フランス文化のヘリテージに根ざしつつモダンなシャツを提案する、ブリエンヌ パリ ディス。そのシャツと歴史的背景は、リュクスの本質を理解し好奇心旺盛な日本の女性たちにも訴求する。クリエーションの原点である18世紀末建造の館を訪ね、創始者とデザイナーに話を聞いた。
ブリエンヌの創造の源は、館内の至るところに
ブティックの後部ドアから望んだ、館の入口。ストライプの壁紙は典型的なナポレオン様式だ
バックヤードから見た館。庭では顧客や友人たちを招いてガーデンパーティも開かれる
フォルチュネ・アムランのバスルームだった部屋
今年の秋冬コレクションのインスピレーションを描いたドローイング
ダイニングルームとして使われている元サロンにはモダンな家具を配して、歴史的空間とは対照的に
館内のショールームにも、白のシャツが整然と並ぶ。壁の装飾には、ブリエンヌのロゴに落とし込まれている菱形、扇のイメージソースとなった、蔦や鳥などの自然のモチーフが顕著
自由を体現した、館の初期の女主人。その気質が今、ディテールにこだわったシャツに反映されている
今から10年以上前のこと。フランスの起業家シャルル・ベグべデは漠然と、メンズウエアのブランドを思い描いていた。一方、オフィス物件を求めてたまたまブリエンヌの館を内見した妻のカリーヌは、すぐに購入を決意。館に広がるネオクラシックなディレクトワール様式の美観はもちろん、歴史的な意味合いに魅了されたからだ。そうしてメンズブランドと館の改装がひとつのプロジェクトとなったころ、求人広告を通じて出会ったのが、デザイナーのセシル。ブリエンヌ パリディスはこうして誕生した。
カリーヌとセシルがまず始めたのは、フランス中西部のシャツ美術館を含む国じゅうの博物館や、パリ市内の蚤の市めぐり。そして、フランス文化のヘリテージをモダンに再解釈したデザインを最高級の素材で仕立てたメンズシャツのコレクション、というコンセプトに行きついた。
’17年には、8型だけのファーストコレクションが誕生。同時に改装が進行していた館の歴史を探るうちに、初期の住人、フォルチュネ・アムランの輪郭もはっきりしてきた。メルヴェイユーズ(フランス革命後の総政府時代に、自由で華やかな装いを自己表現の手段とした、上流階級の女性グループ)のミューズだ。彼女が自ら内装を手がけたこの館では、知的交流の場も兼ねた社交サロンを主宰していたという。そして、メンズのシャツを買い求める女性客がしだいに増えたことから、ウイメンズは自然とコレクションに加わった。ブリエンヌのシャツが知的で洗練された女性たちを魅了してやまないのには、こんな背景がある。
創始者のカリーヌ・ベグベデ(左)は金融関係のキャリアをもつ起業家。セシル・フォシュール(右)はクチュールメゾンからコマーシャルブランドまで、そしてデザインからパターンメーキング、生産から営業まで、と幅広い経験を積んできた
白いシャツがもたらす可能性は無限大
カリーヌは、歴史的観点から白のシャツを分析する。「メルヴェイユーズの時代、女性たちは解放の象徴として白いシャツを着るようになりました。人生を謳歌する女性の活力を体現しているのです」。一方、セシルはこういう。「白いシャツはなんといってもエレガントだし、リトルブラックドレスのように、デザインの可能性も無限大です。それに50代の女性にとっては、二の腕や首もとを隠して、ひそかに安心感や自信を与えてくれると思います」。なんとも意味深い、ブリエンヌのシャツ。着ると、メルヴェイユーズの一員になった気分を味わえるかもしれない。
ブティックの棚に並ぶ箱は、パッケージ。ブリエンヌのシャツを買うごとにこれを棚に並べていくのは、本の全集をそろえる楽しみに似ている、とはセシル談(シャツは€310〜590)
店内からは、窓ガラスを通じてオフィスがのぞける
オフィスの壁一面には、縫製などの指示を書き込んだスケッチが
ブリエンヌ・グッズの一連。テーブルウエアはランチョンマット€80、ナプキン€40。館の天井に見られるモチーフをあしらったリモージュ磁器は、皿€98、小鉢€58、コップ€58
クトワール様式の装飾。右上のスモーキーで神秘的な香りのキャンドルVolute Sacrée(€50)と、右下の襟の先に入れるタブ(€60)もオリジナル。本には、館の歴史的資料と改装後の写真が満載されている
Data
BOURRIENNE PARIS X
58 rue d’Hauteville 75010 Paris, France
☎+33・07・64・30・63・04
11:00~19:00
定休日:日曜、祝日
https://bourrienne.com/en-jp
Instagram:@bourrienneparisx
PARIS Xは、パリ10区の意味。ドトヴィル通り58番地では、まずブティックでブリエンヌのシャツの美しさを堪能し、その歴史に耳を傾けたりオフィスをかいま見たりしたあとで、館を訪ねたい。館のビジットは予約推奨。日本でもトゥモローランドなどのセレクトショップ約40軒で購入可。上記サイトにて確認を
撮影/Stéphane Ruchaud 取材・原文/Minako Norimatsu ※€1=¥183.85(8/12現在) ※エクラ2026年10月号掲載