50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選

今さら恋愛小説!? と決めつけるのはまだ早い。実は50代だからと男女関係に目を背けているだけかも。eclat3月号では、井上荒野さんと角田光代さんの作品からと、「迷」「溺」「決」「個」をキーワードに書評家・藤原香織さんと編集部が選んだ“男と女“の物語をご紹介。

『決』

時の流れに逆らわず生きていけば楽だとわかっていても、動き出さなくちゃいけないときもある!
50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選_4_1
【人生の分岐点に立ったとき、踏み出す決意を促す物語】
 年齢を重ねるとともに、処世術として身につけてきた、自分をごまかす方法。確かに瑣末な物事なら、見ないふり、聞かないふり、気づかないふりをしていれば、なんとなく時間が解決してくれることも少なくはないけれど、生きていくうちには、どうしても自分をだましきれなくなることも。
 実の母より慕っていた義母の干渉に、しだいに耐えられなくなっていく『嫁をやめる日』の夏葉子。離婚、という決定的なできごとを先のばしにしつづけている『みちづれはいても、ひとり』の弓子。『こんな大人になるなんて』の一編「だれかの奥さん」の千鶴は、子供のころから夢見ていた「お嫁さん」の現実を持て余し、『永い言い訳』の幸夫は、妻を喪うしなったことで、自分を見失いかけてしまう。
 その場所から一歩踏み出した彼女たちの勇気を味方に、明日へ進もう!
『こんな大人になるなんて』
吉川トリコ 
徳間文庫 ¥630
子供のころ、ぼんやり夢見ていた将来は、こんなはずじゃなかったのに! ぼやきながらもしたたかに生きる大人女子の日々を収めた短編集。手の中にある大事なものに気づくはず。

『永い言い訳』
西川美和 
文藝春秋 ¥1,600
ぞんざいな関係が続いていた妻をバス事故で喪った人気作家の幸夫。同じ境遇にある家族との交流を通じ、過ぎ去りし日々に想いをめぐらせ、再生していく姿に心が強くなること確約。

『嫁をやめる日』
垣谷美雨 
中央公論新社 ¥1,600
44歳のある日、突然夫を亡くした夏葉子。仕事も家もある、友だちもいる。じわじわと解放感を抱く中「嫁」としての立場は残り続け――。「もしも」の予習としても既婚者は必読!

『みちづれはいても、ひとり』
寺地はるな 
光文社 ¥1,500
アパートの隣人・楓を誘い、別居中の夫を追って離島へ旅立った弓子。〈お金も残された人生の時間もあんまりない〉ふたりのからまる事情&友情が、うらやましくもなる不思議。うまい!

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