プライベートな装いが、いつもキュートでおしゃれな石田ゆり子さん。服を見るのも買うのも好きという石田さんのファッション愛のほか、10月から放送予定の主演ドラマの見どころも語ってくれた。
ニット¥275,000/ステラ マッカートニー ジャパン(ステラ マッカートニー) ピアス 各¥371,800/レポシ日本橋三越本店(レポシ)
服が自分になじんでいないとそわそわしちゃう(笑)
「服ってすごいなと思います。服に勇気をもらうこともあるし、着ているものによって気分ががらっと変わるから、おもしろいですよね!」
石田ゆり子さんは、ファッションを愛(いと)おしむ人。服が大好きで、服を見るのも買うのも好き。自分に似合うものを探して手に入れ、目ざすのはその服と自分が、ひとつになること。
「もうこの歳になると、こなれ感がないと、恥ずかしくて着られません。服が自分になじんでいないと、そわそわしちゃう(笑)。だから新しく服を買うとまず、家の中で一日ずっと、着ていたりします。しょっちゅう鏡を見て、“まあいいんじゃない?”と思ったり。なじんで様になって初めて、外に着て出るんです」
なるほど、だから石田さんはいつも、着ているものと仲がよさそう。エクラ世代の今は、服選びに悩むことも、なくなった。
「20代のころは、自分に何が似合うのか、全然わからなかった。色ものとか柄ものとかいろいろ挑戦してみて、たくさん失敗して、今があるという感じです。もちろんその時々の流行もあるし、その日の気分もあるけれど、その日に会う相手がどう思うか、どんな場に出かけるのかも、大切ですよね。でも最近は、自分ファーストで着る服を選ぶようになりました。この年齢になるといつでもどこでも、自分が自分らしくいられるのが一番いいのかなって」
自分が自分らしく。でも自分らしさって、なんだろう? わかっているようで、わからない。そんな迷いにヒントをくれるドラマが、この10月から始まる。石田さん主演のWOWOWドラマ『マイ・スイート・ホーム』だ。
50代の3人、春花(石田さん)と秋絵(中嶋朋子さん)、夏希(坂井真紀さん)は20代から還暦間近の今にいたるまで、パートナー同伴で付き合う仲よしグループ。親友の急逝をきっかけに、春花が提案したのが、3組のカップルをシャッフルするという大冒険(!)だった。
「脚本の岡田惠和さんが書く物語って、本当にいつもおもしろい。しかもいつもびっくり仰天の何かが必ずあるんです。よくそんなこと思いつくなと思って(笑)。ですからこれは、すばらしい大人のコメディ、おしゃれで軽いタッチの海外のドラマみたいな」
実力派俳優がずらりそろっているのも、お楽しみポイント。石田さんの夫を演じるのは、仲村トオルさんだ。
「私が芸能界デビューして最初に出た映画が『悲しい色やねん』(’88年)という森田芳光監督の作品で、そのときご一緒したんです。当時私はまだ18歳で、トオルさんが22歳とかで。とにかく私、何もできなかったんです。カメラがあるだけで緊張して、めちゃくちゃダメだったんですよ。そんな姿をトオルさんはよく知っているので、今回撮影の合間に、私を見てクスクス笑うの。君も大人になったね、みたいな顔で(笑)」
50代の俳優たちが演じる熟年カップルが入れ替わり、交錯する。同年代の私たちもついつい、妄想してしまう。もしかしたら、今とは別の人生があったのかもしれない、と。
あのときああしていたら、私は別の場所にいるのかもしれない。違う家族と違う仕事と違う環境で、私はそこで、どんな自分でいるのだろう?
