新型コロナウイルスの先行きが見えない中、気持ちもふさぎぎみになる今日このごろ。そんなときにあえておすすめしたいのが「笑えるマンガ」。マンガに精通した編集者や書店員などの"目利き"が、大人の女性がくすりと笑えるマンガを厳選! 笑えば心と体の調子も上向きに!
①誰も傷つけない“令和”の笑い
「日々の暮らし」を描いたマンガ
1.腐女子の尊い人生讃歌!
『裸一貫! つづ井さん』
つづ井 文藝春秋 既刊2巻 各¥950
腐女子たちをユーモラスに描くコミックエッセイ。「腐女子の生態を描いた作品は以前にもありましたが、解釈の違いをめぐってバトるとか、自虐に紐づいたヒリヒリする系の笑いではなく、推しを全力で応援し、別の推しを応援する友人の心意気も尊重する姿が楽しくも尊い。平和な笑いが読後感をハッピーにしてくれます」(山脇)。
2.中3男子とヤクザの奇妙な交流を描く
『カラオケ行こ!』
和山やま KADOKAWA ¥700
合唱部部長の中学生・聡実が、ヤクザの狂児に歌唱指導を頼まれて─。「ギャップからくる可笑(おか)しみが隅々まで行き届いた作品。切実な思いを抱えた聡実の十代らしいとまどいと、人の懐にするりと入ってくる不思議な魅力の狂児のかけ合いが味わい深く……。おもしろいうえにひと言ひと言にふたりの人間性がにじんでいるんですよね」(山脇)。
3.最高にくだらない教師の日常がいい
『女の園の星』
和山やま 祥伝社 既刊1巻 ¥680
女子校の国語教師・星先生と生徒たちのなんでもない日常なのに、なぜか爆笑必至! 「先生と生徒の淡々としたやりとりにどうしてこんなに笑えてしまうのか不思議に思っていると、じわ~っと心に浸食してきて気づいたら夢中に。ちょっとずれながら進む会話がくせになります。発売直後から売れ行きの勢いが止まりません」(山崎)。
「笑えるマンガ」事情《1》
山脇麻生さんに聞きました!
和山やまさんは今どきの笑いを描く最注目の作家。
お笑い界では第七世代が台頭し、安易な容姿いじりなどに走らない“誰も傷つけない笑い”が目立ってきた、と山脇さん。「ぺこぱの全肯定ツッコミはその最たる例ですが、令和のお笑い界で起きているこのパラダイムシフトはマンガ界にも起きていると思います。その筆頭が和山やまさんです」
’19年から’20年に立て続けに発売された3冊の単行本はいずれも大ヒットに。
「特異なキャラクターが出てくるわけではなく、まじめな人のちょっとしたこだわりやギャップでくすりと笑わせる。今までならスルーされていたような些細なことを日常からすくい取り、笑いに昇華させる手腕はお見事。それでいて品もあるので、大人が読んでも安心感があるんですよね」
仕事や家族のこと、日々の暮らしに追われて疲れぎみの大人の女性にこそ、笑えるマンガは欠かせないという山脇さん。
「疲れぎみでも柔らかな笑いを提供してくれるので、もはやサプリのようです」
②真剣勝負が生む洒脱な滑稽さ
「お仕事」を描いたマンガ
1.能ある鷹は爪がない!?
『無能の鷹』
はんざき朝未 講談社 既刊2巻 各¥500
見た目は有能なのに仕事がまったくできない女性が、実力はあるのに自信なさげな同僚とタッグを組んでみたら……。「鷹野ツメ子は何もできなすぎて社内ニート状態。なのにデキる風の見た目から、取引先などが勝手に勘違いし、惑わされてしまう。その絶妙なズレっぷりがたまらなくいい。斬新すぎるお仕事マンガ」(吉川)。
2.警察官だって人間です!
『ハコヅメ 交番女子の逆襲』
泰 三子 講談社 既刊15巻 各¥610〜
新米女性警察官・川合と指導役の藤部長を中心に、警察官のリアルな現場をコミカルに描く。「作者は元女性警察官。警察官も人の子で毒を吐きたくなることもあるんだな、と妙にリアルで説得力あり。でも、職務に向き合うときは真剣そのもの。笑いだけでなく、下ネタ、シリアス、人情ものと多彩な要素がてんこ盛りです」(吉川)。
3.'70年代少女漫画の舞台裏は?
『薔薇はシュラバで生まれる 70年代少女漫画アシスタント奮闘記』
笹生那実 イースト・プレス ¥1,091
美内すずえ、くらもちふさこ、山岸凉子などのもとでアシスタントをしていた著者の貴重な体験を描いたコミックエッセイ。「先生とアシスタントのかたがたが、いいものを生み出そうと必死だったドタバタ現場があってこその、美しい作品やストーリーだったのかと思うと笑いながらも感謝の気持ちでいっぱいになります」(山崎)。
③感覚と思考のズレがツボる
「異世界転生」を描いたマンガ
1.奈良時代はミニマリスト天国?
