【中村勘九郎×中村七之助インタビュー】父の意思を継ぎ、進化する芝居小屋「平成中村座」、再び浅草の地へ

十八世中村勘三郎が、江戸時代の芝居小屋の熱狂を現代に蘇らせたいという願いから、2000年に東京・浅草に誕生させた「平成中村座」。その舞台が4年ぶりに帰ってくる。

言葉を交わさずともわかる、ふたりが目ざすべきもの

中村勘九郎 中村七之助

(勘九郎さん)ジャケット¥114,400・パンツ¥74,800(ともにワイズフォーメン)・シャツ¥44,000・ネクタイ¥22,000(ともにヨウジヤマモト プールオム)/以上ヨウジヤマモト プレスルーム

4年ぶりに浅草で開催される「平成中村座」とあって、中村勘九郎と中村七之助は高揚感を隠しきれずにいた。

「小屋が初めて建設されたとき、『夢が建った』と父(十八世中村勘三郎)がいったくらいで、僕らにとってはまさに夢の場所。期間限定のホームだけど、いずれは壊さなきゃいけない儚さもある。そんな特別感があるんです」(七之助)

今回は、片岡仁左衛門が十七世中村勘三郎から教わった助六を勘九郎に伝えて初役で挑み、恋仲の揚巻(あげまき)を七之助が勤める『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』や、七之助が女方の大役・戸無瀬(となせ)を初役で勤める『仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居(やましなかんきょ)』など、話題性の高い演目が勢ぞろい。

「『助六』や『連獅子』はすでに決まっており、11月に歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵』を通しでやるという話も聞いたので、全体のバランスを見て、忠臣蔵の中でも特に好きな九段目をやろうと決めました。兄と楽屋でこの話をしていたとき、私が使っている父の鏡台にハエがとまっていて、『九段目で大丈夫ですか?』と聞いたら、じっと動かなかった。これはきっと、父からやれっていわれているのだと思いました」(七之助)

勘九郎と息子の勘太郎、長三郎の3人による『連獅子』も注目の演目だ。

「これは踊りの基本ともいえるもので、私たちも子どものころから父とともに連獅子を踊ってきました。言葉ではなく、体や雰囲気で感じ取ってきたものを彼らにも伝えたい。ふたりはスポンジのように吸収していて頼もしいです。長三郎は小さいころは何を考えているのかわからなかったけど、芝居をすごく好きになり、役に対する責任感も強くなってきました。平成中村座の1カ月でも、ふたりが成長してくれたらいいなと思っています」(勘九郎)

中村勘九郎

’26年を振り返ると、歌舞伎座、大阪松竹座に加え、全国11カ所で開催された『春暁歌舞伎特別公演2026』など、多忙を極めたふたり。共演する演目も多いが、言葉を交わさなくとも、お互いのやりたいことがわかるという。

「向いている方向や価値観が一緒というのは強いんじゃないかな。役者同士、いろいろな考え方がある中でやっていくのもおもしろいのだけど、弟とは煩わしさがないんです」(勘九郎)

「6月の『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』は、私が芸者小万役で、夫の笹野屋三五郎を兄と(尾上)松也がダブルキャストで演じました。松也とは友だちで長く一緒にいますが、『こういうふうにしたい』と意見を交わしながらつくっていく。一方、兄とは『こうしよう』『わかった』だけで通じ合うし、俯瞰で見ていて、すぐセンサーが反応する感じなんです」(七之助)

中村七之助

演目を少しでもよくしたいという共通の思いがあり、自然とすり合わせができるふたり。その先にあるものは?

「昔は『父みたいな役者になる』のひと言でした。今もその気持ちに変わりはありません。でも、自分にしかできないものを突き詰めていくことで、自分なりの将来像が見えてくるはず、という思いも生じてきました」(七之助)

「父と一緒にいて最高の景色を見せてもらったし、僕たちもまたその最高の景色を見たい、みんなに見せたいという気持ちがあります」(勘九郎)

いよいよ、浅草の地で再び「平成中村座」の幕が上がろうとしている。

「江戸時代は、芝居小屋のまわりはにぎやかで、『この間の連獅子見たか?』なんて、あちこちで話題になっていたはず。きっと10月の浅草も街全体が活気づくでしょう。それは芝居小屋の役目のひとつですし、一日を通して浅草で楽しんでいただきたいです」(七之助)

「昔の芝居小屋は“悪所”のひとつだったんでね。わざわざ行ってみたくなるドキドキ感があるし、そこでしか見られないものもある。最近はさまざまな制限があるけれど、“健全ではない場所”という思いは常にもっていたいし、それをぜひ楽しんでもらいたいですね」(勘九郎)

中村勘九郎
中村勘九郎
中村勘九郎

なかむら かんくろう●’81年、東京都生まれ。歌舞伎俳優。’12年、六代目中村勘九郎を襲名。古典から新作まで意欲的に挑戦し、歌舞伎のみならずNHK大河ドラマ『新選組!』『いだてん〜東京オリムピック噺~』などに多数出演。息子は勘太郎と長三郎。

中村七之助
中村七之助
中村七之助

なかむら しちのすけ●’83年、東京都生まれ。歌舞伎俳優。’87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助として初舞台。女方として活躍する。自身のラジオ『中村七之助のラジのすけ』も好評。’25年4月に結婚し、’26年8月に女児誕生。

『平成中村座 十月大歌舞伎』

『平成中村座 十月大歌舞伎』

10/1~25、平成中村座(浅草寺境内本堂裏・仮設劇場)で開催。第一部は『初帆上成駒宝船』『仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居』『連獅子』、第二部は『御存 鈴ヶ森』『助六曲輪初花桜』。出演は勘九郎、七之助、勘太郎、長三郎、片岡仁左衛門(23~25日)ほか。問:0570・000・489(チケットホン松竹)

撮影/TOWA ヘア&メイク/宮藤 誠・中村優希子(Feliz Hair) スタイリスト/木村厚志(勘九郎さん) 取材・原文/吉川明子 ※エクラ2026年11月号掲載

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