年末年始は俳優キム・テリの天才的な演技力に酔いしれたい!【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.46】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、’24年下半期の超話題作「ジョンニョン:スター誕生」の主役を演じた俳優キム・テリをフィーチャー。神がかりな演技力で魅せる作品はハズレなし!年末年始にぜひ堪能したい。

韓国版「ガラスの仮面」⁉ 50代は絶対ハマる「ジョンニョン:スター誕生」

 美内すずえの「ガラスの仮面」、読んでました? 少女漫画に夢中になった時代を経てのエクラ世代の方だったら、多分ほぼほぼ100%近くが読んでいるのではと思います。1975年から連載が始まり、いまだ最終回に至っていない未完の超ベストセラー。普段は平凡極まりない主人公の少女、北島マヤの、ひとたび舞台に上がるや否や、姿・形・年齢はもちろん、瞳の輝きや髪の毛1本に至るまでその役柄になりきって一変してしまう圧巻のカメレオンっぷり。その描写の強烈さに、ワクワクと胸ときめかせながら貪るようにページを括っていたのは、きっと私だけではないはずです。とはいえ、こんなマヤみたいな人物は現実にはいないよなあ、やっぱり漫画だから描写が大袈裟よねえ、なあんて当然思っていたりもしたわけでして。
「ジョンニョン:スター誕生」のキム・テリ
「ジョンニョン:スター誕生」の主人公ジョンニョン役のキム・テリ。ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 でも、ひょっとすると、ひょっとするというか、この方ならかなり近いラインで北島マヤを体現しているといえるのかもしれません。そう、今回フューチャーする女性演技派俳優キム・テリ。’24年下半期の話題作の一つでもある「ジョンニョン:スター誕生」が、くしくも韓国版「ガラスの仮面」か!と思わせる内容でありまして、漁村で暮らす一介の少女が女性国劇のスターへと駆け登っていく物語。その主人公ジョンニョンを演じているキム・テリがまさに北島マヤを彷彿させるのです。

