長くなった家時間を快適にするために、住まいへの関心が高まっている。活躍するクリエイターたちは、忙しいからこそ家を整え、家時間を大切にしている。そんな彼女たちにインテリアづくりや心地よさのためのルール、ヒントを教えてもらい、この春こそ好きなものに囲まれた、自分らしい心豊かな暮らしを実現しては?
【目次】
ファッション、ビューティ、料理のプロたちのセンスが生きる空間づくり
①おしゃれで心地いい空間を作るコツ
まずはイメージづくりからベースとなる素材も大切に
「家には美しいと思うものしか置かないと決めています。そうすることで自然と整い、居心地もよくなってきます」と語る行正さん。今回おじゃましたのは、お教室やテレビの料理番組の撮影で使用しているスタジオ。10年ほど前にリノベーションを施し、自宅と同様に、北欧の家具や照明がセンスよくあしらわれている。同じ北欧家具でも自宅はモダンなスタイルだが、スタジオは木目の美しいローズウッド材の家具を基調にした少しクラシックなスタイル。どちらも心地よいインテリアづくりのためのルールは変わらない。
「インテリアのイメージを考えるときは、まずモデルとなる素敵な空間を見つけること。そしてその空間を分析してみることをおすすめします。私の場合は高校時代に見た映画の中の家や、留学中に知り合った友人宅、仕事で何度も訪れたデンマークの家など。エレガントでインテリジェンスを感じるインテリアがずっと変わらず好きです」
イメージが固まったら床や壁など大きな面積を占めるところから決めていくと全体のトーンが定まり、その後の家具や小物選びもスムーズに進むとか。
「つい椅子や照明など、小さなものに目がいきがちですが、大きな面積のものこそ質感がとても大切。実際に目で見て、自分の好きなものを選ぶことが大切だと私は思います」
この家のLDKにはローズウッドの家具を置くと決めていたので、それを基準に進めたそう。ローズウッドの木の色に調和するグレーの絨毯をベースカラーにし、キッチンの天板にもグレーを含んだニュアンスのある色を選択。ラグやクッション、アートなどで加えるさし色には、グレーに合う赤とその反対色であるブルーをといった具合だ。こんなふうに進めていくことで統一感のある空間に仕上がっていく。
映画『恋愛適齢期』に出てくるキッチンを参考にしたという白を基調としたさわやかなキッチン。天板は、床の絨毯のグレーと家具の濃いブラウンに合わせてニュアンスのあるグレーブラウンのシーザーストーンを選んだ。キッチンにもLDと同じように、ルイスポールセンの照明を吊るしたり置いたりして、明かりによる雰囲気づくりを大切にしている。家電の存在感を消すため、冷蔵庫はキッチンの収納扉と同じ扉をつけられるものに。
この空間にぴったり合う、デンマークの蚤の市で見つけたという深いブルーのお茶セット。
食事の前にシャンパンを飲んだり、食後にお茶を楽しむコーナー。北欧ヴィンテージのローズウッド材を使用したサイドボード、コーヒーテーブル、チェアを置いた。
さし色の赤とブルーが絶妙に入った工藤村正さんのアートを壁に。花瓶、クッション、椅子の張り地、写真には写っていないが床のラグと、赤とブルーを織り交ぜてセンスよくコーディネートされている。
椅子とテーブルでコーナーを。アートや照明も大切な要素
行正さんが大切にするルールが、大きなソファを置かないこと。かわりに座り心地とデザインのいい椅子と、コーヒーテーブルを置いたコーナーを数カ所つくり、シーンや気分によって過ごす場所を変えて楽しんでいる。簡単に動かせるから、模様替えが気軽にできるのも魅力だ。そしてコーナーには必ず美しい照明も。
「照明やアートもインテリアの大切な要素です。照明は比較的気軽に、しかも大きく印象を変えられますし、アートがあるのとないのとでは大違い。空間の質、空気感が違ってきます」
自分の“好き”を見極め、インテリアを整えたら、花を生け、食卓をしつらえる。そんな日々の積み重ねが美しい暮らしを育み、心地よさへとつながっていく。美しいと思えるものだけに囲まれた暮らしは、またさらなる美しいものを引き寄せるのだ。
