夏の読書ガイドとして恒例となり、今年で7回目を迎えた文芸エクラ大賞。文芸評論家とライター、担当編集者がこの1年間に出版された本で最もおすすめしたい本を、忖度なしで厳選! 今回は「未知の世界に震撼賞」受賞作をご紹介。
『イスタンブル、イスタンブル』
地下牢獄の一室で語り合い、空想する世界
ブルハン・ソンメズ 最所篤子/訳
小学館 ¥2,750
「牢獄に閉じ込められた政治犯たちが拷問に耐えていたわり合い、時に笑いあう姿は胸に迫るものが」(細貝)。学生、ドクター、床屋、老人。4人の政治犯が語り合った互いの過去、そして愛するイスタンブールの魅力とは。
『照子と瑠衣』
70歳の女性ふたりの行動力に唖然呆然!
井上荒野 祥伝社 ¥1,760
「70歳になったら好きなことをしてもいいでしょ!という感じ。振り切れ感に脱帽です」(斎藤)。傲慢な夫に愛想をつかした照子と、老人マンションの陰湿な人間関係にいや気がさした瑠衣。元同級生ふたりが無謀な逃避行を決行する。
『いい子のあくび』
むかつきや息苦しさ、もう我慢できない!
高瀬隼子 集英社 ¥1,760
会社員の直子は自転車に乗りながらスマホを見る中学生をよけずにぶつかっていくことにするが、その理由は。「彼女の行動は危険だが、そのイライラは理解できる。小さなむかつきをみんなが抱えているのがリアルです」(斎藤)。
『ともぐい』
熊出没が問題視される今読みたい究極の“熊小説”
河﨑秋子 新潮社 ¥1,925
熊爪は独特な嗅覚で熊を仕留める猟師。獣のような彼にも時代の変化が忍び寄ってくる。「北海道の大自然と混然一体となっている熊爪。そんな彼をおびやかす盲目の女性の存在感にもひきつけられた」(山本)。
文芸エクラ大賞とは?
私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。
選考基準は、’23年6月~’24年5月の1年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書や、書店員がおすすめのイチ押し本を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!
文芸評論家 斎藤美奈子
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。