第1回目の取材でわかった、女性は更年期で「声変わり」し、放っておけばオジ化してしまうという事実。でも、ちょっとした発声トレーニングで、声のオジ化は防げるといいます。発声のメカニズムに詳しく、声の治療に取り組む朴澤孝治先生に、そのトレーニング方法を教えていただきました。
朴澤耳鼻咽喉科院長。東北大学医学部臨床教授。医学博士。東北大学医学部卒業。日本ホリスティック医学協会常任理事。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。米国ハーバード大学留学中の基礎研究成果、東北大学病院助教授、仙台社会保険病院院長補佐など長年にわたる臨床経験をもとに、耳鼻咽喉科一般の診療を行う。 2011年に朴澤耳鼻咽喉科を開院。
横隔膜と肋骨まわりの筋肉を鍛えるロングトーン・トレーニング
小田:先生、大人の女性の声枯れ、声のオジ化を阻止する方法ってありますか?
朴澤先生:日々のちょっとした発声トレーニングが効くんです。まずは、話しているうちに声がだんだん小さくなってしまう、震えてしまうというお悩みを解決する発声トレーニングです。
息をいっぱい吸い込み、人と話すくらいの声量と音程で「あーーー」とできるだけ長く発声してみましょう。このときのポイントは、尻すぼみにならないよう、できるだけ一定の声量で息を吐き続けること。時計の秒針を見ながら、またはスマートフォンのストップウォッチアプリなどを利用して、時間を計ってみましょう。最初は5秒くらいしか続かないかもしれません。10秒続けば合格。訓練していくうちに30秒くらいまで続くようになる人もいます。
小田:やってみると、5秒を超えると声が不安定になり、尻すぼみになってきます(笑)。だからしゃべっている途中で「えっ?」と聞き返されてしまうんですね。
朴澤先生:このトレーニングにはふたつのメリットがあります。ひとつは息をいっぱい吸い込むことで肺の下側にある横隔膜が下がり、肋骨が広がって、肺がしっかりと膨らむこと。みなさん、長引くマスク生活のせいで呼吸が浅くなり、横隔膜の動きが悪くなって、肺がふくらみにくくなっているのでとても重要です。もうひとつは、肋間筋など肋骨まわりのさまざまな筋肉がしなやかに動くようになること。
小田:肋骨まわりの筋肉がサボっていると、肺から息がバーッと出てしまい、声が続かなくなるんでしたよね。
朴澤先生:その通りです。トレーニングを続けるうちに、肋骨まわりの筋肉が吐く息の量を上手にコントロールできるようになります。
気になる大人の女性の「声枯れ」「オジ化」。日々のちょっとした発声トレーニングでみずみずしく、女性らしい声を取り戻せる!
声帯のまわりの筋肉を鍛えるプッシング・トレーニング
朴澤先生:次にやっていただきたいのは、声帯をピンと張るための筋肉を強化する発声トレーニングです。腕を使い、首まわりの筋肉を緊張させながら「あーーー」と発声することで、声帯を動かす補助筋が鍛えられます。トレーニングを続けるうちに、声を出すとき左右の声帯がピタッと閉まるようになっていき、すき間のせいでかすれていた声が、クリアに透明感が増していきます。
小田:それはいいですね! かすれるとどうしても声にエイジング感が出てしまいますもんね。声が若返りそうです!
胸の前でしっかりと手を組み、腕を水平方向に外側に引っ張る。この状態で、普通の話し声の高さで「あーーー」と発声。途切れず、震えず、声量を一定に保ちながら10秒以上出し続ける。
胸の前で手のひらを合わせ、ギューッと押し合う。この状態で、普通の話し声の高さで「あーーー」と発声。途切れず、震えず、声量を一定に保ちながら10秒以上出し続ける。
椅子に座り、座面の脇を両手でしっかり持つ。垂直方向に引っぱりあげながら、普通の話し声の高さで「あーーー」と発声。この時も途切れたり震えたりしないように、声量を一定に保ちながら10秒以上出し続ける。
1日10分の朗読は、声枯れ防止にも、脳トレにもなる
朴澤先生:ロングトーン・トレーニングも、プッシング・トレーニングも慣れてきたら、低い音程から高い音程へ「あ⤴」と上げながら行ったり、高い音程から低い音程へ「あ⤵」と下げながら行いましょう。そうすることで、声帯を引っぱったり縮めたりする動きがよくなり、出にくくなっている高いほうの音域も、徐々に広がっていきます。
小田:声帯を引っぱると高い声が出るんでしたね。この発声トレーニングによって、声の低音化=オジ化を阻止でき、女性らしい声を取り戻せそうです! こうやって発声トレーニングをしてみると、日頃ちゃんと声を出していないことに気づきますね。トレーニングのあとは、声がしっかり出るようになります。私には子供はいませんが、お子さんが独立して、日中1回も声を発していないことがあると、よく友人たちがこぼしています。
朴澤先生:今は友人との連絡、離れた家族との会話も、ラインなどのチャットですみますからね。声を出すことを意識しないと、発声の機能は衰えていく一方です。ロングトーン・トレーニング、プッシング・トレーニングに慣れてきたら、好きな本を朗読することもおすすめですよ。文字を見て、その内容を理解して、声に出す。自分の声を耳で聞いて確認する。この一連の作業が脳トレにもなるんです。
小田:これらの発声トレーニングは、どのくらい行えばいいですか?
朴澤先生:それぞれ1日1回でもいいし、3回でもいいですが、毎日続けていただきたいです。とにかく声帯が疲れない程度に、気楽に気長に続けることが大事です。朗読は1日10分くらいでOKです。
小田:頑張らなくていいんですね! それなら続けられそうです。
私の話に無関心だった夫が、耳を傾けてくれるように
朴澤先生に取材をしてから1か月。仕事の合間に、ロングトーン・トレーニングとプッシング・トレーニングを毎日最低1回ずつ続けてみました。それぞれ10秒ずつなら全部行っても1分以内に終わるので、忙しいときでも苦になりません。むしろ声を出すことですっきりして、短時間なのに気持ちもリフレッシュするというメリットも。声がスムーズに出るようになって、声量もアップ。マスクを着用していても、人から「えっ?」と聞き返されることがなくなりました。
また、予想以上によかったのが朗読。最初の内は、5分も続けるのがきつかったのですが、ロングトーン・トレーニングとプッシング・トレーニングを続けるうちに、朗読も10分続けられるように。息継ぎや息の吐き方のコツもつかめて、滑舌もよくなったように感じます。
声がよく出て、しゃべるのがラクになると、不思議なことにもっと人と話したいと思うように。聞き取りやすくなったのか、いつも私の話に関心がなさそうだった夫が、耳を傾けてくれるばかりか、質問までしてくれるように。とても驚いています。思いもよらなかった発声トレーニングの効果。これからも細く長く、続けていこうと思います。声に自信がなくなった人は、ぜひだまされたと思ってお試しください。