188cmの長身。その表現力は意外なほど繊細だ。エクラ「韓流ドラマ」アワード2023の作品賞にも輝いた『愛だと言って』では主人公のドンジンを演じた。その作品をともに振り返りながら、愛と孤独の男キム・ヨングァンの魅力に迫る前後編の後編。
ドンジンの役づくりでは準備したものすべてがハマった
ドンジンの後ろ姿や仕草に孤独がにじみ出ているのも印象的だった。
「こだわったのはドンジンの雰囲気。人には見せたくない心の傷を内に秘めたまま生きているって、どんな人だろうと。ドンジンは彼自身がまとっている空気感が非常に重要でした。じっと黙っているだけなのに、なぜか悲しげに見えるという」
そのために、まずは役の外見から気を使った。部屋着以外にはスーツは5着、靴は1足だけ。すべてモノトーンにして、おしゃれさえ楽しまない人に見せた。現場では、共演者たちとの楽しい会話に入ることを避けてひとり散歩するなど、ドンジンの感情を維持しながら距離を置いた。
「むずかしかったのは彼が何かに喜んでいる姿を表現すること。ドンジンはものすごく細かい仕草や表情の動きで感情を表現しなければならなかった。テクニックでなんとかなるものではないのですが、喜んだ瞬間でも表情は硬いまま、目つきの印象を変えたりするとか。見つめる視線ひとつにも気を使いました」
自分のアイデアや工夫も積極的に提案。そんな努力もあってか、今回2度目のタッグとなる監督からも「あなたが好きなように演じていい」というお墨付きまで。
「いろいろ準備しても、実際に現場でハマることって実はあまりないんです。でも、ドンジンはその時々で準備したものがことごとくぴったりで。ちょっと役に深く入り込みすぎなんじゃないのか、自分自身にダメージがくるのでは、と自分で自分が心配になるくらいでした」
演じるとその役に没頭してしまうタイプ。現在撮影中の作品では、役づくりからかなり体重を落としていると聞いた。その徹底した減量ぶりを心配したマネージャーが、毎日「ごはん食べた?」と確認電話を欠かせなかったというエピソードも。
「だから、もし過去に戻れるとしたら、この仕事を始める前の僕に。俳優になってからずっと仕事ばかりしているので、仕事以外の自分の予定があまりないんです。戻ったら、この仕事につくのを少し遅らせて、いろんなことも経験したい。そうして、演技以外のこともいろいろ楽しみながら生きていく人になりたいです」
ピュアな年下男子から、定番のツンデレ男子まで、『愛だと言って』のドンジン以外にもこれまで多くの恋愛ものを演じてきた彼。韓国ではロマンス職人と呼ばれることも。ならば、ご自身も恋愛上手?
「うーん、僕自身は自分から好きだとアピールするタイプではありませんね。静かにじっと相手を見守っているというか。今は、偶然が重なって恋愛につながるのが理想かな」
演じることに夢中になってしまうタイプ。もし、過去に戻れるなら、仕事を始める前の僕に戻って演技以外の楽しさも見つけてみたい
鬼気迫る悪人役まで 変幻自在な彼の今後も期待
九頭身のバランスと広い肩幅。男っぽい頼もしさをのぞかせる端正な顔だち。韓国では漫画から抜け出てきたような麗しい男性を“マンチッナム”と称賛するのだが、その完璧なビジュアルはまさにマンチッナム。
でも、それだけではなく。熱さを秘めた優しいまなざしは、おおらかさをにじませたかと思うと、せつなくなるほどの繊細さをあふれさせる。時にはゾッとするほどの冷たさを宿すことさえ。ついた異名は“表情富豪”。登場人物たちのそれぞれの心情を、その体に、その表情にのせて。
「仕事を始めたころに比べれば、今は自分が成長しているのを感じられます。俳優としても人間としても」
最新作『悪人伝記』も評判。現在は’25年のNetflix配信作も撮影中だ。いずれも悪人役。これまでとはまた違う鬼気迫るヨングァンさんに出会えそうでそれもまた興味深い。愛と孤独のその先の、彼の新たな挑戦にも期待せずにはいられない。
仕事を始めたばかりのころに比べれば、今、自分がすごく成長しているのを感じます。俳優としても人間としても
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