日本のチーズのパイオニアとして知られる『吉田牧場』は料理人をはじめ、チーズ好きの間で絶大な人気のフェルミエ。市街地から車で30分かかる立地ながら、県外からチーズを買い求めにやってくる人もいるほどだ。
岡山県生まれの吉田全作さんが牧場を始めたのは1984年のこと。廃業した牧場の跡地を見つけ、自力で家を建て、水を引き、創業。その後、ヨーロッパまで何度も足を運び、放牧酪農とチーズづくりを続け、この土地らしいチーズにたどりつく。「ここは山間部ながら雪が少ないので牛を通年放し飼いにできます。いろいろやってみたけど、この10年間で実感できたのは牛をいかにきちんと育てるかということ」
家族経営ゆえ生産量は限定されているが、長男の原野(げんや)さん夫妻が加わってからは少しずつ種類を増やし、今年は長女夫妻も移り住むとのこと。時間がとれるようになる全作さんは少し離れた地に小屋を建設し、パン作りを始め、周囲をぶどう畑にするのだという。滋賀県草津市にある精肉店『サカエヤ』にブラウンスイス牛を卸すようにもなり、挑戦と進化はとどまるところがない。