札幌の自然に溶け込んだ美術館、芸術の森美術館へ行ってきた

豊かな大自然の中の広大な敷地内には国内外からの彫刻作品が常時展示され、美術館ではさまざまな企画展示が行われる。ちょうど、遠藤彰子さんの展示がされていたので雨の中、ふらりと美術鑑賞を。

小雨がさらに魅力をひきたてる美術館

美術鑑賞は、カンカン照りの太陽、子供たちのはしゃぐ声、ああ、最高のレジャー日和!そんな見事な真夏日よりも、しとしとと小雨が滴る日の方が、より一層、作家の世界観に引き込まれると感じるのは私だけではないかもしれない。
傘の上をぽたぽたと雫が落ちる音も、美術館の池の上を雨粒が踊る光景も、入館時に傘を閉じてばさばさと水を払う一連の動作も全て、もうそこから美術鑑賞が始まっているようで情緒があると感じるからかもしれない。新緑の葉っぱもみずみずしく映える。

訪れた日は暦では祝日で、曇天の厚い雲が朝から見られた。霧雨を降らせ、やがて小雨になった。美術館に訪れると、こんな日のせいか、人もまばらで、小雨の中を走って車に乗り込む人も見えた。
この美術館に赴く理由がいろいろあるなかでも、敷地内の森に咲く花々が、その季節をちゃんと映し出しているのが見られるのが嬉しいから、というのがある。もちろん特別展は見たい、晴れていれば園内の池のそばでじっと水面も眺めたい。ちょうど、5月はカタクリの尖った花と、妖精が出てきそうなエゾエンゴサクの可憐な水色の花が木陰に咲いている頃だった。この時期が過ぎると、札幌はライラックの花が咲き、ポプラの綿毛が飛び始め、いよいよ北海道の短くも爽やかな夏が訪れる。
芸術の森
小雨が降る芸術の森の敷地内を歩く。まだ新緑の季節。
遠藤彰子さんという神奈川県を拠点とする画家の展示会が開催されていた。案内ポスターは、なにやら毒々しいような繊細なそれでいてエネルギッシュな絵と共に紹介されていた。「「人間の存在」や「今生きている実感」といった普遍的なテーマを描き続ける」大作シリーズ」と書かれていても、あまり実感が湧かずに気軽に入って見事に裏切られる。
圧倒される。
こんな大作って思いもしなかったから、もっと心算をして対面しないといけないような、あっという間に世界観にのまれ、息苦しくなるほどの、そんな凄まじいエネルギーだった。
そのサイズ感、ディテール、色使い、作家がこの大きなキャンバスと向かい合って思考してその映し出したい映像を手からブラシへ、ブラシから色をキャンバスへ、目の前で対峙すると、その気持ちが乗り移るようで、端から端まで眺めては、なぜここにこれが描かれるのか、それはもう膨大な情報量だった。
遠藤彰子展
遠藤彰子展「生生流転」は札幌芸術の森で6月16日(日)までです。
  • 芸術の森特別展示

    遠藤彰子展、このサイズの絵画がブロック毎に続く

  • 芸術の森特別展示

    遠藤彰子展の堂々たる大作に圧倒される

  • 芸術の森特別展示

    どれだけの時間を費やせばこんな大作が何十点も生まれるのだろう

躍動感に溢れ、面白いアングルと構図の中で、その世界観は、絶対的なものがあり、あまりの迫力に休憩を挟まないと気持ちがついていけなかった。まさに、ほとばしるエネルギー、耳に届く直接的な「音」の如く、視界を圧倒させる作品群、そして絵の中の無表情にも見える人物は、いつもどの絵も一人だけと目が合い、その目を持つ人物に案内されているようだった。
芸術の森敷地内を雨の音を聞きながら歩く
豊かな自然も偉大な芸術、それが近くに感じられるのもこの美術館ならでは。
濡れた木々と湿気を含んだ土の匂い。美術館内のカフェが好きなだけにカフェがオープンしておらず残念だったけど、ふらりと自分時間を楽しみたい時には、自然に身を置き、花を愛で、小さな生き物を眺め、たくさん五感からその空気を吸収すれば、短い時間でもリフレッシュが叶う。たぶん、感傷的になったり、普段見過ごす何かをキャッチしたり、絵という問いかけから自分の中で答えを出そうとしたり、そういう時間を大切にしたいのだと思う。
本当に素人目線だけど、あれだけの大作シリーズの搬入や搬出、運搬、そして管理はどうなっているのだろう?と、そんなビハインドシーンも気になって仕方なかった。

館を出る時にもう一回案内ポスターを一瞥する。このポスターからは、あの世界観は想像できなかった。楽しくもめくるめく時間をありがとう。
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RITA

RITA

北海道の大自然の中で暮らしています。四季折々移り変わる景色はクリエイティビティを高めてくれます。男の子2人のお母さんで、きれいな毎日は少ないけど、私がわくわくする北国ライフを発信していきたいです。

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