継ぐ?継がない?50代が直面する「お墓の悩み」について専門家が指南
私たちにとって、そろそろ身近なものになってきた「お墓」という存在。継げない、継ぐ人がいない、継がせたくない。みんなはどう考えている? どうするつもり?「まだまだ先のこと」と目をそらしていては危険! 今のうちに、家族とも話し合って、しっかりと心づもりを。
【1】 50代のリアルなお墓事情
少子高齢化が進み、アラフィー世代の幼少期とはがらりと変わってしまったお墓事情。そこで、50代女性に緊急アンケートを実施。そこから見えてきた悩みや疑問、思いを発表します。
実はみんな悩んでいた!? お墓のこと「アラフィーのリアルな事情」
お墓を建てたのは「義理の父母」が全体の33%で、次いで「義理の祖父母またはそれ以前の先祖」24%。「自分の父母」20%で、「夫」と回答したのは1名のみ。形式は、「公営墓地・民間霊園」47%、「寺院内の墓地」36%と、昔ながらのお墓が主流という結果に。
婚家のお墓だけど入るのは当然と考えている人もいれば、実家のお墓とはいえ躊躇している人も。背景には、親との関係や承継者の問題だけでなく、それぞれが抱く死生観が?
【YESの声】
義父母が建てたお墓ですが、夫が入るのなら、私もそこに。亡くなったあとも一緒にいたいので。(48歳・主婦・子供あり)
本当は気が進まないけれど、嫁いだ家の墓に入るべきだと思っています。(53歳・自営業・子供なし)
【NOの声】
早くに亡くなった母が眠るお墓に入りたい。それは、結婚する前に夫にも伝えています。順番どおりなら、私より先に義父母は亡くなっていると思うので、このことはあえて話題にはしていません。(52歳・主婦・子供なし)
主人の家のお墓には絶対入りたくありません。義父は、結婚前に亡くなっているので会ったことがないし、義母とは犬猿の仲。死んだあとくらい、自由になりたい!(54歳・主婦・子供なし)
【その他】
私はひとりっ子で、夫は本家の長男。両家ともにお墓はありますが、お墓を守っていくのは大変なこと。「お墓をもたないという選択もありかな?」と考えることも。(53歳・在宅ワーク・子供あり)
話し相手は夫が1位。婚家よりは実家が優勢なのは、デリケートな話題ゆえ? 相手が子供の場合、自分たちが入るお墓のほか、すでにあるお墓の承継についての話が目立った。
・夫は、実家の敷地内にお墓を建てたいと考えているようですが、私にとっては、あまり縁のない土地。子供も娘ふたりなので、墓守りをさせるのは心苦しい気も……。最近は、家から近い場所での永代供養はどうかと話し合っています。(56歳・主婦・子供あり)
・義父は、菩提寺にあるお墓に入るつもりみたい。お墓を守るにあたり、住職さんとのお付き合いやお布施について申し送りされました。長男の嫁、いろいろ大変です(笑)。(48歳・役所勤務・子供あり)
・祖父母が建てたお墓が郷里にありますが、私がそこに入るとしても、遠すぎて不便。なので実母とは、今の住まいの近くに新たに建てようかと話しています。(50歳・主婦・子供あり)
・私が「どうしたいか」は、はっきりいって二の次。それより、あとに遺のこされる子供たちに、お墓で苦労させたくない。子供たちに一番迷惑のかからない方法を選択したいです。(48歳・自治体非常勤・子供あり)
・「お墓に入りたい」という気持ちはないです。遺骨は樹木の下や海に撒いてもらうなどして、何も遺したくないです。(49 歳・看護師・子供あり)
・お墓はいりません。日ごろから主人にも子供たちにも、「私が死んだら、海に散骨してね」といっています。お墓をつくると、遺された家族の負担になりますし、かといってロッカー式の納骨堂や共同墓などは寂しいので。(50歳・主婦・子供あり)
・今のところ、夫とは、私の実家のお墓と同じ墓地に新たに建てようと話しています。子供がいないので、親類が多い実家近くのほうがなにかと安心な気がして。とはいえ、もっとよい方法が見つかれば、再考するかもしれません。(53歳・会社役員・子供なし)
・私の両親のお墓、母方の祖父母のお墓が遠方にありますが、日ごろは誰も世話をしていません。数年に一度、私が帰省し、お参りや掃除などしますが、私の死後どうなるのか。墓じまいはお金がかかるし、それ以前に、お墓の処分はとてもつらいことなので。(48歳・主婦・子供あり)
