香りは、「足すもの」から「整えるもの」へ。最近、そのように感じるようになり、香水の選び方も自然と変わってきました。
この香水は、ひと吹きで気分を高揚させるというよりも、一日の輪郭を、静かに整えてくれる存在。
朝の支度の最後にそっと添えることで、自分自身の軸がすっと定まるような感覚があります。
HERMÈS バレニア アンタンス
この香りを初めて肌にのせた瞬間、真っ先に思い浮かんだのは、成熟した大人のエレガンスを纏う女性像でした。
遠くからでも伝わる美しい佇まい。
確立された装いに、香りまでもが溶け込むように寄り添い、その人自身の一部となっている…
そんな姿が、自然と浮かびました。
昨年の秋、バレニアの続編として誕生した「バレニア アンタンス」。
本来なら、晩秋から冬へと移ろう季節に合わせて纏いたいと思いながらも、少しタイミングを逃し、迎えたのは真冬でした。
香調
パチョリとバタフライリリーに、深みのあるオークウッド、レザーノートが織りなす香り。
濃厚で奥行きがありながら、どこかふわりとした優しさも感じさせます。
芯のある強さと、包み込むような柔らかさ。その二面性が、この香りの魅力なのかもしれません。
自分自身と重ね合わせて、この香りを纏ってよいのだろうか…
そんな問いを、何度も心の中で繰り返しました。
購入の時期がずれたのも、その迷いがあったから。
装い
ある週末、バレニア アンタンスをウエストあたりにワンプッシュ。
黒のロングワンピースにツイードジャケットを羽織り、静かな気持ちで外へお出かけをしました。
歩くたびに、ふとした香りは、主張しすぎることなく、装いと一体となって、私自身の輪郭を描いてくれるようでした。
これまでの時間をそっと肯定してくれる香りは、今の自分に寄り添う一本として、静かに愛用していきたいと思います。
春先、装いが軽やかになる季節だからこそ、あえて少し深みのある香りを纏う。そんな選択も、大人の楽しみ方なのかもしれません。
...Mayu