「この小さなエリアに、これだけの酒蔵があるのは興味深いですよね」と話すのは、市内で『魚酒場 よしだ屋』を営む吉田英哉さんだ。『よしだ屋』では、山陰地方の純米酒を紹介している。
「温度を上げると、味に広がりが出て滋味が深まる。ぜひ燗酒で」と、吉田さん。
全国の神さまが集まり、神無月が唯一、神在月になる出雲。「旧暦の10月10日の夜。神さまは稲佐の浜に、海の彼方からやってこられる。出雲大社(いづもおおやしろ)では、稲佐の浜に祭壇を設けて神迎えの儀式が行われます。そのとき、祭壇には神籬(ひもろぎ)と呼ばれる榊がございます。儀式が終わりますと、この神籬を神官が持って行列して、出雲大社に帰っていかれます。神迎の道を通って正面の鳥居を入り、神楽殿で儀式をし、出雲大社の左右にあるお社にお連れされます」とは出雲人から愛される歴史学者、荒神谷(こうじんだに)博物館館長・藤岡大拙(ふじおかだいせつ)さん。
出雲の神在祭で聖なる動物とされる、“龍蛇(りゅうじゃ)さん”と呼ばれるセグロウミヘビ。神在祭に参集する八百万(やおよろず)の神の先導役として人々の厚い信仰を集めている。「海の毒蛇ですわ。必ずこの季節、強い風が吹き荒れると、島根半島沿岸に打ち上げられたんです。不思議なことに鳥取や石見の国には上がらない。南方先島諸島あたりに生息するウミヘビが、暖流に乗り北上し、日本海に入った途端、寒流にぶつかり仮死状態などで弱くなり、そのまま季節風に吹かれ島根半島に上陸する。毎年ハンコでついたように来るので、人々の間で神さまの使いと崇められるようになったのではないでしょうか」(藤岡さん)。
神迎の時刻は、篝火が燃える午後7時ごろ。稲佐の浜は、高天原から遣わされた建御雷神(たけみかつち)が降り立った国譲り神話の舞台でもある。雲間から美しい光が射し込むこの地に立つと、神々をお迎えするのに、これほどふさわしい場所はないと思われる。
神職たちはまず、あたりを祓(はら)い清め、祝詞(のりと)を奉上。「おー」という声と波音が聞こえる中、八百万の神々が海のほうからご光来(こうらい)となる
出雲駅伝のスタート地点としても知られる「勢溜(せいだまり)」から、下り坂の参道を約5分歩くと、のびのびと広がる松の並木に着く。荘厳かつ晴れ晴れとした雰囲気
目に見えないものに守られ、目に見えないものに寄り添う、出雲。神在月も、出雲大社や佐太(さだ)神社を中心に各神社で神事やお祭りが行われる。海からお迎えした神さまは、まずは出雲大社の十九社(じゅうくしゃ)に滞在なさるという。
「東側と西側に2棟。合わせて38の部屋があり、そこへ八百万の神々がお泊まりになり、明くる日から、“神議”と申します会議が始まります。十九社を出て、稲佐の浜へ行く途中にある『上宮(かみのみや)』という場所で7日間、毎日、毎日、神議があります」(藤岡さん)。出雲大社から佐太神社など各神社をめぐり、最後、大半の神さまが万九千(まんくせん)神社から全国へお立ちになる。旅立ちの“神等去出祭(からさでさい)”では、宮司が梅の小枝を持って「お立ち」と3度唱えながら、神社の扉をたたき奉告する。「その最後の晩、ずっと神議を続けた八百万の神さまは、お互いの労をねぎらって、宴会を開き楽しまれる。それを“直会(なおらい)”と呼んでいます。そして次の年の再会を誓い、未明にはそれぞれの国元にお帰りなさるのです」と万九千神社・錦田剛志宮司。
