50代から知っておきたい!「親をみてくれる施設」の選び方&探し方

親の“これから”を考える際、気になるのが「高齢者施設」という存在。いざというときに慌てることなく、親子ともに納得のいく選択ができるよう、今から知っておくべき&準備しておきたいことと心構えを、専門家が指南!
教えてくれたのは…
シニアの暮らし研究所 岡本弘子さん

シニアの暮らし研究所 岡本弘子さん

長年、高齢者施設の入居相談を行い、講演会や書籍監修など幅広く活躍。シニア住宅相談員の育成にも力を注ぐ。『人生最後に失敗しない! イラストと図解でよくわかる 高齢者施設の選び方』(宝島社)なども監修。
「LIFULL 介護」編集長 小菅秀樹さん

「LIFULL 介護」編集長 小菅秀樹さん

日本最大級の老人ホーム検索サイト「LIFULL 介護(ライフルかいご)」の編集長。テレビ・ラジオで介護施設の解説、講演など活動は多岐にわたる。YouTubeやSNSでも介護情報を積極的に発信している。

人生100年時代を迎え、高齢者施設が多様化

高齢者施設とひと口にいっても、今やバラエティ豊か。介護施設の情報を発信している小菅秀樹さんいわく、「居室の広さ100㎡超え、ホテルが監修するレストランやスパ&フィットネスを備えた都心の豪華施設もあれば、医療的ケアに力を入れ、終末期医療にも対応するホスピス的な施設もあります」。

高齢者施設の多様化は、「人生100年時代を迎え、入居する年齢や期間、目的が幅広くなったため」と、シニアの住まいに詳しい岡本弘子さんは分析。「いろいろな名称の施設があるので一見複雑ですが、『運営は公共か民間か』『対象は自立した人か介護が必要な人か』によって、大きく4つのタイプに分けられます」(岡本さん)

最近はラグジュアリーな施設や終末期医療に対応する施設も

公共タイプは自治体や社会福祉法人による運営なので、費用が比較的安価。そのため人気が高いうえ、国の介護保険制度に基づいて入居条件や提供するサービス、設備などが定められているので、入居のハードルはやや高め。また、介護が必要な人向けの施設が大半で、自立した人向けは、主に低所得者が対象の「一般型ケアハウス」のみ。

かたや民間タイプは、一定の基準はあるものの、運営者によって、費用や入居条件、設備、提供するサービスが大きく異なり、対象も幅広い。

「民間タイプの主流のひとつは、食事・介護・家事・健康管理のいずれかひとつ以上のサービスを提供し、利用料を支払って入居する有料老人ホーム。もうひとつは、安否確認と生活相談サービスつきで、バリアフリー化された高齢者向け賃貸住宅のサ高住。いずれも、自立した人が前提と要介護者が前提の2種類あります」(小菅さん)

有料老人ホームとサ高住は運営者によって、実態はさまざま。選択肢の幅が広がっている

「有料老人ホームとサ高住は、運営者によって、実態がかなり違います。自立した人前提と称していても、介護事業所を併設し、医療機関と提携するなどして、手厚いケアが受けられる施設が少なくないですし、自立した人向けと要介護者向けの両方の居室を備えた施設もあります。前述の『自立者向けタイプ』と『要介護者向けタイプ』はあくまでも目安とし、どんな人が対象で、どんなサービスがあるか、施設ごとに確認してください」(岡本さん)  

知れば知るほど、高齢者施設は多種多様。それだけに、いつ、どんな施設に親を任せるべきか悩むところ。

「入居時期は、親の健康状態や生活環境といった客観的な状況に、親の心情を重ね合わせて判断を。施設入居や住み替えだけでなく、自宅の改装でのりきれる場合もあります。いずれにしても、介護はいつやってくるかわからないので、早めの情報収集が大切。また、親だけでなく、自分たちの老後についても、今からイメージし、準備することをおすすめします」(岡本さん)

「親と、施設入居や介護、お墓など、あえて“縁起でもない話”をしましょう。そうすることで、親子ともにベストな道が見つかると思います」(小菅さん)

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高齢者施設の費用はいくらくらいかかる?

