電車で席が空いていると数分でも座ってしまう、立ち話が始まるとすぐ座る場所を探す……それって私?と思った方は要注意。「eclat(エクラ)」6月号では、生活習慣病の発症にもつながる「座りすぎ」問題について専門家の先生に伺いました。
体の不調、ひいては健康寿命を縮めるのはコレだった
あなた「座りすぎ」です!
電車で席が空いていると数分でも座ってしまう、立ち話が始まるとすぐ座る場所を探す……。それって私?と思ったかたはご用心。近年、座りすぎの状態が生活習慣病の発症リスクを高めることが明らかに。正しい知識を学んで、今のうちに健康を取り戻そう!
教えてくれたのは…
早稲田大学
スポーツ科学学術院教授
岡浩一朗先生
専門は健康行動科学、行動疫学。運動不足の弊害およびその解消方法を研究テーマとする。欧米で盛んな「座りすぎ」による健康リスク研究の第一人者で、什器開発やオフィス環境のプロデュースでも活躍。著書に『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』など。
生活習慣病につながる座りっぱなしの生活
エクラ世代には、移動中の列車の中でも、街での買い物途中でも、座れるものなら座りたいという人、意外に多いのでは? 「なぜ座りたいか? そこに椅子があるからよ」というのは、哲学ではなくてほとんど現代人の病。そんな「座りすぎ」こそが健康リスクを高めていると警鐘を鳴らすのが、岡浩一朗先生。「健康行動科学では、かつては運動不足の人にどれだけエクササイズをさせるか、どうやってモチベーションを高めるかといった、人をアクティブにする方向での研究が中心でした。しかし近年、運動以外の時間の多くを占める座りっぱなしの状態が、さまざまな健康リスクをもたらすということが明らかになっています」
私たちは座る生活、座位行動に慣れてしまっているけれど、その姿勢は人間にとってベストではない。
「皆さん、体は動かしていないのに、デスクワークで疲れたり、肩や腰が凝ったりしますよね。そもそも座位の姿勢は立っている状態よりも脊柱への負担が大きい。さらに、ほぼ直角に曲げた状態の股関節、脚の状態は、血流悪化を招き、代謝も低下させます。実際、座位行動の多い人は、そうでない人よりも糖尿病や心血管疾患の発症率が高いのです」
そんなに悪影響が? でも、立っているより楽だからと思って、つい長々と座ってしまっているかも。「ご自身が一日にどのくらいの時間座っているか、書き出してみましょう。座りすぎの度合いは人によって変わりますが、オーストラリアの45歳以上の男女を3年間追跡した研究で、一日に11時間以上座る人は、4時間未満の人よりも死亡リスクが4割も増すことが明らかになっています。長く座れば座るほど、寿命は縮むものと認識してください」
長時間座るのは、とても体に悪かった!
社会生活の基本は座る姿勢にあり、しかも続けて座る機会も少なくない。実は、そこにはいろんな健康リスクの落とし穴が……!?
書き出すとかなり多い!
あなたの「座りすぎ」度をCHECK!
何か作業するときも、たいてい座っているのが現代人。実際に書き出すことで、想像以上に長時間、座っていることがわかるはず。11時間以上になる人は要注意!
例えばAさんは…
活動時間の17時間半のうち、仕事がデスクワークなら7時間近くは確実に座位。
テレビ視聴や食事、仮に通勤が車なら、ほとんどは座り姿勢。14時間以上は座ってます!
運動の前に行うべきは、まず「座りすぎ」の対策
ここまでで、「私はわりとジムに行ってるから大丈夫」と思ったかた、残念。岡先生によれば、安心してはいけないとのこと。
「最初にも触れましたが、アクティブな活動と、座りすぎの問題は切り離してとらえてください。積極的に運動をしていても、習慣化した座りすぎによる健康リスクを相殺できるわけではない。まずは、長時間の座位行動をやめること。適度にブレイクを入れるようにしてください」
ちゃんとした運動でなくて、ブレイク程度でいいもの?「座りすぎの解消にはその程度でOK。左上のグラフのように、食後血糖値を下げるなどの効果は、ブレイク時の運動強度によって大きな差は生じません。座り続けるのをやめて、立って少し動く。まずはそれだけ。座りすぎを解消したうえで、運動を取り入れられれば最高です」
まず、“座りすぎず”、ありきだと。「はい。かつては立って行う低強度の活動がもっと身近にありました。しかし、今は家電や照明の操作は手元のリモコン、電話を別の部屋までとりにいくことはなく、連絡も携帯電話やメールですみます。ふき掃除もできるロボットが登場する時代なので、立って動く機会を意識的につくる必要があります。そのひと手間を習慣化していただければ、座りすぎの問題は解消可能。それによって、かえって集中力が高まり、作業効率が上がるメリットも期待できますよ」
平日の座りすぎが週末のジム通いを相殺!?
誰しも「運動しなくちゃ」という意識はあるはず。でも、多忙のあまり、週末に集中して運動し、平日はだらりという人もけっこう多いのでは?アメリカでは、運動もするけれどそれ以外はほとんど座っている人を「アクティブカウチポテト」と呼ぶのだそう。「このタイプの人を追跡調査した研究で、座りすぎによるマイナスは運動によって相殺できないことが明らかになっています。運動効果を得るには、座りすぎ解消が必須です」。
日中は座りっぱなしのデスクワーク→疲れて帰宅→疲れているからだらりと座る、という悪循環が、一番怖い状態
週末にジムで汗を流すのは、もはや一般化した生活スタイル。しかし、この運動が座りすぎをチャラにしてくれるわけではない
実は、立って動くだけでも健康への影響は大!
座りすぎによる健康リスクを減らすには、まず立って活動する時間をはさむこと。「それだけでも食後血糖値低下への影響は大。さらに中性脂肪を減らすには運動を」。
A:一日7時間ずっと座る
B:2時間座ったあとの5時間は、20分ごとに2分ずつ立って、ゆっくり歩くなどの低強度活動でブレイクを入れる
C:Bのブレイクを通常歩行以上の速度で歩くなどの中高強度活動にする
BとCで糖尿病にかかわる数値の改善に、大きな差はなし!
(Dunstann et al. Diabetes Care, 2012より)
結論!
健康寿命を延ばすには?
1. 座りすぎない生活を送る
→社会生活はどうしても座位が基本。こまめに姿勢を変える意識をもって。
2.今より10分程度、歩いたり体を動かす時間を増やす
→1を心がけたうえで、適切な運動量を確保。通勤に取り入れるなど、継続できる工夫を。