かつては出雲地方全体で神さまをお迎えしていたという。人々は神在祭のことを“お忌(いみ)さん”と呼び、神々滞在中は会議や宿泊に粗相がないよう、静かに過ごしたという。特に神さまをお送りする神等去出祭の夜は神さまがそこらじゅうを闊歩するので、外出は厳禁だったという。地元で生まれ育った藤岡さんは「絶対のぞいてはいけない、見たら必ず死ぬといわれていました。子供のころ、“あのな、カラサデさんの晩はな、便所に行くと、カラサデ婆さんがしりなでるよ”といわれそれは怖くて。昔のトイレは外にあるので、飲み食いをセーブして、子供ながらに自己規制していました」。
そもそも神々はいつから、どういう理由で出雲にお集まりになるようになったのだろうか。時代をさかのぼると、平安後期の歌学書『奥義抄(おうぎしょう)』には<天の下のもろもろの神出雲国にゆきて この国に神なきゆえにかみなし月といふをあやまれり>とすでに神在月の記述が見られる。
では理由は? 神々が集う理由は神社や時代によって異なる。その伝承のひとつに、大國主命(おおくにぬしのみこと)が「幽事(ゆうじ)」を治めているから、一年のあらゆるご縁を結び、繁栄を導く話し合いをしに集まるというものがある。『日本書紀』の“国譲り神話”では、大國主大神は国造りで開拓した国を天照大御神に譲り、自らは幽事・神事を治めることになった。幽事とは見えざる神の世界だ。
「小泉八雲が指摘したように、出雲には現代社会が失った祈りの心、礼節、人のぬくもりや優しさなど日本文化の懐の深さ、真心が生き続けているのではないでしょうか。日常世界はSNSなど目に見えるもので心病むことも多いですが、目に見えない世界の中心である出雲を訪れることで、人間性や心を取り戻し、リフレッシュしてまた日々の暮らしに戻られたらいいと思います」(錦田宮司)
壮大な出雲神話の核となる大國主大神が主祭神。今から約1300年前には大きな社が建てられ、この世の中のあらゆるご縁を結ぶ。神在祭りの期間中は、東西十九社と上宮では毎朝祭典があり、毎夜神楽殿では夜神楽祈祷、巫女舞が奉納される。縁結大祭では、良縁を願う人々が全国から集まる。正式には「いづもおおやしろ」と呼ぶ。
岡本太郎が〈これほど私をひきつけたものはなかった。この野蛮な凄み、迫力、おそらく日本建築美の最高表現であろう〉(『日本再発見』/新潮社より)と評した本殿の裏側
神迎、神在祭は神事なので、一般のかたは参列できないが、境内での参拝は可能
神々の宿泊処、十九社
神等去出祭の様子。絹垣で囲いをして、神籬をお運びする
ひっそりとたたずむ神々の会議場上宮
DATA
島根県大社町
☎︎0853・53・3100
神迎祭/旧暦10月10日午後7時~
※以下旧暦10月
神在祭/毎年11日午前9時~、15日、17日各午前10時~
縁結大祭/15日、17日各午前10時~
神等去出祭/ 17日午後4時~
朝山という地名は、大國主命が眞玉着玉之邑日女命(またまつくたまのむらひめのみこと)が住む郷へ、朝ごと通われたことから名づけられた(『出雲国風土記』より)。この美しき女神を主祭神とし、標高180mほどの山頂に鎮座している神社。出雲が神在月になると神々がみぞれまじりの嵐に乗って、まずこの社を目ざすと伝えられ、今も荘厳かつしっとりとした神在祭が行われる。
美しく掃き清められている境内。「よお、お詣りくださいました」と近所のかたの優しい呼びかけに癒される
境内上の神苑からは、日本海と出雲平野、美しい空と雲が眺められる
DATA
島根県出雲市朝山町1404
☎0853・48・0201(朝山コミュニティセンター)
神在祭/旧暦10月1日~10日
