地方移住に憧れがあるものの、住み慣れた東京を離れるのはやっぱり不安。仕事や日々の暮らしはどう変わるのか。見落としがちな落とし穴はないか。リスクも検討したうえで、最初の一歩を踏み出すために、自分がなぜ移住をしたいのか動機を明確にすることからスタート!
移住で一番大事なことは
WHY>> WHERE >> WHAT
「WHY=なぜ移住するのか、WHERE=どこに移住するのか、WHAT=そこでなんの仕事をするのか、の順で考える。なかでも一番大切なのがWHY。まずは動機を明確に」(藻谷さん)
移住は「これからどう生きるか」を考えること
東京から地方への移住は何年も前から注目されていたけれど、新型コロナウイルスの影響でその動きが加速している。東京から1〜2時間圏内を中心に二拠点生活を始めることも珍しくない今。著書『コロナ移住のすすめ』で数多くの地方移住者の例を紹介している藻谷ゆかりさんに、最近の移住の傾向について聞いてみた。
「Uターンがひとつのパターンですが、最近増えているのは妻の実家に戻る『嫁ターン』、おじいちゃん、おばあちゃんの家を相続する『孫ターン』、地方移住した夫婦の近くに両親が越してくる『追いターン』などのケースです。そして昨年はご存じのようにきっかけがコロナ、という人も激増しました。鎌倉や房総、茨城など、東京に通勤しやすいエリアに、テレワークがしやすく、広い家が欲しいということで転居する人が増えましたね。地方に暮らすことで生活費は抑えられ、新たな楽しみも増える。『コロナ移住』は、コロナをきっかけに働き方や暮らし方を変え、これからどう生きるかを考えることだと思います」
強い動機、目的さえあれば何事も乗り越えられる
「東京を離れて、ちょっとのんびり暮らしたい」。そう思っている人はきっと多い。でも、金銭面や仕事のこと、住み慣れた東京を離れ、新しい土地で暮らすさまざまな不安もつきまとう。移住してみたものの、うまくいかなかったケースを耳にすることも。
「一番大切なのは、なぜ都会を離れて地方移住をしようと思うのか、目的をはっきりさせること。Uターンの場合、親の介護や事業を継ぐなど、目的がはっきりしているケースが多いですが、特にそれらがない場合、最初に『なぜ?』を考えることが必要です。『農業がしたいから』など事業の目的があればはっきりしますが、なんでもいいんです。『景色のいいところに住みたいから』『のんびりと生活を楽しみたいから』で十分。『満員電車がいやだから』などのネガティブな理由でもよく、必要なのは思いの強さ。思いが強いほど、この先もさまざまな場面で対処が具体的にできますし、田舎暮らしでの不便さも乗り越えていけます」
まずは自分の胸に「WHY?」と問いかけること。その思いの強さを試すために、最初は賃貸でスタートするのもあり、という。
「住みたいエリアでとりあえずマンションやアパートを借りる手もありますね。あとはホテルや旅館に少し長めに滞在してワーケーションをしてみたり。その土地にいるほうが情報も入ってきやすいですし、そこで人間関係ができてから正式に移住を決める人もいます」
移住先と仕事の仕方はセットで考える
次に肝心なのは、移住に伴い、仕事をどうするかということ。
「かつての地方移住は退職した人が好きな場所へ行くのが一般的でしたが、今は仕事によっては80歳まで続けられる時代ですよね。40、50代はまだまだ仕事をしなくてはいけない年齢。リモートで今の仕事を続けられる人なら移住先も自由に決められます。転職をする場合は、行き先を決めてから転職サイトなどで仕事を探したり、新たな事業の展開を考えたりする必要があるでしょう」。40、50代のエクラ世代はまだまだ柔軟。新しい環境や暮らしにも対応しやすく、働き方、暮らし方の変化も受け入れやすい、移住にはいい時期だという。
お金と人間関係も移住の大きなポイントに
そして気になるのはお金のこと。二拠点の場合、固定資産税はダブルでかかることに。ほかにも、見落としがちな費用はあるのだろうか。
「東京のマンションの平均価格は6000万円。地方へ行くとそれが1500〜2000万円くらいになりますから、不動産取得価格はかなり安く済みます。そのわりに賃貸は物件そのものが少なく、割高なのですが。食費もかなり節約できると思います。反対に高くつくのが車にかかるお金。住む場所にもよりますが、夫婦で1台ずつ、特に寒冷地に住むとなったら保険や税金のほか、タイヤ代も家計を圧迫します。地方では車がないと動けないところも多いですし、命にかかわることでもあるので、ないがしろにはできないですね。
また大きな出費ではないけれど、自治会費や地域の消防団に払うお金が発生する場合もあります。納得できずに拒否をすると関係が非常にこじれることも。住むと決めたらそこに長く住んでいる人たちの立場を理解し尊重することが大切です。都会にはそのような一見わずらわしいコミュニティがほぼありませんから、最初はとまどうかもしれません。ちょっと覚悟が必要ですね」
自分がその地域で暮らしていけるか、それを見極めるためにも、やはり可能な人は移行期間を設けるのが理想かもしれない。
「二拠点生活もできる間はしたほうがいいと思います。でも交通費もかかりますし、いずれどちらかの不動産が重荷になるときがきます。そのときにどうするか。資金的に余裕があるなら東京のほうを残しておき、貸すこともできますね」。エクラ世代なら二拠点目をいずれ終(つい)のすみかに、という考えも多いはず。でもあまりその考えにはとらわれないほうがいいと藻谷さんはいう。
「間違う可能性もありますし、この先、もっといいところが見つかる場合もあります。定住することを目的とせず、柔軟に考えておいたほうが楽しいですし、この先の変化にも臨機応変に対応していけるのではないでしょうか」