公共タイプの特養、老健、介護医療院は、入居時無料で月額利用料は約5万~17万円。ケアハウスも、所得によっては入居時無料で、月額利用料は「一般型」は約6万~15万円、「介護型」が約16万~20万円と比較的手ごろ(いずれも所得によって異なる)。ゆえに人気が高く、特養は待機期間が数年ともいわれるが、「都心はその傾向が強いですが、郊外や地方の特養だと即入居できることもあります」(岡本さん)。

対して民間タイプは、手ごろなものから超高額施設までさまざま。「有料老人ホームは、『住宅型』『介護付き』問わず、施設によって利用料に幅があり、なかには、億単位の高額な一時金が必要なところもあります」(小菅さん)。

サ高住は、入居時に必要なのは敷金だけで、毎月の支払いも家賃のみ。ただし、「自立者向け」も「要介護者向け」も、設備のグレードが高く、受けられるサービスが充実している場合は高額になる。認知症高齢者グループホームは、入居時約0~100万円、月額約12万~40万円が目安。

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【施設の種類】

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参考資料提供/シニアの暮らし研究所

シニア向け分譲マンション

一般的な分譲マンションとの違いは、バリアフリー化などシニア向けに造られていること。入居条件もない。

有料老人ホーム

原則として外部の介護サービスを利用する「住宅型」と、施設が介護サービスを提供する「介護付き」があり、入居対象の範囲は施設によって異なる。

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)

高齢者向けの賃貸住宅。「自立者向け」と「要介護者向け」があるが、後者が約8割を占めている。

認知症高齢者グループホーム

認知症の高齢者のみを対象とし、見守り体制が手厚い。家庭的雰囲気を重視し、少人数で生活を送る。

ケアハウス

家庭環境や経済的理由で家族との同居がむずかしい高齢者や、独居生活に不安がある高齢者が対象。自立者向けの「一般型」と、要介護者向けの「介護型」がある。生活保護受給者でも入居が可能。

老健(介護老人保健施設)

病気や怪我で入院し、退院後すぐに自宅生活がむずかしい高齢者向け。在宅復帰が目標のため、入居期間は最大でも6カ月。

介護医療院

胃ろうや痰の吸引など、常時医療処置が必要な要介護者向けの病院的な施設。長期間の療養生活や終末期医療にも対応。

特養(特別養護老人ホーム)

原則要介護3以上の人が対象で、看取りも行う。専門的医療は外部機関の利用が基本だが、訪問医療が受けられる施設も。

検討を始めてから入居までだいたい何日くらいかかる?

公共タイプだと、特養のように入居まで数カ月~数年かかる施設もあるが、民間タイプの場合、検討開始から入居まで1~2カ月が一般的。「5カ所ほど資料請求をし、2~3カ所見学して決める人が多いですね。検討中に子供たちの間で意見が分かれたり、心が揺れ動くこともあるので、事前にしっかり話し合いを。また、入居費用は親のお金だけでまかなうのが基本。無理せず、予算内に収まるところを選んでください」(小菅さん)。「まずは入居の目的を明確にしましょう。要望は多数出してOKですが、すべての希望がかなう施設はないので、必ず優先順位をつけること。それをベースにすれば、候補を探すときはもちろん、入居先を決める際もスムーズだと思います」(岡本さん)。

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【検討から入居までの流れ】

1.入居理由を明確にし、希望する条件をあげる

「余生を謳歌したい」「適切な介護を受けるため」など、入居目的を明確にし、受けられるサービスや設備、立地や環境、規模など、希望条件をあげ、優先順位をつける。

2.予算と照らし合わせながら、条件を満たす施設を探す

親の保有資産(預貯金や不動産など)と月々の収入から予算を出し、100歳まで生きると仮定して、施設に払える額の算出を。その範囲内で条件を満たす施設をリサーチ。

3.施設を3つほどに絞り込み、見学・体験をする

地域包括支援センターやネット、民間の紹介会社などを活用して候補を探し、3カ所ほどに絞り込んで見学を。体験入居を実施している施設もあるので、利用するのも手。

4.診断書など必要な書類を用意し、申し込む

希望の施設が決まったら、入居の申し込みを。入居申込書のほか、健康診断書や収入証明書、住民票など、施設が指定する書類を提出し、本人面談と入居審査を受ける。

5.入居審査に通ったら契約を交わし、入居

審査に通ったら、契約を締結し、入居日を打ち合わせ。契約は原則対面で、身元引受人の署名・捺印が求められる。前払い方式の施設の場合は、期日までに支払いが必要。

ケース別!失敗しない“施設の選び方”のポイント

認知症、遠距離でひとり暮らし、老々介護の限界など、施設入居の4大ケースごとに、おすすめの施設&探す際の秘訣をご紹介!