神々が最後に立ち寄り、宴をし、全国に旅立つ社。17日の早朝、神迎えにあたる龍神祭は、宮司ひとりが斐伊川の水辺で秘儀として行う。神々が全国にお立ちになる26日の大祭「万九千さん」では、境内に名物の植木や海産物、金物などの露店が並ぶ。当日夕刻は神々にお立ちの時が近づいたことを報告する「神等去出祭」が厳かに行われる。
26日の夕刻、まずは宮司家伝来の神楽を舞う湯立神事が行われる。これは平成29年に再興されたもの
旧暦17日の夜明け前に宮司ひとりで斐伊川(ひいかわ・川端)に赴く。川の中の秘儀は何人(なんびと)も見ることを許されない
地名の通称は“神立(かんだち)”。以前は交通の要所で、出雲大社と熊野大社の御神領地でもあった
旧暦26日、「万九千さん」には多くの参拝者が。写真は湯立神事のもの
神等去出祭の様子。宮司が手にしているのは、梅の小枝。神さまにお供えした「おさがり」をいただく撒下品として、御神酒以外にも出雲しょうがを使ったオリジナルジンジャエールがある
DATA
島根県出雲市斐川町併川258
☎0853・72・9412
神在祭/旧暦10月17日~26日
大祭/旧暦10月26日夕刻
神等去出祭/旧暦10月26日
『出雲国風土記』に399社の記載があり、他地域と比べてもトップクラス。出雲人のレジェンド御年92歳の藤岡さんは、すべて訪ね歩いたことがあるという。
「もうないのがあったり、合併してわからんのがありますが、どこへ行っても、精神的な安らぎをいただける場所でした。出雲の神社は境内の裏がとてもきれいに整備されている。ほかの国(地域)の神社にも行きましたが、そこがまったく違う。どこも掃き清められたあとが残っていて、すばらしいと思いました」。ここでは編集部おすすめの、心安らぐ3つの社をご紹介します。
島根半島の最先端の海沿いにある、えびすさまの総本宮。一年365日欠かさず執り行われている「朝御饌祭(あさみけさい)」と「夕御饌祭(ゆうみけさい)」では、祝詞が上がったあと、神楽に合わせて巫女舞が奉納される。国譲り神話で父に国を譲ることを進言した、大國主大神の第一の御子・事代主神(ことしろぬしのかみ)を祀る。その国譲りの際の天逆手(あまのさかて)(拍手)を打っておこもりになったことが、現代の「手締め」の元祖に。
神聖な気持ちになる巫女舞。時間は日によって前後することも
海からの風と光が気持ちいい社
海上の要所・美保関で、北前船など往来した、風待ち港として栄えた場所
近くの美保関灯台からは、隠岐まで見える日も
DATA
島根県松江市美保関町美保関608
☎︎0852・73・0506
出雲市よりバスに乗って、途中立久恵(たちくえ)の景勝を眺めながら約40分。行く先はのどかな山の里にある須佐神社。社殿裏の樹齢1300年以上にもなる老杉が有名だが、そのわきを流れる須佐川の流れなど、ゆったりとすがすがしい気持ちになる場所。主祭神は須佐能袁命(すさのをのみこと)(須佐之男命)。近くにある、真夏にも涼風が岩のすき間から吹き出す「八雲風穴(やくもふうけつ)」は温暖化の今、未来を感じさせる“新名所”で、一見の価値あり。古くて新しい場所。
社殿の西を流れる須佐川は、太古の風情そのままの清冽な流れのせせらぎ
典型的な大社造の本殿
木肌ひとつひとつに栄枯盛衰の歴史を秘め、黙して語らず
DATA
島根県出雲市佐田町須佐730
☎︎0853・84・0605
