かつて大阪の街中でお店を営んでいたが、畑仕事をやりながら料理ができる、自然のある暮らしを求めて、7年前に岡山市の郊外に移り住んだ松村和彦さんと奥さまのかおりさん。岡山市街から車でおよそ40分。ぶどう畑に囲まれた古い民家を3年かけて自分たちで改装し、レストランをオープン。3日前までの完全予約制で、3組のゲストを相手に腕をふるっている。訪れる客の半分は大阪時代からの常連や評判を聞きつけた県外からの食通たち。冬場のお目当ては、この土地のジビエだ。
「料理は大阪時代からずっと北イタリア料理。ジビエも出していましたが、自分で仕留めたものを使うようになってからは、処理の仕方や食べごろをより考えるようになりました。ほぼ自給自足なのでプレッシャーはありますが、できるかぎり近隣でとれる山と川の幸、自家製の素材を取り合わせ、作っています」。冬は自身が山に入って射止めたジビエがごく普通に食卓に並び、合わせる食材も同じ土地で育ったもの。野菜は自然農法で育て、松村さんが理想としてきた自然や風土を盛り込んだひと皿に仕立てている。
鹿や猪の生ハムやサラミ、チーズも自分で仕込み、都会にない景色と料理で胃と心を和ませてくれる。