新作が出るたびにその演技力で話題をさらう憑依型俳優キム・テリ

 キム・テリといえば、‘22年の大ヒット作「二十五、二十一」で実年齢30代にして違和感皆無の高校生を演じたりとか、‘23年の「悪鬼」で取り憑いた悪鬼が表出するや否や、瞳の色さえ塗り替えちゃうような豹変ぶりを見せつけたりとか、新作が出るたびにその演技力と年齢不詳ぶりが話題沸騰しちゃう俳優さんでありますが、もともとはアナウンサー志望だったそう。大学入学後、演劇サークル団員の舞台を観て初めて演じることに興味をもち、サークルに加入したのがそもそもの始まりで、大学卒業と前後するように演劇の街テハンノ(大学路)の劇団に入団。舞台作品やインディーズ系の映画などに出演しながら今につながる演技力に磨きをかけていったらしいのです。前回紹介したピョン・ヨハンもインディーズ映画出身だし、そういえば『D.P.-脱走兵追跡官-』のク・ギョハンも確かインディーズ系。テハンノとインディーズ系は玄人好みの演技派の宝庫なのだなあと改めて。
「ジョンニョン:スター誕生」のキム・テリ
ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 そんなテハンノの星、キム・テリのメジャーデビューは、パク・チャヌク監督の映画『お嬢さん』(2016年)。彼女が1500倍のオーディションを勝ち抜いて、その主人公に抜擢されたのはあまりにも有名な話ですが、童顔のキュートな面差しと新人らしからぬ演じっぷりは、映画ファンはもとより、業界スタッフをも完璧ロックオン、彼女を起用したいという関係者がその後続出したらしいのですが、それもまた頷けるというものです。
 小柄で小作りな風貌は、華のあるタイプというよりも、一見どこにでもいそうな親しみやすささえ感じられるのですが、一転、それが役者というステージに移ると、登場人物がそのまま乗り移っているかのような天才的な演技力を発揮。まさに憑依型・北島マヤそのものというか。そして、その憑依系キム・テリを存分に堪能できるのが、件の「ジョンニョン:スター誕生」となるわけです。
「ジョンニョン:スター誕生」のキム・テリ
ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 物語の舞台となるのは1950年代。朝鮮戦争に揺れる当時の韓国ではありますが、この時代に女性国劇という歌劇団が一世を風靡していたのは、ご存じですか。元は儒教のお国柄だった韓国では、今でこそ変わってきてはいるものの、当時はどの世界もほとんどが男中心の社会。韓国の伝統的な芸能、国楽の世界も当然、男社会でありまして、それに反旗を翻した女性たちが1948年に立ちあげたのが女性国劇なのだそう。朝鮮の伝統的民俗芸能パンソリを中核に、歌・踊り・演劇で構成される創作劇の女性国劇は、朝鮮戦争前後に全盛期を迎えるのですが、もちろん演じ手は全員女性。いわば宝塚歌劇団とか松竹歌劇団とかの韓国版とでもいうのでしょうか、主人公の男役を演じる団員は、それこそ宝塚のトップスターのように韓国中の女性ファンを虜にしていたのです。
「ジョンニョン:スター誕生」のチョン・ウンチェ
劇団の男役トップスター、ムン・オッキョン役のチョン・ウンチェ。ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 ということで、キム・テリが演じるのは、この物語の主人公ジョンニョン。小さな漁村で母(ムン・ソリ)と姉と共に魚や貝を売りながら細々と暮らしている少女なのですが、彼女が市場で歌い出すと、わらわらと人が集まり、たちまち魚も貝も売り切れてしまうほど心に響く歌声の持ち主。なのですが、ジョンニョンの母は、なぜか彼女が人前で歌うことをきつく禁じているのです。
 そんななか、大人気の女性国劇団「メラン国劇団」が、この村にやってきます。またまた母の言いつけを守らず市場で歌っているジョンニョンなのですが、その姿を偶然目にしたのが劇団の男役トップスターであるムン・オッキョン(チョン・ウンチェ)。ジョンニョンの天才的な才能にすこぶる興味を抱いたオッキョンは、彼女を自分の舞台に招待するのですが、ジョンニョンはその舞台に一瞬にして魅了されてしまうのです。
「ジョンニョン:スター誕生」のラ・ミラン
メラン国劇団の団長役のラ・ミラン。ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 でもって、母の強固なる反対を押し切って、家出さながら、メラン国劇団のオーディションに向かっていくという流れに。ということで、ジョンニョンのスター誕生物語が幕を切って落とされる次第なのですが、メラン国劇団の団長(ラ・ミラン)とジョンニョンの母の間には何やら曰くありそうだし、劇団に入団したジョンニョンは早速、同期生の嫌がらせの洗礼を浴びることになるし、自分の歌が一番と思っていたジョンニョンが衝撃を受けちゃうほどの歌うまライバル、ヨンソ(シン・イェウン)が登場してくるし…と、スター誕生ものには欠かせないエピソードが盛りだくさん。なかでも、“この華の世界にやってきた薄汚れた女子は誰?”的なジョンニョンが、歌い出した途端にその天才的な歌声で周囲を仰天させまくっちゃう展開は、まさに「ガラスの仮面」そのもので、ジョンニョンが北島マヤと被るのか、キム・テリが北島マヤと被るのか、ジョンニョンもキム・テリも北島マヤも、もう、誰が誰やら訳わかんなくなってくるくらいの一体感。
「ジョンニョン:スター誕生」のチョン・ウンチェ
ムン・オッキョン役のチョン・ウンチェ。ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.

出演陣は3年間もかけてパンソリや踊りを特訓!エンタメにかける情熱がスゴイ

 劇中で歌うパンソリの歌声も素晴らしく、きっと吹き替えだよね、なあんて思っていると、これが驚くことにまさしくご本人の歌唱。彼女をはじめ出演陣たちは、なんと3年間もかけてパンソリや踊りを特訓したそうで、さすがエンタメには時間もお金も惜しまない韓国ならではの大盤振る舞い。さらに、ドラマ中に演じられる劇中劇も圧巻で、役が憑依するってまさにこういうことね!というのをそれはそれは存分に魅せてくれています。キム・テリはもちろんだけど、ライバル役のシン・イェウンも出色で、それこそ姫川亜弓か!とツッコミ入れちゃいたくなるほどのサラブレッドキャラなのだけど、実はご本人も祖父が演劇人というサラブレット。そのまま黙っていれば可憐なヒロイン役だけで充分やっていけそうなお顔立ちなのに、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』の時のイジメ高校生役といい、今回のヨンソ役といい、「お嬢役だけではございませんのよ。汚れ役も戯け役もなんだってできますのよ」的変幻自在の演技を全身全霊で披露していますので、キム・テリ同様お見逃しなく。
「ジョンニョン:スター誕生」のシン・イェウン
ジョンニョンのライバル役のシン・イェウン。ⓒ 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd.
 とはいえ、全8話という短さなので、お話的には至ってシンプル。私的にはもっとしつこくねっちりとやってほしかった部分も多々あり、特に男役トップスターのオッキョンの描き方が物足りなくてかなり残念。演じているチョン・ウンチェの、男装姿も憂いを含んだ表情もカッコよすぎただけに、もっと彼、もとい彼女の物語もねちこくやってくれよ〜と思わずにはいられませんでした。チョンチョン。
■ディズニープラス スターで全話独占配信中