出雲大社の裏側、北山の奥にある小さなお社。鳥居から、ロープの手すりを頼りに山を登ること約20分。本殿手前には難関の岩の割れ目があり、これを通り抜けるとようやく本殿に。祭神は素盞嗚尊(すさのおのみこと)。周囲は海底火山によって作られた鉱物資源が豊富で、野だたら(露天で自然の通風を利用する製鉄)跡がよく見られ、鉄器文化伝承の地としても知られている。
駐車場から杉木立の中を約800m舗装のない山道を歩いていくと、鳥居が見えてくる。近くの小川が手水鉢がわりの清めの場
巨大な岩石の狭いすき間を重力に逆らうように潜っていくと、本殿にたどりつく。足腰がしっかりしているうちに訪れたい、秘境的な場所
DATA
島根県出雲市唐川町408
☎0853・63・0893
両手が空くバッグ、スニーカーやパンツなど動きやすい格好がおすすめ。
出雲市駅から徒歩5分、アーケード商店街内という好立地。試飲・直売所を備えた街に開かれた酒蔵は、大社町『古川酒造』(現閉業)から「八千矛」の醸造を引き継いだ、由緒ある蔵でもある。現在の杜氏・副杜氏が就任した’10年から、生酛(きもと)造りを復活。地元産を中心とした酒米と北山山麓の地下水を使い、蔵つきの酵母でじっくりと発酵させる酒は、力強いうま味があり、幅広い料理に寄り添う。
「純米吟醸 八千矛」¥2,420
大正15年に建てた蔵で、今も酒を醸している
(右)「生酛純米十旭日(改良雄町70 R3BY)」・(左)「純米原酒十旭日(改良雄町70)」ともに¥1,760(すべて720㎖)
3年前にリニューアルした直売所。蔵で使っていた樽の木材でセラーを造るなど、“昔ながらの酒蔵”の風情を感じられるもともとの姿に戻した。店内では試飲もできる(有料)
醸造施設内。土の壁、木の柱など「呼吸する建材」を今も残している
DATA
島根県出雲市今市町662
☎0853・21・0039
直売所10:00~18:00
不定休
『旭日酒造』と同じアーケード商店街内で10年前に開業。釣り人で料理人、日本酒にも造詣が深い吉田英哉さんがカウンターに立つ居酒屋は、地元はもちろん、県外の酒蔵、酒販店からも信頼が厚い。「最近は、県外から燗酒を飲みにこられるお客さまも増えて」と、うれしそうに話す吉田さん。どっしりとして酸味のある山陰の酒と、出雲近海で揚がる旬魚のひと品の宿命的な好相性、ぜひ体験されたし。
刺身おまかせ盛り合わせ(1~2人分)¥1,480。イカの沖漬け¥1,100(売り切れしだい終了)。コクと酸味のある山陰の酒を熱燗で
魚愛にあふれる吉田さんは、この夜の営業の翌日も朝4時から漁へ
地元出雲人にも人気のお店
DATA
島根県出雲市今市町中町1346中野テナント1F
☎0853・24・2011
17:00~21:30LO
定休日:日曜
世界のバーホッパーを魅了する東京・新宿のバー「ベンフィディック」で修業時代をともにした高梨寛実さん、美澄さん夫妻が昨年8月にオープン。「酒は土地の自然と文化の表れ」と、その起源や歴史を探求する師に倣い、島根の酒、素材で、土地の歴史の奥深さや自然の豊かさを表現するカクテルを提供。日本一の繁盛店で鍛えた味づくりの技も確か。旅の目的地になるバーだ。
「奥出雲バラカクテル」¥1,650。ボリビア産蒸留酒・シンガニがベース
地元の歓楽街の一角
「山椒氷のカクテル」¥1,760。すべて地元の素材で
“和のグラッパ”として、近年製造する蔵が増えている日本酒の搾りカスが原料の蒸留酒。写真は「月山(がっさん)」で知られる安来(やすぎ)市『吉田酒造』の「リゾッパ」。「酸味のキャラクターがユニークでアロマティック」と、高梨さん
