重い、恋しい、離れたい…など。eclatでは、専門家がエクラ世代が抱く母娘関係のお悩みに対して、心のもちようをアドバイス。
case1.プライドの高い過干渉な母が、私をアッシーのように使うのでツライ…。(Nさん・55歳)
今年82歳になる同居の母は、末っ子のお嬢様育ちで気むずかしくプライドが高い。いつも誰かにやってもらってあたりまえと思っている。私の都合なんかおかまいなく、お稽古に病院に買い物にと私をアッシーのように使い、私が外出するときは「いつ帰る?」「私の夕飯は?」など質問攻め。あぁそろそろ限界、私の人生このままじゃ寂しい。いいかげんに子離れしてほしい!
専門家からのアドバイス
「できること、できないことの線引きをし母親の精神的な自立を促していって」
「娘は自分とは別人格であり、違う人生があるということに考えが至らないのでしょう。もしかしたら、母親自身の人生を肯定しきれておらず、その埋め合わせで理想の自分を娘に投影し、娘を手足のように使っているのかも。こんな素直でかわいい娘がいて私は幸せだと、自分で自分を認めたい、まわりにも認めてほしいのかもしれませんね」(香山さん)
このままだとNさんの自尊心や自己肯定感が奪われかねない。母親に自立してもらうことが、母娘のいい関係を築く第一歩になるという。けれど、これまでずっと頼り頼られの関係で、80歳を過ぎていきなり別居しようというのも……。
「自立を促すというのは、精神的に自立してもらうことを目ざします。その手段は、母親からの要求を断る勇気をもつこと。今のあなたは、イヤだと思いつつも"今回はしかたないわ"が積もり積もって限界にきている状態。自分ができることはやってあげるけれど、できないときはできないと、自分の中に基準をもつことが大切です」(信田さん)
case2.結婚して実家を離れようやく落ち着いた関係に。でもいざ介護が始まったら…。(Wさん・47歳)
裕福な専業主婦だった母。明るく好奇心旺盛で友人も多く、自由奔放に人生を楽しんでいた。けれど子供時代の私に対しては支配的で母の理想を押しつけてきて……。小学校高学年のときに「もういいなりにはならない!」と固く決意したのを覚えている。今は何かいわれても適当に受け流せるようになりいい関係だが、介護などでまた密接にかかわるのが不安。
専門家からのアドバイス
「今のほどよい距離感を保つために介護サービスなどを調べておきましょう」
電車で1時間の土地に別居し、孫には過干渉になることなくかわいがってくれる母。今の関係を保てれば自分も優しくいられる、介護もしたいと、Wさんはいう。
「母親からの介入を受け流せるようになったのなら大丈夫。ただ、再び密接にかかわるようになると、コントロールされることに慣れている娘は母親のペースに巻き込まれがちなので注意して。介護にどっぷりつからず適度な距離感が保てるように、今から地域の介護サービスを調べておきましょう」(信田さん)
ただ、いざ介護となると、老いた母のこれまでとは違う面を見て混乱する人も。
「介護が必要になるということは、自由奔放で強かった母親が弱くなるということ。こんなとき、理想を押しつけられてきた娘は、"これまでさんざん勝手してきたのに、なんで忘れるわけ?"と腹が立つ。こんな気持ちを抱えていては自分がソン。老いのプロセスだと割り切って、目の前にいる今の母親と新たな関係を結ぶように心がけて」(香山さん)
苦労して私たちを育ててくれた、尊敬する母。もう亡くなったけれどいまだに母を超えられない。(Mさん・46歳)
大家族の本家に嫁ぎ、独裁的な父のために苦労を重ね、横暴から私たち兄弟姉妹を守ってくれた母。愚痴ひとつこぼさず、常に笑顔で周囲の人に優しかった。母を尊敬しているし、理想の女性。母のようになりたいと思っている。母が病に倒れたときは休職して実家に戻り、ずっと看病した。母が亡くなった今も恋しいし、何かにつけ母ならどう思うかと考えてしまう。
専門家からのアドバイス
「母親を慕うのはとてもいいこと。これからは自分の人生の充実が大切です」
「不幸の中で自分を守ってくれた母親が若くして亡くなり、もしかしたら思い出を無意識に美化しているのかもしれません。けれど、親のことをここまで慕うことができるのはとてもいいことです。思わず美化してしまうくらいいい関係が築けていたんだと、まずは自分を肯定してあげて」(香山さん)
そのうえで、これからの自分の人生を見つめ、充実させることが大切だという。
「母親が望んでいることは、愛する娘が思い出にひたってばかりいるのではなく、前を向いて楽しく生きていくことでは? 仕事でも家庭でも趣味でもなんでもいいので、今ある幸せに目を向けていきましょう」(信田さん)
「取りかかりとして、日常の中で人からほめられたことを心にとめてみて。手料理をおいしいといってくれたとか、レポートがわかりやすくて助かるといわれたとか、ほんのささいなことでいいのです。ただし、誰かにすがりたいという気持ちが芽生えたら要注意。切り離して考えましょう」(香山さん)
お嬢様育ちで人に頼って生きる母。今でもしょっちゅう電話してきて相談やグチ。ストレスでどうかなりそう。(Sさん・53歳)
若くして10歳以上年上の裕福な父と結婚し、私たち姉妹を出産。でも実際に子育てをしたのは祖母と父で、母はまるで私たちと三姉妹のような生活でした。しかも物心ついたときから母は守るべき存在で、私が長女で母が末っ子のような関係。それは今も変わらず、父が亡くなって以来ささいなことで電話してきては愚痴や相談。朝晩かまわずの電話が、ストレスです。
専門家からのアドバイス
「"わかって"は通用しない。いつなら電話できるのか具体的に伝えることがコツ。」
確かに電話に支配される生活はたまらない。かといって、自分ひとりでうんざりしているだけでは、問題は解決しない。「"親なんだからわかって""私だって忙しいんだからわかって"は通用しません」(香山さん)。「電話そのものを止めることはできません」(信田さん)と、専門家も手厳しい。けれど娘の出方ひとつで、状況が改善する余地はある。
「0か100かではなく、ほどほどの距離感を自分でつくっていくことが大切。"もう電話してこないで"ではなく、"今はダメだけど〇時に電話するね""今週は忙しいけど来週なら大丈夫"のように、具体的に伝えることが大切」(香山さん)
「断ることは勇気がいるかもしれませんが、自分でできることは自分でしてもらうように促さないと。母親からはなんて冷たい娘だとののしられるかもしれないし、陰であなたの悪口をいうかもしれない。けれど、子育てと同じで、自立を助けることこそ母親を尊重することなのです。あなたの態度しだいで関係は変われます」(信田さん)
【お話をうかがったのは…】
精神科医 香山リカさん
立教大学現代心理学部映像身体学科教授。『さよなら、母娘ストレス』(新潮文庫)など著書多数。
臨床心理士 信田さよ子さん
原宿カウンセリングセンター所長。著書に『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』(春秋社)など。