・子供もきょうだいもいないので、夫か私が、墓じまいの手続きをしなくてはなりません。それが憂鬱……。身寄りのない人が安心して利用できる制度などあれば知りたいです。(47歳・フラワーデザイナー・子供なし)
・「死」を身近に感じると、まず思い浮かぶのは葬儀。でも実際は、そのあとのお墓や仏壇のほうが、費用がかかるのだと、最近知りました。どこまで準備し、情報や手続きの把握をしておくべきなのか気になっています。(49歳・美容セラピスト・子供あり)
・外国人の義父は、郷里に納骨してほしいと遺言書に記しているみたいです。でも、今は日本在住なので、こちらにお墓を建てるほうが現実的な気が。遺言書には、必ず従わないといけないのかどうか…。(49 歳・会社員・子供あり)
ほかにもこんな声が…
●夫とは宗教が違います。彼は無宗教ですが、私は、自らが40歳のときに、ミッションスクールで教育を受けたことや子供を同じ系列のミッションスクールに入れたことから、教会生活をスタートし、洗礼を受けました。だから、おそらくお墓は別々になると思っています。宗教は自由ですし、人生の終わりをどう迎えるのか、自分自身で考えた末の結論です。(51歳・会社員・子供あり)
●自分が他界したあとのお墓には、なんの執着もありません。(49歳・看護師・子供あり)
●『千の風になって』の歌詞ではありませんが、死後の魂はお墓にいるわけではないと思っています。お墓に行かないと会えないのではなく、いつでもどこでも、そばにいる存在ではないかと……。だから、お墓について、それほどこだわりはありません。(49歳・事務職・子供あり)
【2】お墓の悩み①義父母と一緒のお墓に入りたくない!
この時代に生きるエクラ世代だからこその悩みに専門家が指南。まずは「義父母と一緒のお墓には入りたくない」という悩みにお答えします。
教えてくれたのは…
第一生命経済研究所主席研究員 小谷みどりさん
奈良女子大学大学院修士課程修了後、’93年にライフデザイン研究所(現第一生命経済研究所)入所。生活設計論、死生学、葬送学が専門で、講演やメディアなど幅広く活動。著書に、『お墓どうしたら?事典』(滋慶出版/つちや書店)、『変わるお葬式、消えるお墓(新版)』(岩波書店)などがある。
【お悩み】義父母と一緒のお墓に入りたくありません
A.どのお墓に、誰と入るかは、個人の自由。従うべき“決まり”はありません
「○○家之墓」は戦後に普及した比較的新しい形
アンケートで判明したのは、エクラ世代はまだ「婚家のお墓に入るもの」という意識が強いということ。もっとも、「義父母と一緒のお墓はイヤ」「知らない人ばかりが眠るお墓に入るのは寂しい」「実の親と一緒がいい」といった本音をもらす人もいる。お墓事情に精通する小谷みどりさんは、「そもそもお墓には、『妻と夫は同じお墓に』とか『嫁いだ娘は、実家のお墓に入れない』といった決まり事はありません」と。
「墓地によっては、『使用者から見て6親等以内の血族または3親等以内の姻族までしか納骨不可』といったルールはありますが、最近は、親しい友人や仲間と一緒にお墓に入る人もいますし、老人ホ
ームが入居者用の共同墓地を設けるケースも増えています。戦前から、社員を埋蔵する会社墓もありますしね」
けれど、私たちがなじんできたのは、墓石に「○○家之墓」と刻まれたもの。先祖代々がそのお墓に納骨されるものというイメージがあるけれど。「そこに大きな誤解があります。複数の遺骨を一緒に納骨するには、火葬することが前提になりますが、火葬が全国平均で50%を超えたのは’35年。それまでは土葬が主流だったので、ひとりにつきひとのお墓が必要でした。つまり、『○○家之墓』という“家墓”の歴史は、それほど古くないということ。お墓に納骨され
ているのも、祖父母の代以降というのが一般的だと思います」
なんと!60、70年前までは、婚家の墓に入るどころか、夫とも別というのが普通だったとは! それなら、婚家のお墓に入らなくても、後ろ指さされることもなさそうな気が……。
「親世代が、『長男がお墓を守るべき』とか、『嫁がうちのお墓に入るのは当然』と思い込んでいるのは、お墓に対する誤解があるためかもしれません。まずは、その誤解を解きほぐしたうえで、それぞれの考えや意向を話し合ってみては? 実際にお墓に納骨するのは、遺された家族や親族。何を希望しようと、亡くなってしまったら、自分ではどうにもできません。だからこそ、周囲に、自分の思いを理解してもらうことが大切です」
【3】お墓の悩み②お墓の継承者がいない!