『あをによし、それもよし』
石川ローズ 集英社 既刊3巻 各¥600〜
ミニマリストの山上が奈良時代へタイムスリップし、その質素さに大歓喜! 偶然出会った欲深い奈良の役人・小野老との日常を描く。「ミニマリストの視点で見る奈良時代の新鮮さと、その気持ちがまったく理解できない奈良人との感覚のすれ違いから生じる、ちぐはぐな会話。なのに妙に気の合うふたりに笑いが止まらない」(山崎)。
2.天才軍師がクラブシーンで天下統一
『パリピ孔明』
四葉タト 小川 亮 講談社 既刊4巻 各¥630〜
『三国志』の天才軍師・諸葛亮孔明が現代の渋谷に転生し、駆け出しシンガー・英子の軍師に。「この設定だけでもそそられますよね。孔明が選んだ道は英子の夢をかなえることですが、軍略、内政、外交などすべてにおいて天才といわれた彼が、クラブシーンでも策略をめぐらし、その思惑がピタリとはまる展開がとにかく痛快」(山脇)。
④“天然”こそ笑いの原点!
「動物」を描いたマンガ
1.飼い主にツッコミまくりの犬
『今日のさんぽんた』
田岡りき 小学館 既刊1巻 ¥591
柴犬ポン太と飼い主のりえ子のお散歩コメディ。「ほのぼのとしたお散歩場面で和めそうと思いきや、りえ子の独白に対するポン太の的を射た、小気味よいツッコミに吹き出してしまいます。
変わりゆく街の風景の中で、交差しているようでしていないひとりと一匹のかけ合いは、笑顔とともに、ノスタルジックな気持ちも感じられます」(山崎)。
2.江戸時代でも、猫が好き!
『猫奥』
山村 東 講談社 既刊1巻 ¥640
大奥勤めの滝山は、大の猫好きなのに生まじめな性格と厳しめの顔ゆえに猫にも周囲にも猫愛が伝わらず……。「鋭いまなざしの中に潜むひそかな気持ちを、推し猫の吉野ちゃんにぶつけようとして空回りする滝山と、ツンデレ猫の吉野ちゃんの攻防が愛おしい! 江戸時代の大奥に絶妙に溶け込んだ猫あるある描写がたまりません」(山崎)。
⑤破天荒な言動が笑いを誘う!
「女の生き方」を描いたマンガ
1.パワフル毒舌マダムの独壇場
『ハイパーミディ 中島ハルコ』
東村アキコ 原作/林真理子(『最高のオバハン中島ハルコの恋愛相談室』 文春文庫) 集英社 既刊3巻 各¥440
不倫に疲れたライターのいづみ38歳が、失意のパリ取材でパワフルなハルコ52歳と出会い、停滞していた人生が動きだす。「ハルコは基本どケチで自慢話が多いのですが、ここまでやられるとむしろ爽快。人は裏のある言葉に敏感なものですが、彼女にはそれがなくて小気味いい! 読むとスカッとモヤモヤが晴れます」(山脇)。
2.45歳無職が突然の離婚危機に?
『後ハッピーマニア』
安野モヨコ 祥伝社 既刊1巻 ¥900
名作「ハッピー・マニア」続編。「夫のタカハシが突然恋に落ちて離婚を迫られたカヨコ45歳。別れたくないのは生活を失いたくないから? 愛しているから?という自問に答えが出せない。その葛藤がリアルなんだけど滑稽。笑えるんだけど、世代的に自分に重ねると笑えない。安野先生の切れ味は令和時代も鋭すぎ!」(吉川)。
「笑えるマンガ」事情《2》
山崎陽子さんに聞きました!