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「二十五、二十一」

「二十五、二十一」のキム・テリ
ヒロインのナ・ヒド役を演じるキム・テリ。Netflixシリーズ「二十五、二十一」独占配信中
 IMF通貨危機のあおりを受けた1998年からの数年間を現在から振り返るような形で描かれる青春の初恋ラブストーリーです。詳しい内容はこのコラムでも以前にご紹介しているので、そちらもチェックして欲しいのですが、私的大好物ジャンルである青春ものとしては、間違いなくトップ3に入る胸熱作品です。キム・テリが演じているのは、元気の塊のような高校生のヒロイン、ナ・ヒド。国家代表を目指すフェンシングの選手で、幼い頃に父を亡くし、放送局のアンカーを務める母は不在なことも多く、その寂しさを心の奥に秘めているのですが、いつも前向きで情熱的。どんな障害も何のその、猛然たる努力で乗り越えて、ついには国家代表にもなってしまうほどたくましく、かつ明るい少女なのです。
「二十五、二十一」のキム・テリとナム・ジュヒョク
ナム・ジュヒョク(左)とキム・テリ(右)。Netflixシリーズ「二十五、二十一」独占配信中

 そんなヒドが、通過危機の影響で父の会社が倒産、夢を見ることを諦めたナム・ジュヒョク演じる大学生ペク・イジンと出会うことからラブストーリーが展開されるわけですが、とにかく、まぶしいくらいにキラッキラ。かつ、胸が痛くなるほどキューンとなるし、さらには思い出すたびに切なさでいっぱいになってしまう。こんな恋愛は、まさにあの頃にしかできない、青春という名の特権だなあと、2年も前の作品なのに、またまた涙が込み上げてきちゃうわけでして。しかも、主演の2人だけでなく、ヒドのクラスメートである、同じく国家代表のコ・ユリム(ボナ)、成績は劣等生だけど人気者のジウン(チェ・ヒョヌク)、クラス委員長のスンワン(イ・ジュミョン)の物語も胸熱。こちらもめちゃ泣けます。▶詳しくこちらへ

■Netflixシリーズ「二十五、二十一」独占配信中

「悪鬼」

「悪鬼」のキム・テリ
主人公サニョン役のキム・テリ。© STUDIO S. All rights reserved.
 サスペンススリラーが得意の人気脚本家キム・ウニの作品。こちらも詳しくは以前の記事を参考にしていただきたいのですが、悪鬼に取り憑かれた女性と悪鬼を見ることができる民俗学者が、次々と起こる不審死の謎を究明していく物語です。キム・テリが演じるのは、もちろん主人公の悪鬼に取り憑かれた女性サニョン。幼い頃に亡くなったと聞かされていた父の死を突然告げられ、その葬儀に向かったサニョンが、父の遺品である古い髪飾りを手にしたところから、世にも恐ろしいサスペンススリラーが展開します。民俗学者のヘサン(演技派オ・ジョンセ)は、そんなサニョンの中に悪鬼がいるのを見てしまうのです。で、サニョンの周囲で、次々と人が死んでいくのですが、どう見ても自死にしか見えないのに、自死する理由がない…。これはまさしく悪鬼の仕業か? つまり悪鬼に取り憑かれているサニョンが殺したのか? 
「悪鬼」のキム・テリとオ・ジョンセ
オ・ジョンセ(左)とキム・テリ(右)。© STUDIO S. All rights reserved.

 サニョンと民俗学者のヘサンは少ない手がかりを頼みにその真相を探り始めるのですが、その先に見えてくるのは、とある小さな村の民俗学的風習。いやあ、悪鬼も怖いが生きている人間の方がもっと怖い…となってくるのですが、その真相はもちろん観てのお楽しみ。とにかく、悪鬼が表出する際のキム・テリは、さすがというか圧倒されるというか、真面目で極貧な、公務員試験浪人生のサニョンが一瞬にして妖艶に変わるところなんぞ、あれ?もしかしてサニョンが北島マヤ?と、なってしまう次第。悪鬼なんて現実社会にはいるわけないと地道な捜査で事件を追うベテランの刑事(キム・ウォネ)と新人刑事(ホン・ギョン)の存在もなかなかで、単なるおどろおどろしいドラマに終わらせない奥深なサスペンスに仕上がっています。▶詳しくはこちらへ

■ディズニープラス スターで全話独占配信中
山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。今年に入って、インスタ(@harurikuumi)も始動。ドラマシーンのイラスト&勝手な解説を挙げてます。
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