この時代に生きるエクラ世代だからこその悩みに専門家が指南。「子どもは娘だけ。嫁いだら、お墓を継ぐ人がいなくなる」と言った悩みも多くなっています。でも、嫁いだ娘が継ぐこともできるし、親戚が継承することも可能。“お墓を購入する”ということの意味なども含めてお教えします。
【お悩み】子供は娘だけ。嫁いだら、お墓を継ぐ人がいなくなります
A.嫁いだ娘が継ぐこともできますし、親戚が承継することも可能です
年間管理料を支払わないと無縁墓になる危険性が
アンケートでは、「子供がいないので、将来お墓を守る人がいない」「娘だけだから、結婚したら継いでもらえない」と、承継者問題に悩む声も目立った。
「戦前は、家督を継ぐのは長男で、お墓も長男が承継するケースが一般的でした。けれど今は公営墓地や民間霊園では、6親等以内の血族や3親等以内の姻族が一緒に入れるので、嫁いだ娘が継いでもかまいません。いろいろな条件はありますが、友人や知人が承継することも可能です」と、小谷さん。息子がいない=お墓が途絶えるわけではなさそう。
ただし、お墓が、年間管理料が発生する寺院や霊園にあり、その支払いが何年も滞ってしまうと、無縁墓と見なされ、撤去される危険性があるそう。けれど、お墓のパンフレットでは、よく「永代使用」という言葉を目にする。購入したら、永遠に使用できるはずでは?
「『お墓を購入する』といっても、実際は、寺院や霊園などお墓を管理するところから土地を借りる権利を買っているだけ。それを、『永代使用権』といい、その費用が『永代使用料(永代利用料)』。しかも、“永代”は、使用者の代が続くかぎりという意味で、永遠ではありません。使用者が亡くなったときは、名義変更し、年間管理料を納めることで、永代使用権が存
続するという仕組みになっているのです」
もっとも無縁墓と認定されるには、行政上煩雑な手続きが必要なうえに、墓石を撤去する費用はお墓を管理する側の負担に。今は、お墓が余っている時代。無縁墓を整理したところで、新たな使用者の応募があるのは、都心の公営墓地などごく一部。採算が合わないため、そのまま放置されることも多いのだとか。
「少子化で、今後ますます墓守はいなくなるでしょう。すでに地方では、個人所有の土地に建っているものも含め、お墓の3~4割が無縁墓というデータもあるくらい。そもそも長寿になり、親が亡くなった時点で、子供もすでに高齢というケースが珍しくなくなりました。となると、お墓参りできる期間は短くなり、せいぜい20年程度では?『お墓を守る』ことを含め、お墓のあり方や意義を、考え直す時期にきているのだと思います」
「戦前は、家督を継ぐのは長男で、お墓も長男が承継するケースが一般的でした。けれど今は公営墓地や民間霊園では、6親等以内の血族や3親等以内の姻族が一緒に入れるので、嫁いだ娘が継いでもかまいません。いろいろな条件はありますが、友人や知人が承継することも可能です」と、小谷さん。息子がいない=お墓が途絶えるわけではなさそう。
ただし、お墓が、年間管理料が発生する寺院や霊園にあり、その支払いが何年も滞ってしまうと、無縁墓と見なされ、撤去される危険性があるそう。けれど、お墓のパンフレットでは、よく「永代使用」という言葉を目にする。購入したら、永遠に使用できるはずでは?
