<松屋の創業150周年記念イベント>島田順子さんと作家・エッセイストの阿川佐和子さんとのトークショー続き

島田氏:あまり目的がなかったんですけど。映画ばっかり観に行って遊んでばっかりいたんです。で、母に勧められてドレメ(杉野学園ドレスメーカー女学院)という学校に行きました。手に職を持って自分で生きられる人になるようにって。でも好きじゃなかった。

阿川氏:好きじゃなかったの?

島田氏:はい。フランスにはデザイナーになろうとして行ったんじゃなくて。なろうとして行ったらなっていないと思うんですよね。ああいうところは欲を出したり、変な知恵を出したり、いつか何かになりたいなんて思ったら、どんどん落とされます。ていうのは、すごくジェラシーの強いところなんで。やっぱり謙虚に、ここで学ばせてもらってるんだ、ここで、こんないい国で過ごせるんだって思って。セーヌ河がきれい、ここに来られてよかった
と思いながら暮らしているうちにデザイナーになっていました。

阿川氏:でも以前、対談したときに伺いましたが、日本にすでに婚約者みたいな方がいらしたのに、それを放って、私はパリに行きたいんだもんって。シャイだとおっしゃるわりに果敢な方だなあと……。

島田氏:怖いもの知らずっていうか、これをやりたいと思ったら行っちゃうんですよね。危ないとかお金がたくさんないといけないとか、そんな計画性がまったくないんです。

阿川氏:ない?! すごく素敵! とにかく行かなきゃっていう感じ?まず動いちゃうんですね。

島田氏:そうですよ。動いてから考える。(笑)

阿川氏:パリに住まわれてからもう50年以上?で、休むことなく年2回のパリコレクションをされて。

島田氏:77回、聞いて下さる? 年とほとんど同じ。

阿川氏:ブラボー! こういうときに言うんですよ、ブラボーは。
<松屋の創業150周年記念イベント>島田順子さんと作家・エッセイストの阿川佐和子さんとのトークショー続き_1_2

島田氏:これはお恥ずかしいんですが、謙遜でも何でもないんですけど、いつか自分が練りに練った素敵なコレクションをやってみんなに認められるような人になりたいっていう思いがあるから続けているんだと思います。

阿川氏:いまだに。じゃ、満たされていないっていうことですか?

島田氏:いや、一生懸命つくることは出来るし、経験もあるから工夫も出来るんですけれど、でもね、やっぱり何て言うのかな、もう一つ、もう一つっていうのがあって。

阿川氏:もう一つ何かうまくできたのではっていう。でもコレクションが近づくのに何も思いつかないとかそういうこともありますか?

島田氏:もうもう悲しくて、アイデアがなくて、どうしよう、どうしよう。才能がないからやめたほうがいいとか、ストレスでもうぐちゃぐちゃ。今回も最後になってバーッと出て来たんですよね。浮かぶときは一瞬なんです。だから毎日の生活の中で、いつも机の脇のライトをつけていて、紙と鉛筆置いておいて、そこに出てきたら描けるようにね。

阿川氏:悶絶なさる…。以前の「週刊文春」の対談のときに、「私は背が低いので長いスカートよりも膝丈くらいの方がいいのかと思うんですがこの歳で膝を出すっていうのはもうやめた方がいいんでしょうか?」って島田さんに伺ったら、「いいんじゃないの?」っておっしゃって「だって自分に見えないでしょ、自分の膝は」って。
私それを聞いて「カッコいい!そうか、もっと堂々としてりゃいいんだ。他人がどう思おうと関係ないわって背筋を伸ばすことが大事なんだ」と思ったのを憶えています。

島田氏:シミも同じね。鏡見て歩いてるわけじゃないんだから、シミ見えないからいいじゃないかってこれもいい加減よね。

阿川氏:今日だって、私なんかすみません、メイクさんにちゃんとお化粧していただいているんですが。島田さんはご自分でしょ?

島田氏:でも今日はファンデーション塗ってきたんです(笑)

阿川氏:島田さんを拝見すると、なんかあのクリームがいいとかなんとかいうことはどうでも
いいと。もっとこう自分に自信を持っている方がいいんだなと思えます。

島田氏:いい加減なのよ。恥ずかしい話。

阿川氏:島田さんはじつはお料理もすごくお上手で、料理本出したほうがいいんじゃないかと思うくらい。そんな島田さんのライフスタイルをまとめた本がこの度発売されました。
『パリー東京 今日、今を生きる美しい人島田順子』という本です。今日集まっていらっしゃる方々は、島田さんのようにデザイナーになれるとは思っていなくても、生き方をまねしたいとか、何かヒントにしたいっていう方がいっぱいいらっしゃると思うんですけれども、ご自身が今までたどって来た道のりのなかで若い時にはこういうことに挑戦したらどう?とか、こういうことを考えちゃダメよ、っていうアドバイスはおありですか?