「柳蔭(やなぎかげ)」¥1,100。日本最古のカクテルといわれ、「リゾッパ」とみりんで作る。キレのあるドライなカクテルだが、後味にほのかな日本酒の甘味がある
DATA
島根県松江市伊勢宮町537の50
☎︎0852・33・7266
18:00~24:00(最終入店)
定休日:水曜
大社の門前で52年続くそば店で、現在は二代目、三代目が店を守る。11年前に改装した店は、高い天井に大社の祝凧の装飾など、しつらえからも出雲を感じられるすがすがしい空間だ。漆器で供される割子そばと、ゆで上げをそのまま器に盛る釜揚げの2種。割子は1段から頼めるのがうれしい。裏手にオープンした『田中屋分店』では、そばにまつわる雑貨や出雲の工芸品などを紹介。
田中俊樹さん。地元酒蔵の同世代の後継者らとタッグを組んでイベントなども行う
有田焼「渓山窯」とコラボレーションして作った『田中屋』限定のそば猪口(ちょこ)。稲佐の浜や鶴・亀など、出雲にちなんだモチーフが描かれている。右は瞬間冷凍手打ち出雲そば4人前セット¥3,640
左が「釜あげおろしそば」¥850、右が「割子そば」(2段)¥600
分店ではオリジナルブランド商品も
DATA
島根県出雲市大社町正面鳥居前
☎0853・53・2351
11:00~16:00(そばがなくなりしだい終了)
定休日:木曜
出雲大社の御神酒として知られる清酒「八千矛(やちほこ)」。御祭神の別称・八千矛の名を冠したこの酒は、現在、「十旭日(じゅうじあさひ)」で知られる『旭日(あさひ)酒造』が醸している。「見えないものに守られ、見えないものとともに」と、酒造りの信条を話す蔵の長女で副杜氏(とうじ)でもある寺田栄里子さん。「見えないもの」とは、もちろん発酵にかかわる微生物のことなのだが、言葉は“神”を想起させる。
島根の酒造りの歴史は古い。日本最古の歴史書『古事記』の出雲神話に、須佐之男命がヤマタノオロチを倒した酒が登場する一節は有名だ。稲作の始まりは弥生時代初期と早く、当時から中国各地の文化の影響を受け、祭祀のためにさまざまな酒が醸されていた。神事と酒が切り離せないものであることを考えると、この地の酒の文化の豊かさ、奥深さが守られているのも理解できる。
出雲の食文化を語るうえで欠かせないのが出雲そばだ。神社へのお詣りの際に門前のそば屋でそばを楽しむ。出雲人の暮らしに根づいた習慣だ。出雲大社の門前に立つ『そば処 田中屋』では、『板倉酒造』で醸造したオリジナルの酒「天穏馨蕎(けいきょう)」をそばとあわせて推している。「米と水で醸す酒は、土地の味が出る。いろんな目的でここに来られるかたに、食を切り口に出雲を知ってもらえたら」と、三代目の田中俊樹さんは話す。
町の日常に溶け込み、地域の人の暮らしに根ざした店の中に、わざわざ足を運ぶべき店があるところに、島根の高い酒の文化が見て取れる。松江まで足をのばせば、また別の角度から島根の酒を楽しめる店がある。『Bar 小鳥遊』は、地酒蔵が醸す蒸留酒や県産の果物を使ったカクテルで人気だ。見た目はシンプルだが、味わえば豊かな自然の恵みと文化を育む、美しい風土の姿が浮かび上がる。
石見銀山に1789年に建てられた武家屋敷を改修した一日2組のみの宿『他郷阿部家』。近年、古民家を利用した宿は多いが、ここは主の松場登美さんが延べ21年をかけ“暮らしながら”整えたという意味で特別。その道のりは今も続いている。「完成形より過程が重要」と、松場さんが話すとおり“暮らすように”過ごす滞在者やスタッフと一緒に、建物だけではない何かをこの地に遺(のこ)す営みにかかわっている。