CASE1.認知症の症状が見られる

体が元気な人は認知症高齢者グループホーム、医療的ケアや介護が必要なら有料老人ホームを

身体状況や病気の有無が施設選びのカギに
認知症の人を受け入れてくれるのは、認知症高齢者グループホームのほか、特養や介護医療院、介護付きの有料老人ホームやサ高住、ケアハウス。

「特養は、要介護3以上が対象ですが、認知症の場合は、要介護2以下でも要件を満たせば、入居が認められるケースもあります」(小菅さん)

「グループホームは、家庭的な環境で認知症の進行をゆるやかにすることを目的としているので、少人数のユニットで生活します。バリアフリー化されていない施設もありますし、医療連携が義務づけられていないので、体は元気な人向けの施設といえるでしょう」(岡本さん)

認知症だけど足腰は元気という親の入居先に、認知症の人を受け入れ可能な有料老人ホームやサ高住を選ぶ際は、施設が24時間見守り体制を敷いているかどうかをチェックして。「やはり一番心配なのは徘徊です。入居者が、勝手に外に出てしまい、トラブルになることもあります。異変にすぐ気づけるよう、居室と同じフロアに介護スタッフが常駐しているのがベスト。少なくとも、出入りを感知するセンサーの設置など、セキュリティがしっかりしている施設を選んでください。なお、認知症は進行するので、認知症専門医と連携していたり、知識豊富なスタッフがいると、より安心です」(岡本さん)

小菅さんは、「規模や施設のカラーも踏まえて検討しましょう」と。「9~18名程度と小規模な認知症高齢者グループホームがよいか、もっと大人数の施設のほうがよいか、親に合わせて選択を。なお、認知症高齢者グループホームは、レクリエーションの有無をはじめ、運営者のカラーが反映されがちなので、事前に必ず見学しましょう」(小菅さん)

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CASE2.まだ介護は必要ないけれど、遠距離でひとり暮らしの親が心配

手ごろな費用&安心な生活を重視するなら、自立者向けサ高住。終(つい)の棲家(すみか)にしたいなら、看取りまで行う有料老人ホームがおすすめ

本人の状況、予算、地域を考慮して選択を
「施設選びの指標となるのは、本人の状況、予算、地域の3要素。介護が必要ない状況なら、入居条件に要介護認定をあげている施設は対象外となり、候補は、自立者向けの有料老人ホームとサ高住、シニア向け分譲マンション、一般型ケアハウスに絞られます」と、岡本さん。

費用は、ケアハウスが最も手ごろだが、待機人数が多いという難点があり、シニア向け分譲マンションは、まとまった資金が必要に。有料老人ホームは、施設によって差があり、なかには入居時数億円に加え、月額利用料数十万円という施設も!

「予算を抑えつつ、安心で快適な生活を望むなら、自立者向けのサ高住がおすすめ。入居時に必要なのは家賃3〜6カ月分程度の敷金のみで、安否確認と生活相談が義務づけられているので、安心して暮らせると思います。介護や医療が必要になったときは、外部の介護事業所や近隣の医療機関を利用します」(岡本さん)

ただし、要介護度が高くなったり、日常的に医療的ケアが必要になった際は、再度住み替えが必要なケースも。「終の棲家にしたいのなら、自立から入居でき、重度の介護まで対応してくれる有料老人ホームを検討しては? 最近は看取りまで行う施設も増えていますから」(岡本さん)

小菅さんも、多種多様なタイプがある有料老人ホームを推薦。

「高齢者施設にネガティブな印象を抱いている親御さんもいると思いますが、有料老人ホームの中には、共用スペースが充実していたり、レクリエーションが盛んなところが多数あるので、親御さんの好みに合ったところが見つかりやすいと思います

地域は、希望地だけでなく、にぎやかか閑静かなど、環境も考慮したい。「元気な親は、住み慣れた場所や出身地などゆかりのある地を希望する傾向が強いですね。とはいえ、頻繁に顔を見にいけたり、ホームからの呼び出しに応じやすいよう、家族が通いやすいエリアを選ぶのが安心かもしれません」(岡本さん)

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CASE3.急に介護が必要になった

ひとまず、有料老人ホームのショートステイを利用するのも一案

退院予定日を早めに把握するのがポイント
「怪我や病気がきっかけで自立した生活ができなくなり、急遽(きゅうきょ)施設への入居を決めるケースは、けっこう多いですね。また、入院していた高齢者が、治療が終わって退院が決まったものの、自宅での生活がむずかしく、急いで施設を探すというケースも珍しくありません」と、小菅さん。

