箱根駅伝の常勝チーム、青山学院大学陸上部の原晋(すすむ)監督と学生たちをずーっと支え続けてきた、寮母・原美穂さん。人生がガラッとかわって気づいたことと、ハッピーでいられる秘訣を聞いた。
運命に流されるのは悪いことばかりじゃない
富岡 美穂さんは広島で専業主婦だったのに、夫の晋さんが突然、大学陸上部の監督になるといい出して、そこで人生がガラッと。
原 そうです。監督の妻が寮母になってくれるとありがたい、といわれて。
富岡 学生たちみんなを裏でサポートする役割ですね。
原 基本的にサポートのほうが好きだし、そこまで意識してやっていたわけではないんです。でも青学が勝ち続けたおかげで、皆さんに〈支える人〉みたいに注目していただいて(笑)。自分のやってきたことには価値があると、誇りに思えるようになりました。
富岡 ご自身に向いている仕事だと、思われますか?
原 私はそもそも、専業主婦になって子供を育てるのが夢だったんですけど、意外と専業主婦だったときはおもしろくなくて(笑)。ちょっと派遣で仕事をしたとき、コピー1枚取っただけで「ありがとう」っていわれて、ビックリすると同時に、なんかうれしいなって。結婚前に働いていたときには気がつかなかったけれど、私は働くのが好きなのかもしれないって思いました。
富岡 一度離れてみてわかること、ありますよね。
「私にとって何が大切で何が必要ないか、忙しい毎日だったからこそ、真剣に考えはじめたんです」――原 美穂
原 寮母の仕事も、最初は何をすればいいのかわからなかったんですけど、とりあえず目の前のこと、やるべきことをやっているうちに、箱根駅伝で優勝したり、4連勝したり。するともう毎日が忙しすぎて、そのころ何をしていたのか、記憶がないんです。
富岡 あのころ、取材殺到しましたものね。
原 毎日がむしゃらに動き回って流されていたような気がします。でも、そのときに、全部受け入れていたら身がもたないし、無理なものは無理だし、これからはやりたいことはやっていかなくちゃ人生おもしろくないな、と気づいたというか。私の人生で何が大切で何が必要ないかそのころから考えはじめました。
富岡 流れに身を任せてこられたのですね。
原 ですからよく「やりたいことが見つからない、流されるばかりです」って嘆くかた、いるじゃないですか。私は「流されても別にいいんじゃないの?」って思うんです。流されながら自分の適性がわかったり、自分が本当にやりたいことが見つかることもあるだろうし。
富岡 実は私もこの仕事を始めた10代のころは、将来への夢も特に考えていなかったんです。でもひょんなことから流されて。今にして思えば、ラッキーだったと思いますけど……。美穂さんはこの先も寮母のお仕事を?
原 そうですね、ほかにやりたいことが見つかるまでは続けるのかな。そろそろゆっくり何も考えない生活をしてみたいな、と思うこともあるんですけど。
富岡 子育てをする身として、とても興味のあるお話でした。これからも美穂さんのご活躍を楽しみにしています。
「望んでいたわけではなく、流されたとしても、そこで一生懸命生きていけば、何かがつかめそう」――富岡佳子
「もともとサポートすることが好き。寮母になって20年たちましたが、自分のやってきたことには価値があると誇りに思えるようになりました」――原 美穂
Yoshiko's impression
原美穂さんにお会いしてみて……
寮母というお仕事に向き合うプライドを感じました。しっかりした意志をお持ちですし、中に一本、強い芯が通っているのを感じます。美穂さんご自身の心身が安定されているから、監督さんにも学生さんたちにもすばらしい対応ができるんですね。サポートすることの歓び、勉強になりました!
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