「いえいえそんな、シリアス一辺倒なドラマではないので、いい年した大人たちのドタバタな日々、と思って見てください。それぞれ思うことがあって、誰もが今までの生活を振り返る。今までの自分が愛おしく思えてくる。そんなドラマじゃないかな」
ちなみに石田さん演じる春花は、料理上手でなんでもセンスよくこなすスーパー主婦。なんの悩みもなさそうな彼女が、この大胆なシャッフルを提案するのも、おもしろい。
「幸せなんです、幸せだけど刺激がない。そうなったときに、何かバカなことをしたい、バカなことをやって笑いたい、モヤモヤをぶっ飛ばしたい、というか。ありますよね、そんなとき」
ワードローブを開けると、自分が好きな服がずらり。でも似たような服ばかりで、何を着ても同じような気がして、気分が上がらない。ちょっと冒険して、友だちと服を交換してみようか、みたいな? さてどんな展開が待っているのか、楽しみになってきた。
かわいい服を大人っぽく着るのが、カッコいい!
石田さんは手工芸も大好き。今回ファッションページの撮影ではクラフツマンシップをテーマに、今期注目の刺繡やニットをふんだんに取り入れたアイテムを、まるで私服のようにさらっと着こなしてくれた。
「こういうお洋服、大好きです! 今、人の手の匂いがするこういったものに、みんな飢えていると思うんです、私も含めて。本物が見たい、魂が入ったものが欲しい。AIでなんでもできる世の中だからこそ、逆に本が読みたい、字を書きたい、料理がしたい、という感覚と同じようにね。特に大人の人たちは、そういうものを身につけると、ほっとするんじゃないかな」
ビーズを編み込んだニットや手かがりのストール、細やかな彫金などなど。一点一点に物語が秘められているような、ぬくもりのある服ばかり。
「大人のボヘミアンですよね。アイテムそのものはかわいいけれど、それを大人っぽく着るのがすごくカッコいいと思います。成熟した大人が着てこそ、様になる。こういうのが似合う人、素敵だと思います」
機能性や効率のよさとは真逆の、手間も時間もかかる丹念な手仕事が、これらの服を作っている。
「実は私のワードローブには、あまり着ることはないけれど飾ってある服があるんです。作品として好きなので、それを見ているだけで幸せ。ほれぼれしちゃう」
確かに。すばらしい手工芸は、まさに芸術品。
「ハイブランドのお洋服もときどきは買いますけれど、とても繊細でていねいな手仕事がされているからこその、ハイプライスですよね。ですから私、投資感覚で買っています。その世界をリスペクトしているから、がんばってその技術を続けてくださいね、と、応援の気持ちで。僭越ながら、パトロン気分、なのかもしれません(笑)」
同時に石田さん、職人気質ももち合わせているらしく。
「この秋公開になる映画『汝、星のごとく』で刺繡作家を演じたので、役づくりのためにちょっとだけ刺繡を習いました。ただそれはリュネビル刺繡といって、シャネルやディオールなどフランスの高級メゾンのオートクチュールで用いられるような、ビーズやスパンコールを使う豪華版なので、あまり日常的ではなくて。その撮影が終わってから、急にムラムラとただのイニシャルを刺繡するとか、そういうのがしたくなったので、今はそれを習いはじめました(笑)。シャツの胸もとにあったら、かわいいですよね。好きなんです、刺繡とか編み物とかの手仕事が。同じ作業をずうっとやっていると、気持ちが安定するんです、本当に」
(インタビュー後編に続く)
いしだゆりこ●’69年生まれ、東京都出身。’88年ドラマ『海の群星』で俳優デビュー。以降、ドラマ、映画、舞台、執筆など多岐にわたり活動。映画『汝、星のごとく』10月9日公開。10月3日~12月6日まで京都市京セラ美術館で開催される『禅とジブリ展』では、応援団長を務める。
Information
WOWOW『連続ドラマW マイ・スイート・ホーム』
アラ還世代の夫婦3組が2週間、パートナーをシャッフルすることを思いつく。お試し生活を経て、彼らがたどりつく本当の自分のホームとは? 脚本は岡田惠和、出演は石田ゆり子、仲村トオル、中嶋朋子、三宅健、富田靖子、武田真治、坂井真紀、椎名桔平。10月31日放送・配信スタート。
撮影/浅井佳代子 ヘア&メイク/岡野瑞恵(storm) スタイリスト/岡部美穂 モデル/石田ゆり子 取材・原文/岡本麻祐 ※エクラ2026年11月号掲載