘出している場合はエストロゲン製剤だけを使います。

薬剤の投与方法

OurAge×Webエクラ 薬剤の投与方法

また製剤の形態も、飲み薬(錠剤)、貼り薬(パッチ剤)、塗り薬(ジェル剤)が選択できます。飲み薬はなじみがあることがメリットでしょう。一方、肝臓に負担がかかることがデメリット。貼り薬や塗り薬は肝臓負担はないのですが、肌の弱い人はかぶれることが、塗り薬は1回の用量がわかりにくいという声もあります。

HRT(ホルモン補充療法)の費用は、更年期症状の治療なら保険適用で1カ月の薬代は¥1,000~3,000が目安です。

HRTの投与方法

◆エストロゲン剤

飲み薬(錠剤)
・プレマリン(総合型エストロゲン):0.625㎎/1日1錠(通常量)
・ジュリナ(エストラジオール):0.5㎎/1日1錠(低用量)、1.0㎎/1日2錠(通常量)

貼り薬(パッチ剤)
・エストラーナテープ(エストラジオール):0.72㎎/1回1枚、2日に1枚貼付(通常量)

塗り薬(ジェル剤)
・ル・エストロジェル(エストラジオール):0.54㎎/1日1プッシュ(低用量)、1.08㎎/1日2プッシュ(通常量)
・ディビゲル1㎎(エストラジオール):1㎎/1日1包(通常量)

◆プロゲステロン剤(黄体ホルモン剤)

飲み薬
・プロベラ、プロゲストン(酢酸メドロキシプロゲステロン):2.5㎎/1日1錠(持続的併用時) 5~10㎎/1回1錠1日2回(周期的併用時)
・デュファストン(ジドロゲステロン):5㎎/1日1錠(持続的併用時)、10㎎/1回1錠1日2回(周期的併用時)

子宮内に器具を挿入
・ミレーナ(レボノルゲストレル):5年間有効 ※保険適用外

天然型のプロゲステロン製剤が保険適用に!
卵巣で作られるものと同じ成分の天然型プロゲステロン製剤は乳がんなどのリスクはより低いといわれています。
・エフメノカプセル100㎎/周期的使用は15日~28日で200㎎を1日1回。持続使用は100㎎を1日1回

◆エストロゲン・黄体ホルモン配合剤

飲み薬
・ウェールナラ配合剤:エストラジオール1.0㎎+レボノルゲストレル0.04㎎/1日1錠(通常量)
※閉経後の骨粗しょう症にのみ保険適用

貼り薬
・メノエイドコンビパッチ:エストラジオール0.62㎎+酢酸ノルエチステロン2.70㎎/1日1枚
(週2回貼付・通常量)

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/3/9

Q5 HRT(ホルモン補充療法)をすると若返ると聞きましたが、本当?

A5. はい、効果は更年期症状に対してだけではありません
肌がきれいになるといった見た目の変化だけでなく、体の中の若返りも期待できると産婦人科医の小川真里子先生。「エストロゲンは心身を健康に保つためにさまざまな働きをしています。例えば、肌、骨、血管、神経、脳、代謝などに大きくかかわっています。そのため閉経後は男性と同様に内臓脂肪が増えたり、高血圧や動脈硬化、糖尿病になりやすく、特に深刻なのが骨粗しょう症のリスク。HRT(ホルモン補充療法)はそうした体の変化を軽減する働きもあります。肌はコラーゲンが増えてツヤがアップ、骨を丈夫にして、生活習慣病の予防にも効果があることがわかっています。更年期症状の改善だけでなく、病気予防のためにも受けることができます」

●その他の効果
・骨粗しょう症の予防
・脂質異常症の予防
・肌質アップなどの美容効果
・生活習慣病の予防
・歯周病の予防

骨粗しょう症など、高齢になるとなりやすい病気に対しても予防効果が期待されています。改めて、女性ホルモンの偉大さに驚きます

Q6. HRT(ホルモン補充療法)はどのくらいで効果が表れるの?

A6. 効果の出方には個人差があります
「HRTをはじめると、例えばホットフラッシュは2~3週間でジワジワと効いてきて、約1カ月で効果が出るケースが多いのですが、これは個人差があります。もっと早い人や、じっくり効くケースもあります。その理由は、体の感受性やプラセボ効果(偽薬でも飲んだことで実際に効果が出てしまうこと)を受けやすいかでも違います。一般的に閉経から時間がたっていると効きにくくなる傾向です」

イラスト/SHOKO TAKAHASHI 構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/3/23

Q7. HRT(ホルモン補充療法)で乳がんのリスクが上がると聞いたけど大丈夫? 副作用は?

