40代になったとたん四十肩、50代になったら五十肩と、笑ってしまうほどネーミングどおりに肩の痛みに悩まされた経験のある小田。特に五十肩のときは着替えもままならず、寝ていても辛く、苦悶の日々でした。今は痛みはありませんが、五十肩になった側の右肩は今でも硬く、手を背中に回すのがキツイ。あのとき適切に対処していたらよかったのかも、とふと頭によぎることがあります。そこで、今ひとつわからない四十肩、五十肩のちゃんとした治しかたについて、年間1000人以上の肩関節を治療する専門医、守重昌彦先生にお話をうかがいました。現在、四十肩、五十肩にお悩みの方、ぜひご覧ください!
バンザイができない、ゴルフができない、高いところの掃除ができない、などだけではすまされない五十肩。プルオーバーやジャケットを着脱するだけで激痛が走ったり、寝ているあいだもズキズキしたりと、五十肩は50代女性のQOLを著しく下げる。
痛みがあっても、なくても、肩が上がらなくなれば五十肩
小田:私は現在57歳で、四十肩、五十肩経験者。特に五十肩のときは辛くて、Tシャツの脱ぎ着すら難儀していました。友人にも、肩が痛くて夜も眠れない、ゴルフや水泳、ヨガのポーズが楽しめないなど、悲痛な声が。なぜ40代、50代でこのような症状がでるのですか?
守重先生:残念ながら、なぜこの年代に五十肩が多いのかは、いまだ明らかになっていません。ただ、更年期など加齢の影響が大きいことは間違いありません。
小田:女性の方が多いイメージがありますが、男女差はありますか?
守重先生:女性の方が多いのです。海外のデータですが男性8.2%、女性10.1%の罹患率です。
小田:女性の10人にひとりは四十肩、五十肩になるということですね。もっと多いイメージでしたが…。
守重先生:小田さん、10人にひとりが発症する病気は、かなり確率が高いですよ。
小田:そうか! そうですよね。大人の多くは、四十肩、五十肩の危機に悩まされる。そもそも四十肩、五十肩は同じもの?
守重先生:はい、まったく同じものです。
小田:私の場合、思い起こしてみると仕事で重い荷物を持ったあと、四十肩、五十肩になりました。コスメの記事を書くことが多いのですが、スタジオに大量のスキンケア製品を搬入するなど、けっこう力仕事なんです。重い荷物を持つことと関係がありますか?
守重先生:五十肩(四十肩も同様なので、以下五十肩と表現)は炎症が起こって、その後硬くなることで起こります。そこには、炎症が起こるなんらかのきかっけがあるはずです。小田さんの場合、重い荷物を持ったことが炎症を引き起こしたのでしょうね。実は私も五十肩を経験しており、そのきっかけは趣味のスキーで転倒したことでした。
小田:突然なったように感じても、きっかけがある可能性が高いのですね。すごーく痛いわけではないけれど、ちょっと肩が上がりにくい、みたいな人は五十肩なのでしょうか。
守重先生:肩の可動域が悪くなるのが五十肩です。痛くなくても、「えいや!」と動かしてみてガチッとロックしたように肩が上がりにくければ、五十肩の可能性が十分にあります。
五十肩は肩こりとは別モノ!肩を揉んだだけではよくならない
小田:なぜ肩の可動域が制限されてしまうのですか? 肩回りの筋肉がカチコチに固まっているから? 肩こりとどう違うのでしょうか。
守重先生:肩こりは筋肉の問題ですが、五十肩は関節のそのものの問題、もっと詳しくいうと「関節包(かんせつほう)」の問題です。
小田:関節包? 初めて聞きました!
守重先生:肩関節にある筒状の膜で、肩甲骨と上腕骨てっぺんの球状部分(骨頭)との接合部をぐるりと包み込むようにつないでいます。
関節包は伸縮性があり、内部にはゆとりがあるのですが、なんらかの原因で炎症が起こるとそれをきっかけに硬くなります。伸縮性が失われて硬くなり、筒内部にゆとりがなくなって、肩関節の動きが悪くなってしまうのです。
また、関節包の内側は滑膜(かつまく)という膜があり、関節の動きをよくする役割を果たしています。この滑膜は炎症を起こしやすい部位。関節鏡で見ると、五十肩の患者さんの滑膜は真っ赤に充血していますよ。
つまり五十肩は、関節包が炎症を起こす疾患。小田さんが重い荷物を運んだあと五十肩になったのは、関節包が強い力で引っ張られ傷がつき、関節包や滑膜に炎症が起こってしまったのでしょう。
小田:そうだったんですね! 五十肩は肩こりのひどいもので、筋肉が凝って肩が動かなくなっているとばかり思っていました。どうりで肩をマッサージしたり、ストレッチしたりしても、一向によくならないわけだ。
守重先生:そこ、勘違いしやすいところです。無縁ではないのですが、首肩の筋肉痛が関節包に直接影響を与えることはありません。肩こりと思い込んで、五十肩になったばかりの炎症期にストレッチをするなど無理に動かそうとすると、炎症が進んで症状が悪化することも多いのです。
小田:五十肩のとき、寝ているあいだもズキズキして痛かったのですが、あれはどうしてですか?
守重先生:夜痛むのは、五十肩の特徴でもあります。この痛みには諸説ありますが、起きているとき、肩は背中よりやや前にありますが、あおむけで寝ると、重力で肩が背中側に落っこちた状態に。すると炎症を起こしている関節包に負担がかかって痛むのです。
あおむけがキツイからと、うっかり痛いほうの肩を下にして横向きになろうものなら、さらに負担がかかって飛び起きるほどの痛みを感じることに。
「放っておけば治る」「どんどん動かしたほうがいい」は都市伝説
小田:よく、五十肩は病気じゃないから、積極的に動かしたほうがいいっていいますよね?
守重先生:それは都市伝説と思ってください。五十肩はれっきとした疾患です! 確かに、関節は動かさなければ硬くなってしまうのですが、五十肩になりたてのときは例外。積極的に動かしてもいいのは、炎症がおさまり、肩を動かしても「イタタ!」とならなくなってからです。日常動作まで止める必要はありませんが、痛みが治まるまでは重いものを持ったり、ゴルフやテニスなど肩に大きな負荷がかかるスポーツは避けましょう。
小田:五十肩は放っておけば治る、といわれますが、私の場合放置した結果1年以上痛みが続きました。その間も、重い荷物を我慢して運んだりしていたので、炎症がおさまらなかったのでしょうか。
守重先生:確かに放置していても、自然によくなる人もいらっしゃいます。でも小田さんのように痛みが取れるまで時間がかかる人もたくさん。そういう人には、整形外科での五十肩の治療をおすすめします。できれば、なるべく早いタイミングで来院して、関節痛に詳しい医師の治療を受けましょう。
五十肩が単なる老化現象ではなく、れっきとした疾患だったとは。四十肩、五十肩になったとき、都市伝説にまどわされなければ、長期にわたって痛みに苦しむこともなかったかもしれません。
次回#2では、守重先生に五十肩の治療法について詳しくお聞きします。四十肩、五十肩にお悩みの方、まわりで悩んでいる人がいる方は、ぜひご一読ください!