’20年の売れすじは、読み手の悩みに寄り添うマンガ
和山やまさん旋風は書店でも如実だったという、紀伊國屋書店の山崎陽子さん。
「クールな目線で、ユニークな登場人物が多数登場する和山やまさんの人気は特に目立ちました。3作品あり、各約1000冊と異例の売れ行きで驚きました」
ほかによく売れた作品は、庶民でも心は貴族という母が主役の『プリンセスお母さん』、イカの体にゴリラ顔の女オタクの日常を描いた『オタクだよ! いかゴリラの元気が出るマンガ』など。
「これらの作品は、生活あるあるや家族ものとして勢いがあり、エクラ世代が読んでもおもしろいはず。『ハイパーミディ 中島ハルコ』や『後ハッピーマニア』も大人の女性に響いたようで、よく売れていましたね。読者の立場や悩みに寄り添ってくれる作品が増えていて、素敵な傾向だと思いました。また、最近は特にたくさん笑えて、読み終わったあとに元気をもらえるようなマンガが求められているように感じています」
<編集者・ライター 山脇麻生>
マンガ誌編集者を経てフリー。コミック評やマンガ家インタビューを手がける。初めて読んだマンガ誌は幼稚園のときに買ってもらった『ちゃお』。小学生のとき、友人の家で読んだ『火の鳥』で大人マンガに開眼。
<書店員 山崎陽子>
紀伊國屋書店新宿本店のコミック担当5年目。『週刊少年ジャンプ』の『封神演義』以来、少年・青年向けを中心に愛読。新刊が楽しみなのは『ダブル』。好きな作品が多すぎて年間ランキングが決められないのが悩み。
<ライター 吉川明子>
小学生のころに『りぼん』や『週刊少年ジャンプ』でマンガにハマって○十年。個人的な趣味だったが、最近は各媒体でマンガ関係の執筆も。聖典は『ジョジョの奇妙な冒険』、注目作は『紛争でしたら八田まで』。
⑥マンガ好きJマダム&スタッフが選んだ「笑った一冊」8選
『僕とロボコ』
宮崎周平
集英社 既刊1巻 ¥440
メイドロボが普及した時代、ある小学生の家に来たのは想定外すぎるロボコ。『ドラえもん』やいろんな作品の設定やネタがたくさん盛り込まれています。エクラ世代にわかるものが多く、懐かしさも。ロボコはむしろ人間以上に喜怒哀楽が豊かで愛おしい!(副編U)
『セクシー田中さん』
芦原妃名子
小学館 既刊3巻 各¥429〜
地味な経理部員・田中さんの秘密の顔はベリーダンサー。婚活女子の朱里がそれに気づき、触発されてベリーダンスを習いはじめ、自分に自信をもちはじめます。登場人物が人間味にあふれ、笑えるし名言もいっぱい! 前向きになれます。(中島さん)
『すみれ先生は料理したくない』
大久保ヒロミ
ぶんか社 既刊2巻 各¥627
美人なピアノ教師だけど、料理が苦手。失敗するたびにそのときの気持ちをこめた曲を即興で演奏するのですが、料理あるあるをうまく突いています。女で料理ができてあたりまえという、誰もが感じるプレッシャーをコミカルに描いています。(佐藤さん)
『飼ってない猫』
関口かんこ
講談社 既刊2巻 各¥760
なぜか続々とノラ猫が家にやってきて好き勝手にやり、主人公も「飼ってない」スタンスで猫と張り合います。デッサンがくずれぎみなタッチも“ギャグマンガ感”があっていい味わい。それでいて泣けるところもあり。猫派以外の人にもおすすめ。(編集長O)
『はぐちさん』
くらっぺ
祥伝社 既刊6巻 各¥840~
正体不明で不思議な生き物のはぐちさんと、くたびれたOLのシュールな暮らしを描いた作品。ささやかな日常のエピソードに心の底から笑い、泣き、深く深く癒されています。ラジオ体操に取り組む姿の滑稽さは思わずコーヒーを吹き出すほど!(大地さん)
『動物のお医者さん』
佐々木倫子
白泉社 全12巻 各¥390
札幌のH大学獣医学部を舞台にした名作。動物がかわいくて、動物好きなら笑える場面多数! シベリアンハスキーのチョビは女の子なのに般若顔。初登場シーンで一気に心をつかまれました。大人になって読み返すと違った魅力が感じられます。(ゆうきさん)
『坂本ですが?』
佐野菜見
KADOKAWA 全4巻 各¥620
クーレスト(クールの最上級)高校生の坂本くんならどんなトラブルもスマートに解決。ネガティブ→ポジティブの転換に元気をもらえます。「ニーディストラクション(ひざかっくん)」など、本気でくだらない秘技や名言も見どころ。シュールな絵も大好き。(東原さん)
『波よ聞いてくれ』
沙村広明
講談社 既刊8巻 各¥630〜
北海道のラジオ局でひょんなことからDJになったミナレ。無茶な企画や事件など、ありえない状況に巻き込まれながらも、口八丁といいかげんさでのりきるミナレの生き様は型破りのおもしろさ。コントのような怒涛のセリフ回しも魅力です。(弓気田さん)
<モデル ゆうきさん>
ジャンルは幅広く。最近は専門的なものなど、自分の知らない情報が多い作品をよく選んでいる。
<美容コーディネーター 弓気田みずほさん>
小さいころから『週刊少年ジャンプ』を読み、今も少年、青年マンガ多め。独自の世界観がある作品が好き。
<ファッションエディター 東原妙子さん>
マンガを読まずに寝る日なし。名作も駄作も、絵がうまくてもヘタでも、新旧問わず、かなりの雑食系。
<美容ライター 中島 彩さん>
ヒューマンからラブストーリー、癒し系のマンガまで、少年マンガ以外はオールジャンル愛読。
<画家 大地由紀子さん>
子供のころはマンガを自分で描いていたことも。ジャンルは問わず絵が美しく叙情的な作品が好み。
<主婦 佐藤智子さん>
『ガラスの仮面』のような主人公が奮闘する物語が好き。寝る前にマンガを読むのが習慣。
<エクラ編集長O>
マンガ情報はSNS上で常にチェック。猫をはじめとした動物ものに目がなく、話題作はほぼ網羅。
<エクラ副編U>
『週刊少年ジャンプ』連載中の『僕とロボコ』に夢中! 次回作が出るまで3回は繰り返し読む日々。
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