50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選

今さら恋愛小説!? と決めつけるのはまだ早い。実は50代だからと男女関係に目を背けているだけかも。eclat3月号では、井上荒野さんと角田光代さんの作品からと、「迷」「溺」「決」「個」をキーワードに書評家・藤原香織さんと編集部が選んだ“男と女“の物語をご紹介。

『溺』

誰かを傷つけるとわかっていても、始まってしまう恋もある。理性では抑えきれない本能の恋
50代の男と女の関係を描いた 大人の恋愛小説五選_3_1
【甘いだけじゃない、苦味もまた大人の恋の醍醐味】
恋とはするものではなく、落ちるもの。そんなフレーズを知ってはいても、年齢を重ねていくうちに、どこか臆病にも、億劫(おっくう)にもなってしまうのが恋愛。守りたい生活もある、傷つけたくない人だっている。エクラ世代ともなれば、「理性」という2文字を、どうしたって意識してしまうし、正直「今さら恋愛なんて」という気持ちもあるのでは?
 ここで紹介した4冊の主人公は、すべて40歳オーバー。『眠れぬ真珠』の咲世子も、『情事の終わり』の奈津子も、『望みは何と訊かれたら』の沙織も、仕事や家庭をもち、決して恋愛至上主義というわけではなく、『純愛小説』に収められている「鞍馬」の静子は、65歳まで恋と無縁に生きてきた女性。それでも、彼女たちは恋に「落ちた」。
 たとえ人から愚かだと嘲笑されても、後悔などしない恋。その覚悟に、しびれるような憧れを抱かされる。
『純愛小説』
篠田節子 
角川文庫 ¥514
中年と呼ばれる時期を過ぎた男女が、立場も年齢も超えて落ちた恋。狂おしくも愚直な想いに胸を突かれる短編集。この物語に「純愛」とつけること自体が、大人だ!と痛感。

『眠れぬ真珠』
石田衣良 
新潮文庫 ¥590
更年期障害に苦しむ45歳の咲世子は、ある日行きつけのカフェで17歳年下のウェイター・素樹に魅せられる。終わりの予感とともに始まった恋の奇跡を描く、島清恋愛文学賞受賞作。

『情事の終わり』
碧野 圭 
実業之日本社文庫 ¥600
およそ「不倫」などという言葉とは縁遠かった42歳の奈津子が恋に落ちたのは、勤務先の専務の娘を妻にもつ7歳年下の関口だった。不道徳、と呼ばれる一途な恋の結末はいかに!?

『望みは何と訊かれたら』
小池真理子 
新潮文庫 ¥790
夫と娘のある54歳の沙織が、パリの美術館で偶然再会した吾朗は、過去に置いてきたはずの、けれど決して忘れられない男だった。モラルを超えた愛の深淵をのぞかせる長編作。

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