今、行きたい「能登」。人・自然・アート・食の理想郷へ

震災から2年、復興へと歩む能登。人生を彩る、すべてが響き合う豊潤なこの地へ。今、大人が求める真の贅沢を探しに、多幸感に包まれる旅に出よう。

能登の夕日

誰もが気にとめつつ、逡巡している。もう能登を訪ねてもいいのだろうか、それも気楽な観光気分で。
被害の大きかった地域にフォーカスし復旧の道半ばという報道ばかりで、それでは未来への希望が伝わらない。
実際訪れた地域では、心痛む爪あとを目にすることはほとんどなかった。
能登は日本海に面した小さな半島だが縦に長く、最北端の珠洲まで金沢から車で2時間30分を要する。
町は点在しており、現状もそれぞれ。もちろん、いまだ苦労されるかたがたがいることは事実だが、比較的被害が抑えられた金沢寄りの「口能登」、中央部の「中能登」地域には、この地で生きる覚悟を決め、日常を取り戻している人も多い。
しかし能登=被災地のイメージで「もう旅先の候補にないのかも」という不安の声も聞こえてくる。
迷いとともに始まった取材だったが足を運んで初めて得ることがある。
優しさと憐れみは紙一重だ。豊かな自然、たくましい人々……
もう一度、楽しむために能登へ。授かる力に驚くことになる。

能登の海岸

金沢から輪島方面へとまっすぐのびる「のと里山海道」に車を走らせる。

すると黄色い花の群れが、至るところで目にとまった。聞けば生態系を脅かす悪玉のセイタカアワダチソウだという。

半島を覆う勢いの、一見愛らしい花が抗えない自然の力と時の経過を物語る。

能登の今を支える人々の中にはこの地に惹かれた移住者も多い。

震災を体験してなお、ここで暮らす気持ちは揺るがなかったのだろうか。

自然とつながる環境に惚れ込んで10年前に東京から移り住み、『ヴィラ デラ パーチェ』を営む

平田シェフはこう教えてくれた。

「地震の翌日、晴れた海の向こうに立山連峰がくっきり見えたんです。あの日から、僕は何があってもここでやろうと思いました」

静かな決意に、思わず胸が熱くなった。

能登の海岸

能登半島は、海に2つの顔をもつ。

朝日が昇る東側の「内浦」は富山湾に面しており、波も穏やか。

反対の西側、美しい夕景を望む「外浦」は荒々しくダイナミック。

昔から“能登はやさしや土までも”と謳われるが、温かさが身に泌みる土地。

ここで生まれ育ち、「内浦」で『ふらっと』という宿を営む船下さんは懐深い能登のお母さん的な存在だ。

伝統の発酵調味料「いしり」の匠と評された父の仕事を、夫でシェフのベンジャミンさんと30年守り続ける。

さらに震災後は、廃棄の危機にあった輪島塗を救う活動にも邁進している。

「躊躇せず、まず能登に来てほしい。海がきれいだし、ゆったりとできて、人間らしさを取り戻せると思います。この最果ての地で、立ち上がっていく私たちの姿と、両面を見てほしいです」

里山里海の滋味深い食文化、素朴だけれど心温まる宿もある。

今の能登には、清浄な力が満ちている。

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撮影/TISCH(MARE Inc.) 構成・原文/古泉洋子 取材協力/金沢市観光協会 ※エクラ2026年1月号掲載

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