不安が多いコロナ禍の今だからこそ知っておきたいことをテーマに、各スペシャリストにリモート取材! 脳研究者でもある池谷裕二さんがおすすめしてくれた本は、冷静にコロナ禍と向き合うためのヒントになりそう。「脳がやりがちなクセ」「考えるとはどういうこと?」といったヒトの基礎がわかる本、今後の社会や時間の使い方を模索したくなる本など、どれも読めば刺激的で希望をもって現実に立ち向かいたくなる!
『FACTFULNESS』(ファクトフルネス)
ハンス・ロスリングほか
上杉周作 関 美和/訳
日経BP社 ¥1,800
世界的ベストセラー。思い込みではなく事実を見る習慣を身につけるための本。「亡き著者が今後人類を脅かすリスクとしてあげたのが感染症の世界流行。真実を見ぬく目に戦慄を覚えます」。
『暇と退屈の倫理学』
國分功一郎
太田出版 ¥1,200
「あれほど足りなかった時間なのに自粛中なぜ持て余したのか?この本でそんなストレスの源流をたどってみましょう」。哲学者が考えた人間らしい生活、喜ばしい生き方とは。
『「自閉症」の時代』
竹中 均
講談社現代新書 ¥940
伊藤若冲や新海誠のブームから21世紀の自閉的傾向を解説。「コミュニケーション能力は唯一絶対の社会的尺度ではない。次は自閉スペクトラム症が開放される時代。そんな予感のする本」。
『ホモ・デウス』上・下
ユヴァル・ノア・ハラリ
柴田裕之/訳
河出書房新社 上・下 各¥1,900
「労働とは、幸せとは、進化とはという根源的な問いに思いを馳せたいとき絶好の本」。イスラエル人の歴史学者が、漠然とした不安を抱きがちなテクノロジーと人類の未来について考える。
『ファスト&スロー』上・下
ダニエル・カーネマン
村井章子/訳
ハヤカワ・ノンフィクション文庫
上・下 各¥840
「人は偏見に満ちている。判断ミスも犯すからこそ脳の性質を学んで自分の実態を冷静に知ることが、今大事だと思います」。認知心理学者が人間の意思の決まり方を解説した現代の名著。
池谷さんに聞いてみました!
Q.この時代の「読書」の意味って?
コロナ自粛では、入力重視の生活になります。読書は入力の最たる形態です。こんなにまとめて読書に打ち込める時間は平素はなかなか得がたい貴重なものです。しかし忘れてはならないのは、脳は入力よりも、出力を重視するように設計されているという厳とした事実です。入力した情報を生かすためには、出力する必要があります。脳は、行動や発言などの出力体験を通じて、その情報をモノにします。つまり、「読む(入力)」という行為で得た知識や情報は、「実践(出力)」することで意味を得ます。フリードリヒ・ニーチェも「本をめくることばかりしている学者は、ついにはものを考える能力をまったく喪失する。本をめくらないときには考えない」といっています。こんな時期だからこそ、妙な「唯読書論」者にならないように気をつけたいところです。
Q.外出自粛中に読んだ本は?
外出自粛という未経験の異質な「時間」を過ごすようになって、「そもそも時間とは何か」について考えるようになりました。『心にとって時間とは何か』(青山拓央)、『脳と時間』(ディーン・ブオノマーノ)、『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ)をまとめて読みました。時間は自然にある「あたりまえの存在」だと思っていましたが、これが一筋縄ではいかないのです。この3冊の著者は哲学者、脳研究者、物理学者で、それぞれの視点から、まったく異なる独自な「時間像」が浮かび上がります。その推論プロセスはどれもスリリングです。ところが、3冊ともが行きつく結論が「時間は虚構だ」なのです。どうして異なる登山口から入ったのに、そして道中の風景も異なるのに、三者が同じ山頂に到着するのでしょうか。ここでは書き控えたいと思います。
池谷さんの最新刊!
『パパは脳研究者』
池谷裕二
扶桑社新書 ¥1,000
結婚11年目で生まれた娘の成長記録には脳研究者ならではの観察眼と愛情深いまなざしが。「ウソをつけたらサルからヒトになる」などの言葉に大納得!