50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選

今さら恋愛小説!? と決めつけるのはまだ早い。実は50代だからと男女関係に目を背けているだけかも。eclat3月号では、井上荒野さんと角田光代さんの作品からと、「迷」「溺」「決」「個」をキーワードに書評家・藤原香織さんと編集部が選んだ“男と女“の物語をご紹介。

『個』

幸せは、誰かと比べるものじゃない。不幸かどうかも、決めるのは自分。千差万別、十人十色の愛の形
50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選_5_1
【理解されたいわけじゃない。私の幸せは私が決める!】
 恋愛・結婚についてまわる「普通の幸せ」という言葉は、実はかなりの厄介もの。恋人や夫の性格、収入、職業、学歴などなど、他人と比べてもしかたがないと頭ではわかっていても、隣の芝生が青く見えることはある。
 そんなときは、幸せの尺度を見直してみるのも一考。男と女の愛の形には、他人から見ればいびつで受け入れがたくても、自分にとってはそれが最上の幸せ、ということも。例えば7つ年下のバンドマンを、恋愛感情を隠したまま、金銭的にも精神的にもひたすら支え続ける『伶也と』の直子は、物語の冒頭で、はたから見ればみじめで不幸な遺体となって発見される。それでも、読み終えたあとには誰もが彼女は幸せだった、と痛感するはず。
「私の幸せ」は、この手の中にあるのだと、揺るがぬ強さを身につけるきっかけをつかんでください。
『それを愛とは呼ばず』
桜木紫乃 
幻冬舎 ¥1,400
それぞれの事情で、職を追われ、寄る辺をなくした54歳の亮介と29歳の紗希。やがてたどりついた場所でふたりが見た、そして経験する壮絶な愛に震撼。深いため息が漏れる。

『伶也と』
椰月美智子 
文藝春秋 ¥1,300
ライブハウスで衝撃的に出会ったバンドのボーカル・伶也を、40年もの長きにわたり献身的に陰から支え続けた直子。これは究極の愛なのか、報われぬ恋なのか。しびれるような傷みが胸に。

『エストロゲン』
甘糟りり子 
小学館文庫 ¥690
不妊治療をあきらめた千乃、バツイチ子持ちの泉、専業主婦の真子。かつて同じ大学に通っていた、今は立場の異なる47歳の女たち。まだまだ女でいたいという叫びが突き刺さる!

『婚外恋愛に似たもの』
宮木あや子 
光文社文庫 ¥540
デビュー前の男性アイドルグループ「スノーホワイツ」の熱狂的なファンである5人の人妻。暴走的妄想に彩られた日常のリアリティに拍手喝采。これほどの愛は、そうそう注げない!

『黒い結婚 白い結婚』
中島京子、窪 美澄ほか
講談社 ¥1,500
人生の墓場とも、幸福の絶頂ともたとえられる結婚について、7人の作家がダークサイド、ホワイトサイドの両面から筆を競う。忘れかけていた結婚のよい面も思い出せるはず!

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