A7. 今はメリットのほうが大きいという見解です
「HRT(ホルモン補充療法)による乳がんのリスクは、2002年にアメリカで発表された研究報告が元になっていますが、実際は一般的にHRTの使用対象と異なる女性が多く含まれていることがわかり、2016年には7つの国際学会が『乳がんリスクは大きくはない』と発表しています。

そのリスク上昇率は1000人に1人以下で、これは飲酒や喫煙などの生活習慣によるリスクと同等か、それ以下で、ほとんど心配はいりません。ほかに子宮体がんは黄体ホルモンを併用すれば問題なく、子宮頸がんの腺がん、卵巣がんは長期投与で若干リスクが上がる傾向。血栓症や心筋梗塞は肥満や60歳以上だと少し増えます。

しかしながら、それよりもメリットのほうがはるかに大きいというのが最近の見解です。その他の副作用では乳房が張る、不正出血などが起こることがありますが、それは一時的なことなので心配いりません。メリットとデメリットをよく確認して、納得して始めることが大切です」

※乳がんは女性の8〜9人に1人が罹患する病気です。HRT(ホルモン補充療法)中に乳がんにならないわけではありません。

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/4/6

漢方・セルフケアで整える

Q1. 漢方薬とHRT(ホルモン補充療法)の併用はできる?

A1. できます。より効果が出る場合も
「漢方薬はHRT(ホルモン補充療法)と並ぶ、更年期症状の治療方法のひとつ。日本では知名度が高いこともあり、第一選択肢となることが多いですね。

例えば、めまいなどの症状では、漢方薬のほうがHRT(ホルモン補充療法)よりも改善効果は高く、ホットフラッシュに関してはHRTのほうが効くという検証結果があります。症状の出方によっては、HRTと併用することもできます」。

漢方薬は東洋医学の「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方がベースになっています。気は生命活動のエネルギー、血は血液の循環、水は水分代謝を表し、このバランスがくずれると心身に不調が現れます。

更年期症状に処方される3大漢方薬が加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸ですが、人には個々に「証(しょう)<体質や体調>」があり、それを見極めて薬を処方するので、同じ症状でも違う薬を出されることがあります。自己判断で服薬すると効かない場合もあるので、専門家に見立てて処方してもらうことが大切です。

【気・血・水の考え方】
東洋医学では、体の調子が悪いのは気・血・水のバランスが乱れることで起こると考えます。おもに気の乱れはイライラやうつ状態、血の乱れは便秘や肩こりに、水の乱れはめまいやむくみに

OurAge×Webエクラ 東洋医学の「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方

よく使われる漢方薬
●加味逍遙散(かみしょうようさん)
虚弱体質で気と血が乱れているタイプの、イライラやうつ症状に

●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力がなく特に血と水が乱れて冷える人に。めまい、肩こりなどにも

●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力があるタイプで、ほてりやのぼせる人に。頭痛にも効果があります

●半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸虚弱の人やめまいに。ほかに頭痛や冷えにも処方されます

●抑肝散(よくかんさん)
体力は中程度でイライラしやすい人に。不眠にも処方されます

●加味帰脾湯(かみきひとう)
虚弱体質&胃腸が弱いタイプで、精神不安や不眠の症状がある人に

●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
胃が弱く食欲が低下して、元気が出ない、手足に倦怠感がある人に
証にもよりますが、特にメンタル不調に効くのが加味逍遙散、めまいや冷えにいいのが当帰芍薬散、ほてりやのぼせには桂枝茯苓丸がよく処方されます

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/5/4

Q2. HRT(ホルモン補充療法)と漢方薬のメリット・デメリットを教えてください

A2. HRT(ホルモン補充療法)は更年期以降の疾患にも予防効果があり、漢方薬は幅広い症状に対応
「更年期症状の薬物療法の主軸となるHRT(ホルモン補充療法)と漢方薬。どちらを選ぶかは、それぞれの長所と短所を比較して、自分に合ったものを選ぶのがいいでしょう。

例えば、HRT(ホルモン補充療法)は症状の緩和に加え、閉経後に多くなるほかの疾患の予防効果があります。有用性は非常に高いのですが、わずかながらがんや血栓症などのリスクはあります。漢方薬はひとつの処方薬にさまざまな生薬が入っているので、幅広い症状に対応し、副作用も少ないのが大きなメリット。

ただし効果が出るまでに時間がかかる場合があるのと、『証』を見極める医師の見立て力が効果を左右する側面もあります」

HRTと漢方の長所と短所
●HRT(ホルモン補充療法)
【長所】
一般的には有用性が高いことが確認されています。また、更年期以降に起こる脂質異常症や骨粗しょう症などの予防にも効果のあることが大きなメリット
【短所】
乳がん、血栓症などへのリスクがゼロではありません(有用性のほうが高い)。乳房の張りや痛み、吐き気などの一時的な副作用が見られることもあります

●漢方薬
【長所】
知名度が高く、副作用が少ないことで受け入れやすい傾向があります。生薬の種類も豊富で、それぞれ複数の有効成分を含むので、1剤で幅広い症状に対応できます
【短所】
一人一人の証(体質や体調)に合わせた薬を選ぶ必要があります。また効果が出るまでに時間がかかり、8~12週間かかることも。薬によっては飲みにくいものも

構成・原文/山村浩子
初出:OurAge 2024/5/12

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