ローズウッドのダイニングテーブル&チェアは、行きつけのインテリアショップ、『ルカスカンジナビア』で購入。座面は使い込むほどに味わいを増すヌメ革。深紅のラグはギャッベ、ペンダントランプはルイスポールセンのPHアーティチョーク。
上の写真のガラスブロック奥に位置する部屋。グレーの絨毯は同じだが、LDKとは雰囲気を変えて壁をイタリアンスタッコ塗りの薄いブルーグレーにし、ブルーとオレンジをさし色にして美しくまとめている。
「訪れた記念に」と旅先でオブジェやアートを購入することも。ベトナムの仏像も旅先で。
「ローズウッドのテーブルは、和食器ともとても相性がいいんです」。柿右衛門窯の器や古伊万里など、器はネットオークションなどで購入。
LDKのピアノの横につくられたもうひとつのくつろぎのコーナー。チェア、クッションとさし色の赤が効果的にあしらわれている。
座面のペーパーコードが白いYチェアは最近見つけたもの。もともと持っていたYチェアと並べて使用。ラグはパキスタンのもの。
窓辺には寝転んだり、くつろぐのに最適なベンチシートをつくった。下にはCDやプレイヤーなどさまざまなものを入れる収納を確保。
アクセントとなっているクッションはトルコで見つけたもの。
お教室開催時に大活躍の10人は座れる大きなテーブルは、Yチェアと同じハンス・J・ウェグナーのデザイン。シャンデリアはベネチアで購入した。「テーブルには花やキャンドルを欠かしません」と行正さん。
②家の中心にキッチンを。家族が集う心地よい家づくり
家族と家の真ん中にあるキッチンが心地いい居場所
「わが家はみんな食べることが大好き。自然とキッチンに集まり、ワイワイ過ごします。そこで思いきって家の中心をキッチンに。家具のようにインテリアになじむものを選びました」
LDKの真ん中にドーンとつくられたオープンキッチンは、家族で料理をし、食事や団欒をし、仕事場にもなる、さながら松井家のコックピットのよう。海まで自転車で2〜3分。真冬でも時間があるとさっと海に行き、サーフィンをするという松井さん。子育てのしやすさ、夫の仕事環境、夫婦で好きなサーフィンができるなど自分たちのライフスタイルによりフィットする湘南に、生まれ育った東京から12年前に移住をした。数年間は賃貸に暮らし、4年前に理想の間取りのマンションを見つけ、リノベーション前提で購入。
「子供が3人いるので4LDKは欲しかった。見つけたときは即決でした。リノベーションは工務店さんに直接依頼。個室は内装を、共用部分は大きく変えました。夫が図面に手を入れ、ネットで調べ、ショールームをめぐって建材を調達し、自分たちでペンキも塗って家づくりを楽しみました」
大学生の長女は東京でひとり暮らしを始め、長男は来春就職。家族はどんどん変化していくけれど、戻ってくる場所はこのキッチン。そんなふうに思える、家族の真ん中にいつも松井さんの笑顔とキッチンのある、温かい住まいだ。
自宅にいる日は、ほぼずっとここにいるとか。キッチンはさまざまなメーカーのショールームを見て、使い勝手、サイズ、素材感などが気に入ったリクシルのものを選択。天板はセラミック製。奥のガラリ扉は「経年変化を楽しめるように」と木製を選んだ。扉の中には食器から調理家電、冷蔵庫までが収納されている。スツールは日本人デザイナー、AZUMIによるLEM。
仕事もキッチンカウンターやダイニングテーブルでするという松井さん。カウンターの幅に合わせて選んだダイニングテーブルはエクステンション式で、家族全員そろうときや友人が集まるときは広げて使用。赤いラグはお姉さまがテヘラン駐在時に購入してくれたもの。床のタイルはサンワカンパニー。
古道具屋で見つけたラタンのランプのまわりには、次男の愛らしい作品が。観葉植物と鉢は湘南のTSUTAYAで購入。
LDKの隣は和室。「息子のサーフィン仲間の合宿所になったり、次男の遊び場にも。畳のスペースはやっぱりつくってよかったです」。座面を藍染にした名作ニーチェアはLITMUSが手がけた。壁に飾った藍染の布やムーンカレンダーもLITMUSのもの。
サーフィン後、玄関から直接入れる動線も確保したバスルーム。床はなぐり彫りという木材の仕上げで足ざわりがいい。
③好きなものをミックスさせる心地いい家づくり
今の自分たちに心地いい家、暮らしを湘南で実現
