本&旅好きの加藤シゲアキさんにインタビュー。「旅を読むこと」とは?

アイドルとして俳優として活躍するNEWS・加藤シゲアキさんのもうひとつの顔は作家。そんな彼には本好き、旅好きの一面も。加藤さんが旅の友にした大好きな作家の本から、日常にいながら旅心を感じられる本まで、イチ押しの一冊をたっぷりと語っていただきました。

タレント・小説家 加藤シゲアキ

’87年生まれ。青山学院大卒。’03年、NEWSのメンバーとしてデビュー。個人ではドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』(NTV)、「金田一耕助」シリーズ(CX)などに出演。作家としては『ピンクとグレー』など5冊の小説を発表。

読むこと―。それは、いつもの風景を変えること。

日々多忙な加藤さんにとって読書は「人として、作家として、そして大好きな旅で何かを感じるために」とても大事。すき間時間も活用しているが、就寝前はじっくり本と向き合える貴重なひと時だ。「好きな体勢で読みたいからヘッドライトが必需品」と笑うが、そんなひと時を使って選んでくれたのが、編集部がリクエストした“旅を感じる本”5冊。そのラインナップは……。

「寝る前はヘッドライトをつけて読書。かっこ悪い? でも、便利です(笑)」

ハルキストは名乗れないけど(笑)、彼の翻訳ものが好き
『恋しくて』は、ニューヨークへ発つ前、空港の書店で買ったアンソロジー。「“まだ読んでいない村上春樹さん訳の本がある!”とうれしくなって。もともと村上さんの翻訳ものがすごく好きなんです。ただタイトルだけ見ていたら、手にとらなかったかもしれない。恋愛ものは僕のゾーンじゃないから、ふだんあまり選ばないんです。でもこのときは“グラミー賞授賞式を見にいく”という高揚感が苦手意識を埋めてくれるような気がして。実際に読んでみたら、甘酸っぱいけれどそれだけじゃない話ばかりで、すごくよかった。もしかしたら心のどこかに、新しいジャンルを知りたい気持ちがあったのかもしれません」

『Carver’s Dozen』も旅に持参した村上春樹訳の短編集だが、作者レイモンド・カーヴァーが醸し出す雰囲気に心をつかまれたという。

「なんともいえずせつなくなったり、ほっこりしたり。『できることならスティードで』に海外が舞台の掌編小説が一編ありますが、彼の作風をイメージして、僕なりに書いてみたものなんです。それくらい彼が好きだし、まだ読んだことのないかたによさを伝えたいですね」

「僕が旅に求めるのは予測不能なできごとだと気づかされた」

加藤シゲアキさんが語る「旅を読むこと」とは?
自分にはないものの見方に刺激を受けたエッセイ集たち
フジテレビの『タイプライターズ~物書きの世界~』で、芸人で作家の又吉直樹さんとMCを務めている加藤さん。毎回又吉さんから刺激を受けているというが、彼の『東京百景』は「観察眼がやはり独特」と感じたエッセイ集だ。

「東京の風景を100も、ものすごく短く小説風に切り取っているんです。“僕にこれがやれるだろうか”と思いました。読んだあとに書かれていた場所を通ったら、いつもの景色がちょっと違って見えるかも。東京にいながら超ショートトリップを味わえる本ですね」

同じエッセイ集でも友人にすすめられた『断片的なものの社会学』は「社会学者が語る学問からはずれたエピソードにすごく人間味を感じた」という。

「胸を締めつけられるような悲しい話もあるけれど、強いメッセージ性があるわけじゃない。“あなたはこの現実から何を感じますか?”と優しくボールを投げられているようでした」

最後に加藤さんが「これは、えぐいので迷ったんですけど」とあげたのが、車谷長吉さんの『赤目四十八瀧心中未遂』。

「世捨て人みたいな男が女と逃避行を始める……だから旅の話ではあるんです(苦笑)。主人公はある種ダメな男ですが、いろいろな人と出会う中で悩みながらも希望を感じているようだった。なによりこの小説には、僕が旅に求めていることが書かれていると思いました。それは予測できないできごと。たとえそれで大変な目にあっても、同じことが日常で起きるよりやり過ごせるし、旅先ではむしろ期待してしまうんです。私小説だけに圧倒的な迫力があるし、文章から匂いまで伝わるようだし、シンプルに好きな小説。旅でディープな日本を感じたいかたにおすすめですね」
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