さまざまな思いを胸に、アカデミックなものから趣味的なものまで、今、再び学びの門をたたく人が増えている。歌手の相川七瀬さんのそのひとり。大学で神道や日本の伝統文化を学ぶ相川さんに「大人になってからの学び」について伺った。
歌手・相川七瀬さん(47歳)
捨て授業はひとつもなし! すべて身になっています
アーティスト、妻、3児の母。そこに2年前、大学生という肩書が加わった相川七瀬さん。現在、國學院大學神道文化学部3年に在籍し、神道や日本の伝統文化について学んでいる。
神道に興味を抱くようになったのは、10年ほど前。ライブで訪れた地で、古来大陸から伝わった赤米(あかごめ)の文化を伝承する「赤米神事」を知り、感銘を受けたのがきっかけだった。
「子供のころから神社やお祭りが好きでしたが、ツアーで全国をめぐるうちに、その土地ならではの民俗文化があることに興味を抱いて。そんなときに、赤米神事を知り、心を打たれたんです」
当時すでに継承者不足で存続が危ぶまれていた赤米神事だが、「これは、後世に引き継ぐべき日本の文化」と思った相川さんは、早速、行動を開始した。神社の宮司や地元の人に話を聞き、文献を読むなど、赤米神事について学ぶ一方、普及のために講演やイベントにも参加。そうするうちに、「多くの人に賛同してもらうには、まず自分自身が、神道の知識をきちんと身につける必要がある」と、実感したという。
「最初は、科目履修生として、國學院大學で講座を聴講することから始めました。それが、楽しくて、楽しくて、しかたがなかった! 知れば知るほど、神道って奥が深いな、神事って魅力的だなと。それで、大学で本格的に学びたいと思うようになったんです」
相川さんは、芸能界入りのため、高校を中退している。大学を受験するには、まず高等学校卒業程度認定試験に合格する必要があった。仕事と家庭、ただでさえ多忙な身だ。「無理をせず、やり遂げられるように」と、最初から2年がかりでの合格を目標に設定し、家庭教師をつけて基礎から学びはじめた。そして、予定どおり2年で合格し、翌年、大学の入試にもパス。45歳にして、晴れて大学生に。
「同じ年の4月、長男は大学生、次男は中学生になりました。つまり、3人とも、同じ時期に受験生だったということ。息子たちに『勉強しなさい!』というかわりに、『(お互いに)勉強しようか』という言葉がけができたのは、よかったですね。『みんなでのりきった』という気がしています」
大学進学の副産物はほかにも多々ある。「何を学ぶにも、ベースになるのは国語力」と、母国語の大切さを再認識し、一般教養を通じて、エクセルやパワーポイントといったパソコンスキルも習得。レポートはもちろん、講演会の資料づくりなどフル活用している。
「どの授業も、自分が学びたくて選んでいますし、貴重な時間とお金を費やしていますからね。『単位がとりやすそうだから、とりあえず』みたいな“捨て授業”は、ひとつもなくて、すべて身になっています。
それに、授業で得た知識が、過去の経験とカチッとつながることがあるんです。私の場合、先生の話を聞いて、『ああ、だから、あの神社とあの神社が結びついていたんだ』と、実際体験してきた神事と結びついたり。若い人は、大学で学んだことを、あとから、『あのときのこれは、こういうことだったのか』と気づくのだとしたら、私たち世代は逆回転。でもそれが、今の学びを、より深いものにしてくれるような気がしています。この年代での学びって、けっこうお得ですよ」
「神道を学ぶには、古事記と風土記は必読書! 何度も読み返しています」という相川さん。すでに卒論のテーマを「赤米神事」に決め、多数の関連書籍にも目を通している
予習・復習は、仕事の移動中や、末っ子の習い事の待ち時間といった“すき間時間”を活用。「勉強を始める前は、その時間を何に使っていたんだろうと不思議になるくらいです」
テキストのあちらこちらに付箋がはられ、書き込みされているなど、“猛勉強の痕跡”がくっきりと
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