3年前「試しに家を借りて暮らしてみよう」と始まった逗子での暮らし。
「ビーチベッド持参で海に行き、お酒を飲んでいると、約束もしていないのに友人たちがやってくる。いろいろな職種の人とつながれるのも魅力です」と坪田さん。夫が逗子でお店を開くことになり、本格的に家探しをスタート。駅からも海からも徒歩圏の立地に、頃合いのいい広さの物件を見つけ、スケルトンリノベーションをして昨年入居。
「やりたいことが明確だったので、地元の工務店に依頼しました。毎日現場に足を運び、実際に見ながら打ち合わせができて大正解。バスルーム以外は間仕切りのないオープンなプランですが、それぞれのスペースが落ち着くサイズ感でとても住み心地がいいです。場所がら湿気が多いので風通しよく、また仕事をしているので掃除がラクなようにも配慮しました。家事動線もスムーズで、長年温めてきた『こうしたい!』がすべて実現しました」
インテリアは愛用するTRUCKの家具を軸に、好きなものをミックスさせた。ほどよく力の抜けた、洗練されたかっこよさは坪田さんそのもの。ここで暮らすようになり「夫婦ともに仕事とプライベートの区切りがはっきりしてバランスよくなった」ともいう。抜群のセンスの裏には、衣食住すべてに愛情を注ぎ、美意識を働かせた、こんな暮らしの積み重ねがあるのだ。
「インテリアはひとつのテイストでまとめず、ミックスさせるのが好き」と坪田さん。木製の家具が多いので、あえて床は無機質な仕上がりのモールテックスにしたとか。2つのソファとチェストはTRUCKのもの。
「コンパクトで厨房みたいに使いやすい、シンプルなキッチンにしました」。鍋や調理家電はデザインの美しいものを選び見せる収納に。冷蔵庫は業務用を選び、モールテックスでつくったカウンター下に設置。食器などは白い扉の奥に収納している。
寝室の壁は1面だけニュアンスのあるカーキに塗った。ベッドはアクメファニチャーで購入。ベッドに寝転び、正面の壁にプロジェクターで投影して映画やドラマを見るのもお気に入りの時間。床はチーク材のヘリンボーン張り。
「仕事でTRUCKを取材した際に、ものづくりの真摯な姿勢と製品のすばらしさに感銘を受け、その場でオーダーしたのがこの机。以前は食卓として使っていました。木の質がとてもよく、年月とともに味が出てきて、木製家具はTRUCKで買いたくなります」。横は収納として使う、飛行機で楽器を運ぶためのコンテナ。何脚か持っていたイームズのチェアは気に入ったこの2色のみ手元に残した。「ここで仕事をしていてふと顔を上げ、室内を見回したときに、好きなものしかないことにとても幸せを感じます」
チェストの上には旅の思い出や香りもの、坪田さんのジュエリーがセンスよく置かれている。
LDKには壁をカーキに塗った夫のコーナーも。愛用のサングラスが並ぶ。
食事をしたり写真集を眺める、イームズのテーブルとピエール・ジャンヌレのチェアを置いた窓辺のコーナー。ラグはZARA HOME。
TRUCKのサイドテーブルの上にはレコードプレイヤーを。ラグや家具は気分や季節によって置き替えて楽しんでいる。
④窓からの景色で四季を感じる癒やしの家時間
トータルビューティカンパニー『uka』代表としてサロン経営、サロンワークや媒体での創作、講師など幅広く活躍。ネイルケア&技術の普及に努める。その技術・センスには定評があり、著名人や美容関係者からの信頼も厚い。近著は『雰囲気からして美人』(ダイヤモンド社)。
長くなった家時間の癒しは窓からの景色と穏やかな空間
緑あふれるゆったりとした敷地に建てられた築50年近い瀟洒なヴィンテージマンション。昨年同じマンション内で引っ越しをしたばかりという渡邉さん。
「以前は、都会ならではの夜景がとてもきれいな高層階に、夫と父と3人で暮らしていました。父が亡くなり、夫とふたり暮らしになったのを機に、住まいをダウンサイジングしようと、たまたま空いた下の階に引っ越すことに」
今度の家はリビングダイニングの窓の外いっぱいに、大きなケヤキや桜の木々が広がり、落葉する冬以外は森の中にいるような景色になる。
