ワイン&フードジャーナリストの安齋喜美子さんが、イケてる一本をご紹介する連載企画『飲むんだったら、イケてるワイン』。今回は、レモンやハーブ、菩提樹の香りが心地いい「サンセール ブラン ラ・クレ・デュ・レシ」をご紹介。
どこまでも真っ白。無欲のまま、生きる人。
Anthony GIRARD
サンセール ブラン ラ・クレ・デュ・レシ
雪が、静かに降りつもる。踏みしめた足跡も消され、真っ白な世界に包まれる。こんな日にワインを開けるなら白がいい。それも、かぎりなくピュアで少しふっくらとした味わいのものなら、この世のすべてを内包したような純白の景色によく似合う。
選んだのはロワールのソーヴィニヨン・ブラン、「アントニー・ジラール サンセール ブラン ラ・クレ・デュ・レシ 2019」。レモンやハーブ、菩提樹の香りが心地よく、繊細な酸味が魅力的。透明感のある淡いグリーンの色合いも美しい。造り手はアントニー・ジラール氏。老舗「ドメーヌ・デ・ブロス」の長男に生まれた彼は、ローヌやブルゴーニュの巨匠のもとで研鑽を積み、ロワールへ戻った。だが、仲のよい弟との間に将来想定される相続の問題を回避するためにすべてを弟に譲り、自らのワイナリーを立ち上げた。畑も醸造タンクもないゼロからのスタートだったが、彼の心意気に賛同した人々の協力を得て、彼は“自分らしいワイン”を誕生させた。
このワインに合わせるなら、クリームたっぷりのフルーツサンドを。それもオレンジを使ったものなら、繊細で優しい酸味にフィットする。純白の景色を見ていると、心も少しずつ澄んでいく。冬の一日、どこか儚さを感じさせるワインとともに、透明になる時間があってもいい。
フランス、ロワール地方。ソーヴィニヨン・ブラン100%。ミネラルがしなやかで、透明感に満ちた味わい。ラベルに描かれているのは“新しい物語の扉を開くカギ”。厳格なリュット・レゾネ(減農薬)栽培。グラタンやチーズリゾット、鶏のローストなどとも好相性。
750ml ¥4,620/ヌーヴェル・セレクション