eclat10月号では富岡佳子さんが「これからの生き方」のヒントをもらうべく若宮正子さんに会いに行き、知的かつ若々しく年を重ねる方法を教わりました。
Q.50代でもPC音痴な人は多いのにすごい!知的かつ若々しく年を重ねる方法を、教えて下さい!(富岡さん)
A.好奇心を大切にして、なんでもやってみるの。失敗したって、死ぬわけじゃないんだから(若宮さん)
■まさかシリコンバレーに招待されるとは!
若宮正子さんは知る人ぞ知るIT界のアイコン。60歳からパソコンを始め、今やゲームアプリまで制作する。ニュースでその存在を知った富岡さんは、チャレンジ精神の核にあるものを知りたくて、ご自宅へ向かった。
富岡 パソコンを始めたのは還暦を過ぎてから、と伺いました。
若宮 そうですね。60歳の定年で会社を辞めまして、退職すると自分ひとりになっちゃうでしょう? 私、おしゃべりですから。友だちがそばにいないなら、ネット上でチャットすればいいという、はなはだ不純な動機です(笑)。
富岡 独学だったんですか?
若宮 今から20年以上前ですから、普通の人はまだパソコンなんて買わない時代です。だからお店の人もけっこう余裕があってサポートしてくれましたし、ネットに接続すれば詳しい人が教えてくれますしね。物好きというか好奇心旺盛というか、パソコンをやたらいじくりまわして、エクセルアートなんかも楽しむようになって。
富岡 スゴイ! 私はPC音痴だから、よくわからない機能は怖くて触れない。
若宮 大丈夫ですよ。失敗したって誰も死なないでしょ(笑)。
富岡 はい(笑)。でもその冒険心というか試行錯誤の積み重ねが、ゲームアプリの制作まで行きついたんですね。
若宮 そうです。でもまさかそれで自分がシリコンバレーに行くことになるとは、思いませんでした。世界開発者会議「WWDC2017」がいざ始まると、日本じゃ午前2時頃にコンピュータ屋さんがみんな寝ないで、今度はどんな新商品が出るんだろうって固唾を呑んで中継を見てた。すると初っ端に〝マサコワカミヤ・フロム・ジャパン!〟って、変なばあさんが出てきたから、みんなぶっ飛んじゃった(笑)。
エクセルアートを活用して美しい模様を作り、うちわやブックカバーを製作。
■60を過ぎると、人生っておもしろくなる
歯切れよくてユーモアたっぷり。若宮さんのチャーミングな人柄に、富岡さんもだんだん身を乗り出して…。
富岡 小さい頃は、どんなお子さんだったんですか?
若宮 いろいろやってみる子でした。まーちゃんがやると言ったら、誰にも止められない (笑)。小学生のころは戦争中でしたから、ろくに教育を受けていないんです。私はそんな中で、ニワトリがすごく気になってね。卵を抱いて21日目には雛が生まれる。どうしてだろう?って、毎日ニワトリを見張って、卵の殻が割れてピヨピヨひよこが出てきたときは感動しました。
富岡 あー、わかります! 興味を持つと、とことんのめり込むんですね。
若宮 高校を卒業してからは、銀行に就職しました。私はお札を数えたりそろばんはじくのが本当に苦手で、初めのうちは肩身が狭かったんですけど、そのうち世の中が変わりまして、登用試験なんかも受けまして、ぼちぼちと。40何年ずっと、定年まで勤め上げました。
富岡 そこから20年余。定年になってから先も、人生って長いですよね。どうしようって不安になるくらい。
若宮 いえいえ、60を過ぎるとね、人生っておもしろくなるの。会社勤めしている間は、知らず知らずのうちに頭の中が、いろんなものに縛られているのね。会社の規律とか社会常識とか人間関係とか。でもそれがだんだん、プツプツプツってとれていく。とっちゃっていいんです、もう。刑法上の悪いことでもしない限りは、何をしたっていい。だから前よりも自由にものが考えられるようになりました。
富岡 なんだか私も、先が楽しみになってきました(笑)。健康のためになさっていることはありますか?
若宮 毎日やることがいっぱいあって、自分の健康を考えている暇がないんです(笑)。週に2回はウチでパソコン教室を開いていますし、ネットのオフ会もありますし、児童養護施設
のサポーターなんかもしていますし。
富岡 素晴らしい! どうすればそんなふうに若々しく年齢を重ねることができるのでしょう?
若宮 あら、これからおもしろくなる60代、もっと楽しい70代、めちゃめちゃ素晴らしい80
代が待っているんですよ。やりたいこと、なんでもできるじゃないですか。私は今、時間があると電子ピアノを練習していますけど、始めたのは75歳のときでした。
富岡 みんなが諦めてしまうようなことを次々と!(笑) 私も何か新しいこと、始めたくなりました!
好奇心のカタマリのような若宮さん。一般人に海外渡航が許された1964年ごろから、年に1回は海外旅行を楽しんできた。写真は今年のロシア旅での1枚。
「伝統」をカギに年齢を超えて楽しめるゲーム「hinadan」
81歳だった今年の2月に制作したiPhone用アプリは、効果音やナレーションも本格的。ひな人形をひな檀の正しい位置に配置するシンプルなゲームだが、毎年配置に悩む世代にはむずかしい。「シニア向けの楽しいゲームがなかったので、知り合いに助けてもらいながら作ってみました」
実際にお会いして…Yoshiko's MEMO
エネルギーにあふれている。それが若宮さんの第一印象でした。お話ししていると、まっすぐでイノセントで、82歳の若宮さんにこんな言い方は失礼かも知れませんが、まるで少女のよう。可愛らしいかただと思いました。それにしても、クリエイターには年齢制限がないんですね。60歳を超え手人生が楽しくなった、というお話にとても実感がこもっていて、励まされました。
お話をうかがったのは…
わかみや まさこ●’35年生まれ。定年退職後、自宅で母親を介護するかたわら独学でパソコンを習得。’16年夏、プログラミングを学んでシニア世代に向けたゲームアプリを開発。今年7月、appleの世界開発者会議「WWDC2017」に招かれ、世界中から注目を集めた。現在は自宅で週2回パソコン教室を開くほか、多方面で活躍している。