この1年間の売れた本&話題の本をプレイバック。文芸評論家・斎藤美奈子さんと本の最前線から世の中を考える! 今回は23年本屋大賞の上位「少女小説」について。
この1年を振り返ると世の中はほぼコロナ禍前の様相に。そんな中、’23年の年間ベストセラーランキングで1位、2位を占めたのは児童書だった。「休校が何度もあったコロナ禍に児童書が売れたのは納得でしたが、今回は意外でしたね」
毎回ニュースになるのが本屋大賞や芥川賞、直木賞だが、’23年~’24年の受賞作や候補作にはいくつかの特徴が。「本屋大賞10位以内に“少女小説”が3冊。3冊とも“現代の家族”を映し出していました。芥川賞受賞作や候補作には重度障がい者などマイノリティからの問いを描くものが。社会的な話題になりました」
能登半島地震や大ヒット映画『ゴールデンカムイ』も、関連本を読めばもっと見えてくるものがあると斎藤さん。「真偽がわからないままネットに情報が流れ続ける今、きちんと取材した本や時間をかけて書いた本が果たす役割は、ますます大きくなると思います」
“成瀬ブーム”が席巻。23年本屋大賞の上位は“少女小説”
書店員さんが選ぶ本屋大賞は、考えてみれば、従来、少年少女の話が多い。それにしても今回は大賞が『成瀬は天下を取りにいく』で2位が『水車小屋のネネ』。6位も川上未映子さんの『黄色い家』と、少女が主人公だったのは印象的でした」と斎藤さんは語る。
「“成瀬”の主人公は舞台である大津という地方都市へのネガティブな感情が皆無で、地元愛がぶれない。日本中の地方都市在住者に自己肯定感を与えたのでは。家族と仲がいいけれど自立度が高い成瀬とは対照的に、“ネネ”と“黄色”の主人公たちはそれぞれ最低な親を見限って新しい暮らしを始める。しかも2作とも新聞連載小説です。子供が自分から親を捨てるという選択は今まで文学にあまり書かれませんでしたが、そういう小説が新聞に載り、文学賞で評価されたのは、多くの人が少女たちに共感したから。3冊の少女小説は“親ガチャの時代”を反映しているともいえそうです」
『成瀬は天下を取りにいく』
宮島未奈
新潮社 ¥1,705
『水車小屋のネネ』
津村記久子
毎日新聞出版 ¥1,980