50代女性が悩む声枯れと、声のオジ化。女性らしく「ちゃんと伝わる声」を保つには?【小田ユイコ×朴澤耳鼻咽喉科院長 朴澤孝治先生対談 #1】

マスク越しや、レストレランなどの飛沫防止パーテーション越しの会話だと、相手に話が通じず「えっ?」と何度も聞き返されることが多くなった小田。知らず知らずのうちに声が小さく、低くなり、かすれた発声になっていたことに愕然。無理に大きな声を出そうとするとのどが痛くなり、長時間話すことができません。いったい、のどに何が起こったのか? しっかりと相手に届き、あわよくばフレッシュな声を取り戻したい(笑)! 発声のメカニズムに詳しく、声の治療に取り組む朴澤孝治先生にお話をうかがいました。
朴澤孝治先生

朴澤孝治先生

朴澤耳鼻咽喉科院長。東北大学医学部臨床教授。医学博士。東北大学医学部卒業。日本ホリスティック医学協会常任理事。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。米国ハーバード大学留学中の基礎研究成果、東北大学病院助教授、仙台社会保険病院院長補佐など長年にわたる臨床経験をもとに、耳鼻咽喉科一般の診療を行う。 2011年に朴澤耳鼻咽喉科を開院。

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小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。

声が低くなるのは、更年期による女性ホルモンの低下が原因

小田:50歳を超えたころから声が低くなってかすれるようになり、特にコロナ禍になってから、話している相手に何度も聞き返されるようになりました。

朴澤先生:そういう方は、とても多いんですよ。声が低くなった主な原因は、加齢による声帯の変化。声は左右の声帯が閉じて振動することで出ますが、ベースとなる声の高さは声帯の長さ、幅、重さで決まります。声帯はホルモンの影響を受けやすく、更年期で女性ホルモンが減少することで声帯が変化。男の子の声変わりも男性ホルモンの影響で起こりますが、女性は更年期に声変わりが起こるのです。

小田:え〜!? 声が低くなったのって、声変わりだったんですか。どのように声帯が変化したのでしょう。

朴澤先生:声帯の厚みが増して、重くなり、多くの場合むくんだようにブヨブヨになります。そうすると、高い声が出にくくなり、低い声になるのです。また声帯がやせる方もいます。やせると声を出すとき左右の声帯がぴたりと閉じず、すき間ができてかすれ声に。

小田:だから、話している声を録音で聞くと、オジサンっぽい声になっていたんですね(笑)。

朴澤先生:実際、更年期を過ぎた女性の声の高さ(周波数)は、成人男性と似通ってきます。逆に男性は中年以降声が高くなる傾向にあります。高齢者になると甲高い声になる男性もたくさんいらっしゃいます。

小田:逆転現象ですね(笑)。

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    白っぽい部分が声帯。呼吸をしている時、声帯はV字に開いている。

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    声を出すとき、周囲の筋肉が働いて声帯は閉じ、声帯の長さを伸縮させることで声の高さをコントロール。同時に、吐く息で声帯を波打つように振動させて、声となる。

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ブラインドで他人の朗読を聞き、年齢を推定すると、ほとんど誤差なく年齢を言い当てることを示した実験結果。外見を見なくても声で年齢がわかってしまうほど、声には年齢が表れる。(Shipp, TとHollien, Hの研究による)

長引くコロナ禍で、声帯や肺を動かす筋力が衰え、声枯れに

朴澤先生:声が低くなるもうひとつの原因は、声帯を動かす筋肉の衰え。声帯は引っぱって長くすると高い声が出て、ゆるめて短くすると低くなりますが、それをコントロールする筋肉が衰えると、引っ張る力が弱くなり高い声が出づらくなるのです。

小田:コロナ禍で人とあまりしゃべらない期間が長かったことと関係がありますか?

朴澤先生:大いにあります! 腹筋や背筋、脚の筋肉と一緒で、声帯を動かす筋肉も使わなければ衰えます。特に、声帯を動かす筋肉はのどぼとけの中にあり、とても小さい。使わなければすぐに弱くなってしまいます。コロナ禍のステイホームやリモートワークで人と話す時間が減り、声が出にくくなったと当院に来られる患者さんは実際多いのです。

小田:マスク越し、パーティション越しだと相手に声が届かず、話しているとすぐに疲れてしまうのも、声帯まわりの筋肉の衰えが原因?

朴澤先生:それもありますが、声が届かないのは声量、つまり声の大きさにも問題があり、それは呼吸に関係しています。声を出すとき、成人女性で平均1秒間に240回も声帯を振動させています。そのエネルギーは吐く息。声が小さくなってしまうのは、吐く息が弱まっているからでもあるんです。

小田:吐く息が弱くなるのは、肺が衰えたのでしょうか。

朴澤先生:はい。正確にいうと、肺を動かす筋肉が衰えたと考えられます。肺は自分で勝手に膨らんだり縮んだりできません。肺の下側にある横隔膜が下がることで肋骨が広がり、肺はふくらみ、横隔膜が上がることで肺は縮みます。声を出すときは、この横隔膜の動きに加え、肋骨まわりのさまざまな筋肉が連動して働き、声量をコントロール。声が小さい人は、これらの筋肉がサボってしまっているのです。

小田:最初は声が出ても、話しているうちに弱々しくなってしまうんですよね。

朴澤先生:それは、まさに肋骨まわりの筋肉がサボっている状態。ふくらませた風船に笛の吹き口をつないだと想像してみてください。最初は「ピーッ」と大きな音が出ますが、だんだん弱くなりますよね。それは風船からの空気の出方がコントロールされていないから。肋骨まわりの筋肉がサボると、息がバーッと一気に出てしまい、声が続かなくなるのです。

小田:なるほど! カラオケで息が続かず、だんだん声が小さくなってしまうのも、肋骨まわりの筋肉が弱いせいですね。

朴澤先生:その通り。息を少しずつ出すロングブレスの調整ができなくなっているのです。肋骨まわりの筋肉は加齢でも衰えますが、声帯まわりの筋肉と同様、人とあまり話さないなど、使わないことでも衰えてしまいます。

小田:声枯れの原因、よくわかりました。声のオジ化、尻すぼみ化、今からでもなんとかなりますか? 

朴澤先生:大丈夫! 簡単なトレーニングで改善しますよ。お教えしますね。

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声が枯れるのは、声帯のエイジングが原因。また、声帯まわりの筋肉の衰えや、声帯を振動させる吐く息のコントロール力の低下も大いに関係あり。
スキンケアやメイク、美容医療などで外見を磨き、見た目の若見えには成功しても、声を聞いた途端、年齢がバレバレってよくありますよね。声が低く小さくなり、相手にしっかり届かないと、コミュニケーションもおっくうに。20代、30代のときのような高い声は出なくても、ちゃんと伝わるみずみずしい声でいたいし、カラオケでは音程を下げてもいいから、尻すぼみにならずに歌い切りたい! そして、声でオジサンに間違えられたくない(笑)! 次回#2では、朴澤先生が実際、声枯れで悩む患者さんに教えているというトレーニング法をご紹介。どのくらい効果があったかも報告しますので、お楽しみに!

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