ところが数年が経ったある日。夏を越して久しぶりに袖を通すと、感じていたはずのときめきがない。あれっ?
そういえば、見た目も手触りも、かさっ、ざらっとしてる。滑らかさが失われてツヤがなくなり、しなやかさが失われてハリがなくなり。言ってみれば、疲れて老けた印象。ケアを怠ったことを大いに反省したのです。心を入れ替えて、クリームを丁寧になじませました。いたわるように、優しく優しく。すると……。つるんっと滑らかなツヤ、ぬめっとしたしなやかなハリが蘇って、新しいときよりも断然、いい顔。それは、10年前に手に入れたフライトジャケットも昨年手に入れたライダースジャケットも「古足りない」と感じるほどに。年齢を重ねるほどに育つものがあると、教えてくれました。
肌に置き換えてみてほしいのです。じつはこれこそが、私が思うクリームの絶対効果。化粧水や美容液ももちろん、肌を支えてくれる頼もしい存在に違いありません。さらに最後のステップであるクリームは、見た目や手触りを操る役割を担っているのではないかとも思うのです。柔らかく、艶っぽい上質を作るという、役割を……。
ところが、クリームはなぜか嫌われがち。特に、汗や皮脂に悩まされる夏の間は、潤っているという誤解からか、さっぱりしたいという願望からなのか、敬遠する人も多いのではないでしょうか? でもじつは、屋内外の気温差やエアコンによる乾燥、洗顔や拭き取りのしすぎなど、肌は思った以上に無防備。本当は、肌は油分を欲しがっているのに、その声が聞こえない。結果的にツヤがなくなる、ハリがなくなる、ダメージを跳ね返せなくなる。そしてある日、「しわっぽ顔」にどきっとさせられる。そう私が、レザージャケットに「あれっ?」と思ったように。
さらにもうひとつ。経験を積み重ねた大人だからこそ、クリームが肌の上で溶ける「官能」に夢中になってほしいとも思うのです。ああ、気持ちいい、ああ、幸せ。肌と脳が対話をするあの時間がきっと、女性としての艶やかさやしなやかさを育てるのだから。
レザージャケットのように。レザーバッグやレザーソファのように。今日より明日、明日より未来と肌を好きになれたら、この上なく素敵。そのために今すぐクリームを。その先には、きっと味わいのある顔が待っています。