近所の中華屋さんでテイクアウトを頼んだときのこと。肉と野菜の味噌炒めがひどくかわいい包装紙にくるまれて来るではありませんか。中華と懐かしい薔薇のファンシー柄というミスマッチが何とも新鮮です。後日また出かけて、今回は包まないようお願いして新品を1枚ゲット。その上に、ソフビ人形の"こやけちゃん"を置いてみました。
外側のほのぼの感と中身の生っぽさのギャップで思い出すのは、昭和の『週刊新潮』。谷内六郎さんのリリカルな絵が世のゴタゴタを包んでいたなんて、今思うと本当に不思議です。もちろん中身に負けることはなく、むしろその消毒具合がすばらしい。がっぷり四つに組む中吊り広告では、煽情的な見出しのほうが骨抜きになっているほど。好意的に解釈するなら、誌面はひたすら世の移ろいを伝え、かたや表紙は"世の中が変わっても変わることのないもの"を教えてくれている。うーむ、昭和って贅沢です。
そんな贅沢を求めて、自分が生まれる前の『週刊新潮』をぽつぽつジャケ買いしておりますが、集めた表紙を並べてみると、青が目立ちました。実際、「六郎ブルー」といってもいいくらい、青は谷内さんの描く世界を象徴する色です。昼の空の青、川や海の水の青、夜の闇の青、ガラス瓶の青、藍染めの着物の青。特別なことは何もない、当たり前すぎる配色なのに詩情漂うところが天才的で、惚れ惚れします。青と対比される白も清らかで澄んでいますね。
さて、このほど緊急事態宣言が明けまして、『エクラ』10月号でご紹介しました『生誕100年 谷内六郎展 いつまで見ててもつきない夢』(~12/12、横須賀美術館)が無事に開幕しました。会場内は一部撮影可能です。写真2枚目は、あまり目にする機会のない「らくだ工房」で制作したろうけつ染の帯や風呂敷など。広告、舞台、映画関係の展示品も多く、『鬼畜』(1978年)の映画ポスターはちょっとびっくりでした。絵本『ぎんのわっか』『びんのそら』の原画がまた美しくて必見です。
美術館の前の浦賀水道は、観音崎にアトリエを持っていた谷内さんも親しんでいた風景です。展示を見終わって美術館から出ると、外の時間がゆっくりと流れているような気がするはず。ご本人もきっとこんなふうに感じていたんだろうなあと思うと、しみじみ嬉しい。
最後にひとつだけ。せっかくの生誕100年記念展なのに図録がないのは残念ですが、そのかわりとして究極の谷内六郎グッズを見つけました。『週刊新潮』表紙絵のほぼすべてをあしらった、お豆腐並みに極厚の便箋(¥3,300)。これは確実に保存用の1冊が必要ですね。四半世紀におよぶ偉大な軌跡の中から、自分だけのお気に入りをぜひ見つけてください。
(編集B)