「瀬戸内海は静かで穏やかな海のイメージですが、潮流が速くてエサが豊富なので魚は身が締まって深い味わい。穏やかな県民性や気候とリンクする、優しいうま味があります」とはご主人の山本淳さん。岡山屈指の寿司の名店『魚正』の次男として生まれ、実家で修業ののち、’05年に店をオープン。岡山近海で揚がった魚をメインに20種類ほどのネタをそろえ、「岡山でしか味わえない寿司、価値のある寿司」にこだわっている。特に鰆と鯛には絶対の自信があり、大きさもだが厚みのあるものを選び、氷の冷蔵庫で食べごろになるまでねかしてうま味をしっかり引き出している。身が軟らかい鰆は分厚く切り、そのまま出したり、炙(あぶ)ってたたき風にしたり。鯛は小鯛もそろえ、軟らかな身と上品なうま味を昆布締めにして引き出している。
さらにひと仕事したネタもここならでは。時間をかけてゆっくり仕込んだ煮ダコ、炭火で焼いて一尾丸ごとにぎる穴子が続々登場。シャリは角のとれた酢かげんで、ネタに合わせてかぼすやすだち、レモンの酸味を加えるなど、ていねいな仕事が随所に光る。