とはいえ、施設探しから入居まで、1~2カ月要するのが一般的。岡本さんいわく、「大急ぎで入居先を見つけたとしても、実際に入るまでに2週間はみたほうがいいと思います」。その理由は、施設に提出する健康診断書や診療情報提供書の用意に、時間がかかってしまうから。

「書類の作成は、かかりつけの医療機関に依頼するのですが、発行までに通常7~10日、入院中など早めに対応してもらえるとしても、4~5日はかかるようです」(岡本さん)

なお、書類の有効期限は発行から3カ月以内としている施設が多いので、入居の可能性が出てきた時点で、医療機関に依頼するのも手。

時間的猶予がないときは、ひとまずショートステイを利用し、その後、正式な契約を結ぶというのも一案。ショートステイが可能なのは有料老人ホームか特養ですが、後者は人気が高く、空きがほぼないので、現実的なのは前者です」(小菅さん)

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CASE.夫婦で一緒にいたいが、老々介護が限界に

サ高住や有料老人ホームの中には夫婦で入居できるところも

施設ごとの特徴を踏まえ、ニーズに合ったものを選択
ひとりが要介護状態で、もうひとりは介護不要。そんな夫婦が同居を希望する際、選択肢になるのは、サ高住か有料老人ホーム。両者ともに、施設によって入居条件や設備、提供するサービスがまちまちで、選択肢が多彩。そのぶん、ニーズに合ったところが見つかりやすい。

自立者向けのサ高住や有料老人ホームでも、入居者が外部の介護事業者と個別に契約することで、介護サービスが利用できます。そもそも、自立者向けサ高住と有料老人ホームは、介護事業所の併設や医療機関との提携で、要介護者向けの施設と遜色ないケアを提供するところが大半なのが現状。なかには、自立者向け施設と要介護者向け施設が隣接し、重度の介護状態になったら後者に移れるところもあります。そうした施設を選べば、終の棲家になりえるのではないでしょうか」(小菅さん)

要介護者向けのサ高住と有料老人ホームには、どちらかが要介護なら夫婦で入居できるという施設があります。もっとも、2人部屋は、数が少ないため、空室がないことも多々。その場合、隣り合ったシングルルームを2室借り、1部屋はリビング、もう1部屋を夫婦の寝室にするのも手。そうした使い方をしている事例も見られます」(岡本さん)

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国だけでなく居住地の独自制度も上手に利用を

施設での生活にかかる費用は、家賃や管理費、水道光熱費、食費といった入居費のほか、消耗品などの雑費など。また、介護や医療サービスを受ける場合、その費用もかかる。「高額介護サービス費」や「高額療養費制度」(介護や医療費の自己負担額が毎月一定額を超えた場合、超過分が戻ってくる公的制度)を利用したとしても、出費はかなりの額に。エリアや施設にもよるが、要介護2の人の入居費以外の出費は、月平均約5万円というデータもある。

「特養や老健、介護医療院の場合、所得や預貯金額によっては住居費と食費が軽減される介護保険負担限度額認定制度が利用可能。グループホームの住居費や食費を補助する独自制度を設けている自治体もあるので、親が住んでいる市町村区に問い合わせてみましょう」(小菅さん)

「年金額が少なく、預貯金が尽きてしまった場合、生活保護を受給できる場合も。それを想定し、あらかじめ生活保護受給者の受け入れ可能な施設を選ぶのも一案」(岡本さん)

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市場はまだ小さいものの売却や賃貸、相続も可能

バリアフリー設計で、コンシェルジュの常駐や安否確認など、高齢者にうれしいサービスが付帯しているところも多い、シニア向け分譲マンション。大浴場やフィットネスジムを併設したり、さまざまなレクリエーションを提供する物件もあり、アクティブシニアに注目されている。「有料老人ホームは利用するための権利を購入するだけなのに対し、シニア向け分譲マンションは、不動産を購入する=資産になります。なので、売却や賃貸、相続も可能。まだ全国に100件ほどですが、今後さらに増えるでしょう」(小菅さん)

「介護や医療機関と連携がある物件もありますが、基本的には自立した人向け。重度の介護状態になったら転居を余儀なくされる場合もあります。また、市場が小さいので、売却価格や賃貸料は本来の価値より低くなりがち。ただし、こうした物件の仲介に力を入れる不動産会社が増えつつあるので、今後は、“シニア向け”という付加価値が価格に反映されるかもしれません」(岡本さん)

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施設利用の前に押さえておきたい!お役立ちQ&A

親が施設に入居するにあたり、気になることや押さえておきたいことをピックアップ。施設探しのエキスパートのアドバイスを参考に、親も子も幸せな入居先を見つけて。

Q.施設入居を拒む親をどう説得すればいい?