「夏は窓の外が緑一色で、鳥のさえずりが聞こえ、都会のど真ん中なのにまるで軽井沢にいるかのよう。秋は紅葉が美しかったですし、春には桜を楽しみにしています。日々忙しく、終日家にいることなどほぼありませんでしたが、コロナを機に家で過ごす時間がかなり増えました。そのタイミングでこの家に越してくることができ、窓から眺める景色にとても癒されています」
忙しい合間の気分転換は、大好きなインテリアショップをめぐることという渡邉さん。
「昔から、白を基調にグレーを加えたり、クッションで少し色を添えるようなインテリアが好きです。スタイルでいうとモダンすぎず、少しかわいらしさやクラシックなテイストが感じられるパリのホテルのような雰囲気かな」
家具は引っ越しを重ねても使い続けているものがほとんどで、20年近く愛用しているものも。やはりインテリア好きだったお父さまが購入したり、一緒に選んだ家具もあるとか。
「あるとき、大好きなザ・コンランショップで見つけたコンソールの写真を『これどう思う?』と父に見せたら、『それ、この前買っておいたからもうすぐ届くよ』なんてことも。父とは好みがとてもよく似ていました」
ソファはカッシーナ・イクスシー、コーヒーテーブルはコレックスリビング、革製のチェアはザ・コンランショップで購入。家具はほとんどが、このマンションに引っ越してくる前から愛用しているものばかり。最近新たに加わったのが美しい絨毯と、壁にかけた、夫が購入した小畑多丘氏によるシルクスクリーン。
テラスに置いた鉢植えの観葉植物が、敷地内に植えられた大きなケヤキや桜の木との景色をつないでくれている。窓辺のコルビュジェのシェーズロングに寝そべってくつろぐのは至福の時間。
本文で触れた、玄関のザ・コンランショップのコンソール。上のピカソのリトグラフも、下に敷いた絨毯もお父さまが選んだもの。
より快適な暮らしを求め住まい方をアップデート
引っ越しを機に、渡邉さん夫婦は寝室とバスルームを別々にしたとか。
「当初はコロナ対策のためだったのですが、分けてみたらとても快適で。好きな時間にバスルームを気兼ねなく使えるし、眠りの質もよくなりました。なので『もうこのままでいいか』ってことになりまして(笑)」
お互いの寝室はコンパクトにし、一番広い個室を夫婦のクロゼットに当てて、すっきりと暮らせるようにも工夫したそう。クロゼットの窓辺にはメイクスペースも確保した。
「自然光でメイクする気持ちよさを日日実感しています」
リビングや廊下には、アート好きな夫が選んだ現代アートがセンスよく飾られている。ご夫婦ともに多忙を極める中、あふれる緑と好きなものに囲まれた家での豊かな時間が、日々の大きなエネルギーとなっているに違いない。
カッシーナ・イクスシーで購入したゆったりとしたダイニングテーブルは、日々の食事はもちろん、友人を招いたり、仕事をする場としても大活躍。20年近く愛用する名作、キャブチェアも味わい深く経年変化している。棚の上にはお父さまから譲り受けたピカソのリトをさりげなく。
テレビ台として使用するハラーシステムの横には、サンタ&コールのフロアランプを。
「座り心地がいいんです」というレザーの座面の軽やかなチェアもザ・コンランショップで。
フランスの名作、ジェルデのランプ。
以前は3つ縦に並べていたという本棚。「この家では横置きのほうがいいかなと、横に2つ並べ、残りのひとつは夫の寝室に」。友人の河原シンスケさんの描いた絵やukaのネイルオイルなどが置かれている。
「友人を招くときは持ち寄りで、ここでみんなで料理をすることも多いです」という広々としたキッチン。
クロゼットの窓辺につくったメイクスペース。ドレッサーとして使用する収納棚はオーダーでつくったもの。
渡邉さんの寝室。最近のヒットはiPad用のスタンドだとか。「寝ながらドラマや映画を見たり、SNSをチェックするのが快適に」。窓辺のデスクで仕事をすることも。ベッドリネンやレースのベッドカバーはZARA HOME。
廊下には、現代アート好きな夫が購入したアートが飾られている。奥のアンティークの食器棚は渡邉さんがKEITAMARUYAMAで見つけた。中にはバカラのグラスなどを収納している。
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