島田氏:アドバイスするような生き方してませんけれど・・・でも言えるとしたら、好奇心は絶対持っていたほうがいい。
阿川氏:好奇心?

島田氏:それから、歳だからっていうことで足踏みするのではなくてまずはやってみたらいいと思う。いろんなことが発見できるし、面白いもの。お料理なんか私ほんとうに全然できなかったのに、友だちがやるのを覗いていて真似して、美味しくできるとみんながすごく喜んでくれたりすると嬉しかったから。それで始まったようなもので。

阿川氏:島田さんに教えていただいたおしゃれなお料理があるんです。

島田氏:またまたそうやっておだてて。

阿川氏:ときどき作るんですよ、島田さんのお宅でいただいたレンズ豆のお料理があまりに美味しくて。で、好奇心の話の続きですが、若い人へのアドバイスの続きをお願いします。

島田氏:やっぱり仕事でもなんでもあまり浮気しないでとことん突っ込んでいったらいいと
思うんですよね。好奇心とは別に、何かを続けていく、続けて試してみるっていうことはいいことだと思います。「学ばせてもらっているんだ、私は」という謙虚な気持ちがあると人はすごく心を開いて教えてくれるから。私の経験から言うと、仕事で早くプロになりたいと思ったんですが、早くなることよりもまず、力をつけて、人に見てもらって、教えてもらって成長しようと考えました。じゃなかったら、デザイナーになれなかったと思います。

阿川氏:私もお嫁に行きたい、だけが人生の目的だったのに何でこんなことになっちゃったんだろう、と思います。父がもの書きだったから文章を書いている人の世界に近づくことだけは避けていたんです。なのにいつの間にか書いていて、自分でイヤなところにどんどんはまり込んでいくんだけれどそこに入ると、人に評価してもらったり、教えてもらったりするから、怒られたくなくて続けていたら、なんかこんなことになったっていう。やっぱり今、情報がすごくいっぱいあるから、雑音に左右されちゃうけど…。

島田氏:多いわよね

阿川氏:この道に進みたいって若い頃に決めたステップが思い通りにいかなくても、それはそれでいいんですよね。こんな寄り道してるつもりじゃなかったのに、という場所でどんな素晴らしい人に出会うかわからないですもん。

島田氏:誰もが素晴らしい人に出会うわけではないかもしれないけれど、自分でこの人好きとかこの人に興味があるっていうと結局は素晴らしい結びつきになったりすると思います。
感性の相性じゃないけれど、どこかでいい接点があるとこちらもその人から言われることを尊敬するようになったり、それが学びになって新しいことを教えてもらえたりね。
阿川氏:この本の中にも出てくるんですが、島田さんはご自分をアメーバにたとえていらして。

島田氏:たったひとつの細胞しかないアメーバがただただ光に向かって一心に進んでいくと、あるとき聞いたんです。うわっ、すごく自分と似てると思ったわけ。

阿川氏:アメーバなんですか?

島田氏:大きいけどアメーバなのよ。人間てやっぱり計算していないようで、これが流行りだからとかこっちが利口だとか思うでしょ。

阿川氏:アメーバは違う。こっちの光だって決めたら、ひたすらそっちに歩いて行くわけですか? 途中に失敗とか挫折は?

島田氏:いや、失敗も学びだし、挫折も学びで、でも頑張って歩いてみるとなんか好きなことが生まれたり、いい出会いがあったり。あなたはこの道を行ったらすごくよくなるよとか調子のいいことを言われても、私はアメーバみたいにバカみたいに一方向に行きたいのね。

阿川氏:情報に翻弄されて、時間にも追い立てられて、数値とマニュアルに頼ってばかりいるのが今の時代なので、やっぱり勘とかひらめきとか、そういう力を排除していますよね。だからなおさら、島田さんみたいな生き方を真似してみたいなっていう風になるんじゃないか、ということが今日よくわかりました。

いつもの暮らしを、今を、そしてこれからを長時間のインタビューを通して語り尽くした一冊ぜひ参考に!

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