「『お墓を購入する』といっても、実際は、寺院や霊園などお墓を管理するところから土地を借りる権利を買っているだけ。それを、『永代使用権』といい、その費用が『永代使用料(永代利用料)』。しかも、“永代”は、使用者の代が続くかぎりという意味で、永遠ではありません。使用者が亡くなったときは、名義変更し、年間管理料を納めることで、永代使用権が存
続するという仕組みになっているのです」
もっとも無縁墓と認定されるには、行政上煩雑な手続きが必要なうえに、墓石を撤去する費用はお墓を管理する側の負担に。今は、お墓が余っている時代。無縁墓を整理したところで、新たな使用者の応募があるのは、都心の公営墓地などごく一部。採算が合わないため、そのまま放置されることも多いのだとか。
「少子化で、今後ますます墓守はいなくなるでしょう。すでに地方では、個人所有の土地に建っているものも含め、お墓の3~4割が無縁墓というデータもあるくらい。そもそも長寿になり、親が亡くなった時点で、子供もすでに高齢というケースが珍しくなくなりました。となると、お墓参りできる期間は短くなり、せいぜい20年程度では?『お墓を守る』ことを含め、お墓のあり方や意義を、考え直す時期にきているのだと思います」
【4】お墓の悩み③お墓が遠い…老後の管理は?
「お墓が遠方で困っている」という方は「墓じまい」や「改葬」も一案です。実際にすべきことや、その際に起こりうる問題の解決策も丁寧に解説します。
【お悩み】お墓が遠方で不便なので、老後も管理できるか気がかりです
A.家族や親族の同意を得て、「墓じまい」や「改葬」するのも一案
改葬するなら、場所や施設、形式など慎重に検討を
「このかたのように、お墓が遠方にあって管理ができず、困っているという話はよく耳にします。『自分たちの死後、子供にとってそのお墓の存在が重荷になるのでは』と心配する人も多いですね」と、 小谷さんは指摘。前述のとおり、墓地に納骨されているなら、年間管理料を払い続けるかぎり、お墓は存続する。とはいえ、お参りする人がまったくいないというのもしのびない。それを避けたいなら、 思いきって「墓じまい」するのも一案だ。
「その際すべきは、家族や納骨されている人とつながりのある親族との話し合い。関係者に説明せず、独断で決めてしまうと、あとあとトラブルに発展するかもしれませんから」
墓じまいについて合意が得られたら、次は、今後お墓をどうするかの相談を。
「墓じまいするということは、お墓に納骨されている遺骨を取り出すということ。今後それをどんなかたちで供養するか、将来を見据えて慎重に検討してください。お墓を引っ越す『改葬』にするのか、お墓はもたずに、散骨や手元供養にするのか。改葬にするなら、場所は今の住まいの近くにするのか、それとも縁のある土地にするのか。施設にしても、寺院墓地や民間霊園、公営墓地などさまざまですし、お墓の形式も、従来の墓石を置くタイプに納骨堂、共同墓に自然葬など、選択肢が増えています」
ちなみに共同墓は、骨壺から遺骨を取り出し、血縁関係を超え、さまざまな人が一緒に納骨されるタイプで、「合祀墓」や、「合葬墓」「合同墓」などとも呼ばれている。初めは個人や主婦、家族だけで納骨され、十三回忌までなど一定期間が過ぎたら、合葬されるところもある。いずれにしても、承継を前提としないため、お墓を継ぐ人がいない人や子供への負担を気にかけている人は、一考の価値がありそう。
「家族や親族で墓じまいの同意ができたら、墓地管理者に相談することも忘れずに。遺骨を取り出すのは、行政の認可が必要で、提出書類には墓地管理者の承認が不可欠。特に寺院墓地の場合は、これまで供養してもらったお礼をきちんと伝えると同時に、お布施をお渡しするのがおすすめです」
さらに墓じまいには、既存のお墓の撤去費や遺骨の取り出し費が必要となり、新たにお墓をつくる場合は、それも予算に入れておかなければならない。
「改葬は、骨壺だけを移動させるケースが大半ですが、もし墓石も移動させるなら、かなりの額がかかります。こうした費用は、墓地や地域によって違いがあるので、早めにリサーチしておきましょう」
家族や親族との話し合いのポイント
☑︎改葬や墓じまいの理由を共有
「遠方にあると、維持や管理をするのがむずかしい」「承継者がいない」「住まいの近くで供養したい」など、現在抱えている問題点を明確にし、家族や、そのお墓に関係する親族と共有する。