A.大切なのは「親の感情を理解する」こと。認知症の場合は“優しい嘘”も必要

「高齢者にとって環境が変わるのは不安なもの。払拭するには、デイサービスなどを利用し、快適な場所だと実感してもらうのが一番。担当医やケアマネージャーなど、親が信頼する人に進言してもらうのも効果的です。なお、認知症の場合は、『ヘルパーさんが来られない間だけ』など、"優しい嘘"をつくのも一案。施設側が適切に対応してくれるので、親もだんだんなじんでいきます」(岡本さん)。「まずは、親の感情に寄り添って。拒否する理由がわかったら、解決のための選択肢をひとつに絞らず、複数提示し、親にとってのメリットも伝えましょう。それで前向きになる場合も」(小菅さん)。

Q.施設見学でチェックすべきことは?

A.最も重要なのは、スタッフの対応。ずっと親を任せられるかを考えて

「経験上、最も重視すべきだと思うのは、スタッフの対応。表情や言葉使いなど、親がここでどんな対応をされるかイメージしながら見学しましょう。また、清掃や管理が行き届いているかは、館内の臭いである程度わかります。見学は、パンフレットなどではわからないことを聞く絶好の機会。どんな状態になったら退去しないといけないのか、オプションを含めた総額費用はいくらかなども確認を」(小菅さん)。「残念ながら100点満点の施設はありません。『居室の日当たりがいい』『スタッフと入居者の距離感が近い』など、優先する要望を明確にし、チェックを。客観的な判断に基づいて施設を選んだほうが、契約後に後悔することが少ないと思います」(岡本さん)。
ちなみに、民間施設の経営状況は入居率がひとつの目安に。「開業3年で8割未満なら懸念点があるかもしれません」(小菅さん)。

施設のここをチェックしよう!

□スタッフの対応はいいか
□館内に気になる臭いはないか
□退去条件はどうなっているか
□自分たちが優先する要望を満たしているか

Q.施設選びの相談に乗ってくれるところは?

A.地域包括支援センターのほかに、マッチングしてくれる民間業者やサイトも併用を

「地域包括支援センターやケアマネージャーは、公共の施設には詳しくても、民間の情報に疎い人もいるので、検索サイトや紹介会社を併用するのがベター。ある程度、候補をあげてから、地域包括支援センターやケアマネージャーに、地域での評判などを聞くのがおすすめ」(岡本さん)。「料金や地域、条件、要望に合わせて提案してくれる民間の紹介会社は、法人だけでも全国に約500あるといわれています。『〇〇市、老人ホーム紹介』などのキーワードで検索できますが、相談員のスキルに差があるので、複数問い合わせをして、信頼がおける相手を選んでください」(小菅さん)。

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Q.子供世代が早めにできることは?

A.家族のコミュニケーション頻度を高め、親の現状を客観的に把握すること

「親にとって介護は避けたい話題。聞く耳をもってもらうには、日ごろからコミュニケーションをとるのが不可欠。年1回の里帰りより、週1回5分電話するほうが、親も心を開きやすいのではないでしょうか。また、介護関連の本を1冊読んでおくと、親の今後について心構えができると思います」(小菅さん)。「入居条件に要介護認定をあげている施設もあるので、親の自立が不安になってきた時点で、すぐに要介護認定を申請するのが得策。なお、入居時期は、親の意向とともに、客観的な状況も判断材料にしましょう。下記の5つの視点で親の現状を採点、3以下が目立つなら考え時です」(岡本さん)。

家族のコミュニケーション頻度を高め、親の現状を客観的に把握すること

自宅形態…住まいはバリアフリーで老後生活に適している?

生活環境…自宅周辺の生活環境は便利?

医療・介護環境…近くに病院や介護事業所が複数整備されている?


家族事情…老後生活を支えてくれる家族はいる?


資金状況…資産と収入は必要額がある?

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