岩手県出身の作家くどうれいん。
これまでエッセイは読んでいましたが
初の小説「氷柱(つらら)の声」は
東日本大震災後の少女の物語です。
盛岡に住む高校2年の伊智花(いちか)。
震災を経験したけれど、家族も家も無事で、
静かに学校生活を送っている女の子です。
美術部員の彼女は被災地応援の絵を依頼され、
白い花の大木を題材に出品します。
でも新聞記者のインタビューを受けた時、
絵そのものが褒められているのではなく
「被災地に向けて発信している高校生」
が望まれていることに気づきます。
何も失っていない自分はどうしたらいいのか。
進学で出た仙台での交流、
それが震災を改めて考えるきっかけになります。
福島出身、同じマンションの医大生トーミは言います。
自分は傷ついていないつもりだったけど
わりと傷ついていたんだよね
でも家が残った私に何も言う資格はないと思ってた
恋人の中鵜(なかう)はレストランでの食事中、
テーブルで揺れるキャンドルの炎に怯えます。
あの日を思い出してしまうんだよね
暗い海もまだ怖いんだ
忘れられないことが多いんだ
伊智花の気持ちは作者の想い。
私は何も失わなくて、ごめんなさい。
傷ついたふりをしなきゃ。
傷つかなかった分、
社会に貢献できる人にならなくちゃ。
大きな震災で大切なものを失って
15年経った今も苦しい人は多いはず。
でもその地にいて、失ってはいないけれど苦しい
そんな人も多いのだと知りました。
そして、被災してはいないけれど
悲しい出来事に影響された人も多いのでは。
私もそうです。
少しの間、東北に住むことになり
そこで見聞きしたことは今も忘れられずにいます。
言葉にできない静かな悲しみは
登場人物の数だけありました。
皆、それぞれに傷ついていた。
でもラストを締めくくるのは
あふれるような太陽の光、
そして風に乗る桜吹雪。
震災ものとはいえ重くなく、心に染みる物語。
3月11日、彼の地に想いを馳せて
ぜひ手に取ってほしい一冊です。