☑︎次のお墓はどうするか、将来を見据えて考える
改葬や墓じまいすることが決まったら、お墓から取り出した遺骨をどうするかについて相談を。新しくお墓をつくるのか、それとも、お墓をもたないかたちで供養するのかは、承継を前提とするか否かを意識して考えること。承継する人がいなかったり、承継させたくないなら、お墓をもたないか、共同墓を選ぶのが安心
☑︎改葬先の場所を考える
お墓をもつことになったら、具体的にどんなかたちにするのか話し合うこと。場所は、現在の住まいの近くにするのか、故人の思い出の地や好きな地域、家族にとって縁のある土地にするのか。施設は、寺院墓地に民間霊園、公営墓地のいずれがいいのか。前者は、お墓の維持や管理のしやすさなどを考慮し、後者は、予算やお墓の形態などを判断材料にするのがおすすめ。既存の墓石はどうするかも相談を。
☑︎誰の遺骨を引っ越しさせるのか共有する
改装には、お墓に収蔵されたすべての遺骨(骨壺)を移動させる場合だけでなく、一部の遺骨(骨壺)だけを移動させるケースもある。その数量によって、引っ越し先のお墓の規模や費用などが変わってくるため、早めに考えておきたいところ。
【5】お墓の悩み④樹木葬の場合、お参りや遺骨は?
理想のお墓として多くの声が上がった“樹木葬”ですが、「樹木葬希望だけど、知らない人と一緒はちょっと…」、「お参りや遺骨はどうするの?」といった声も少なくありません。樹木葬の現状や、さまざまなタイプをお教えします。
【お悩み】樹木葬希望ですが、知らない人と一緒に納骨されるのには抵抗が
A.樹木葬は樹木を墓石のかわりにしたもの。集合型や個人型など、さまざまなタイプがあります
樹木葬=土に返るというわけではありません
理想のお墓として多くあがったのが、「樹木葬」。とはいえ、比較的新しい形式だからか、「お参りはどうするの?」「自然に返るというイメージがあるけれど、遺骨は残らないということ?」「夫婦で入ることはできる?」など、疑問や不安の声も少なくなかった。
「樹木葬は、墓石のかわりに樹木が植えられるスタイル。シンボルツリーが1本植えられていて、ほかの人の遺骨と一緒に収蔵される共同墓タイプもあれば、木のまわりに個々の納骨スペースが設けられた集合タイプもありますし、個々に仕切られた区画に個人や夫婦で納骨され、それぞれ樹木が1本ずつ植えられるタイプもあります。『誰と一緒にお墓に入るか』を考えて、選ぶとよいのでは?
なお、自然に返るイメージがありますが、遺骨は土中に埋められるものの、土に返るわけではありません。火葬した骨なので、土中に残ります」と小谷さん。
火葬した遺骨を収蔵するということは、墓地として許可を受けた場所でしか行うことができないということ。庭といった自分が所有する土地に、勝手に埋めるのは違法だということも覚えておきたい。さらに心にとめておきたいのが、樹木が枯れる場合もあるということ。
「自生している樹木を利用するのはごく一部で、大半は植樹。なので、今後どうなるかわかりません。実際、すでに木が枯れてきていて頭を悩ませている墓地もあるんですよ。木が枯れた場合、植え替えはしてくれるのか、その費用はどうなるのかなども、確認しておきましょう」
樹木葬と並んで支持を集めたのが、散骨。遺骨を細かく砕き、パウダー状にして海や山などに撒く方法だ。
「お墓をもちたくない人に人気で、特に近年増えています。遺骨がないため、お墓の継承問題からも解放されますしね。ただ、遺族が『供養の際、どこに手を合わせればいいかわからない』と困惑するケースもあるようです。なので、すべて撒いてしまうのではなく、一部手元に遺しておくのもおすすめ。また、海や山といっても勝手に撒くことはできません。自治体によっては散骨禁止区域を設けていますので、リサーチが必要です」
なかには、「散骨希望だけど、遺族が実行してくれるか心配。遺言書に記しておけばいい?」という質問もあった。
「遺言書は、相続財産に関するもの。お墓は相続対象ではないため、遺言書に記しても効力はありません。ただ、遺言書やエンディングノートといった“見えるかたち”で希望を伝えるのはよいと思います。遺族が躊躇しても、『故人の意思だから』と、納得する材料にもなりますから」
お墓のあり方は、ここ十数年で大きく変わった。現状を知り、現代を生きる私たちだからこその賢い選択を!
お墓をもたず、 手元供養というかたちもあり
お墓をもたない場合、骨壺を自宅に安置する「手元供養」も選択肢のひとつ。「骨壺といっても、今はデザイン性が高く、リビングなどに置いても違和感がないものも増えています。花が好きだった人なら花が描かれた磁器に、サッカーが趣味だった人ならボール型など、故人を彷彿させるデザインを選ぶことも可能です。
「妻に先立たれた知人は、生前彼女が大切にしていた梅干しの壺に収めていましたよ。また、遺骨の一部を手元に残し、残りはお墓に納骨するパターンもあります。遺骨を原料に人工宝石をつくり、ペンダントやブレスレットにして身につけている人もいます」(小谷さん)。
生前にお墓を買えば 相続税対策になる?
お墓は祭祀財産なので、相続税の対象外。そのため、生前に購入すれば、その分が節税になるといわれている。「確かにそのとおりです。ただ、裏を返せば、相続税が発生しない家にとっては関係ないということ。遺された家族が相続税の課税対象になるかどうか、調べたうえで判断を」(小谷さん)。
実際、2016年に、課税対象になった相続人の割合は約4.7%(国税庁発表)。「生前にお墓を購入したほうが得」を鵜呑みにするのは危険だ。
「生前に購入すれば、自分が希望するスタイルを選べるメリットはあります。ただし、それが遺族の負担にならないか、話し合っておくことが大切です」。
【6】お墓の継承について考える
お墓の承続
「どのお墓に誰と入るかは、個人の自由です」――第一生命経済研究所主席研究員・小谷みどりさん
家墓の歴史はせいぜい70年ほどです
日本に普及しているのは、「○○家之墓」という家墓。先祖代々の墓を子どもが守り、次の代に引き継ぐという意識は、エクラ世代にも根強い。とはいえ、少子化が進む今、その図式はくずれつつある。現に、「ひとり娘の私が嫁いでしまったので、実家のお墓を継ぐ人がいない」「子どもがいないから、自分の代で途絶えてしまう」といった声が寄せられた。なかには、「墓じまいすることになり、ご先祖さまに申しわけない」という人も! 「継ぐべきなのに、継げない」という思いが、エクラ世代を苦しめているわけだけれど……。
「家墓の形式が広まったのは、ここ70年くらい。それ以前は、個々に埋葬されていました。先祖代々の墓などといいますが、せいぜい3、4代前まででしょう」と、死生学や葬送学の研究を専門とする小谷みどりさんは、指摘する。ということは、70年ほど前は、「先祖のお墓を守る」という考え方自体なかったことに?「読者の親たちは、すでに家墓が定着していた世代なので、『お墓は子孫が継ぎ、絶やしてはいけないもの』と、思い込んでいるかもしれません。その親の考え方が、皆さんにとっても“常識”になっているのでしょうね。でも実は、お墓の承継者に決まりはないんですよ。長男でも次男でも、嫁いだ娘でも、甥や姪であってもかまわないのです。いろいろな条件はありますが、友人や知人が承継することも可能。さらにいえば、『お墓は家族で入るもの』というルールもありません。どのお墓に、誰と入るかは、個人の自由なんですよ」
墓地によっては、「使用者から見て6親等以内の血族または3親等以内の姻族までしか納骨できない」といったルールを設けているが、それはごく一部。最近は、血縁関係を超えて、さまざまな人が一緒に納骨される、「合祀墓(ごうしぼ)」が増えており、友人や仲間とお墓を建て、一緒に入る人も珍しくない。
「お墓のあり方は、時代によって変わります。それを踏まえたうえで、自分たち家族にとってのお墓の意義やあり方を、改めて考えてみてはいかがでしょう」
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