宿が立つ石見銀山一帯は、’07年に世界遺産に登録されている
台所。松場さんも、宿泊客と食卓を囲む
四季折々の花は自然からのおすそ分け
客室「蔵」2階のベッドルーム。曲線を描く極太の梁が見事
遺っていたおくどさんを中心に、台所をしつらえた
客室「蔵」の浴室
炊き立てのごはんで結ぶおむすび。豪華さとは違うおいしさを伝える
中庭。壁の道具類はすべて現役だ
DATA
島根県大田市大森町八159の1
☎︎0854・89・0022
料金/¥44,000~ 1室2名利用時の1泊2食つき1名料金(サ込)
IN15:00、OUT11:00
日本最大級を誇る出雲大社神楽殿の大しめ縄を作るこちら。昭和30年代、大社の分院があったのが縁で、住民らで制作・奉納を行うように。制作工程を見学でき、しめ縄作り体験なども行われている。
土地ごとに形状が異なるしめ縄。資料館では全国各地のものを展示している
巨大なしめ縄も、すべて手仕事で。パーツごとに作り、組み立てていく
神楽殿のしめ縄。飯南町で作りはじめて七代目になる。交換した使用後のしめ縄は地元の山に帰すという
赤穂もち、亀次という稲の品種が使われる。食料用の稲より早い真夏の収穫になるので、刈り入れ作業もひと苦労。稲は余すところなく使いきる
DATA
島根県飯石郡飯南町花栗54の2
☎0854・72・1017
10:00~17:00
定休日:火曜、年末年始
ショップではしめ縄飾りを購入することも可能。
出雲の豊かな文化と伝統を体験できる場所。広い敷地内に明治29年築の豪農屋敷や出雲流庭園、茶室などがある。茶の湯などを行う松籟亭(しょうらいてい)では、庭の眺めを楽しみながら季節のお菓子とお抹茶をいただくこともできる。“おんぼらと”過ごしたい。
部屋ごとの欄間の意匠も美しい
抹茶(季節のお菓子つき)¥500
松籟亭でのしつらえ。この日は松平不昧公の書
出雲流庭園は、地域に特有の黒松、巨大な飛び石、短冊石などが配されている
DATA
島根県出雲市浜町520
☎︎0853・21・2460
9:00~17:00(茶室は9:30〜)
定休日:月曜(祝日は営業)
大阪で18年、コアなワイン好きたちから支持されるビストロを営んでいた三原雄太さんが故郷に開いた食堂。ここでは地元の食材や郷土料理から着想を得た料理を自ら手がけ、ワインだけでなく島根を中心とした地酒も紹介している。開業から1年足らずで、地元の人々の暮らしになじみ、県外からも人を呼ぶ店に。海沿いに立ち、サンセットタイムの絶景も見事。
そば店として修繕された古民家を活用。自然になじむ建物のシルエットも含めて美しい夕景
店内からも海景色が見える。料理は十六島ワカメも味わえるおでん、刺身、神西湖のしじみの酒蒸しなど
通りには小さな看板のみ。目立つ装飾もないが、家族連れや旅行者でにぎわう
店の入口わきにほぼセルフビルドで建てた蔵。壁は竹小舞(たけこまい)のしっくい塗り。ワイン、日本酒はもちろん、保存食などの収納庫としても活用
DATA
島根県出雲市湖陸町大池858
☎0853・77・0799
11:00~14:00LO 17:00~20:00LO(金・土曜のみ)
定休日:日・月曜
出雲大社神門通りに昨年9月にお目見えした全14室、温泉つきの和のオーベルジュ。浜田市「吉原木工所」が手がけた組子のらせん階段や地元出身の日本画家の作品など、しつらえに島根の工芸や職人仕事がちりばめられている。京都『東山 吉寿』などで修業経験のある若き料理長が腕をふるうレストラン「Yaku」では、地産食材をふんだんに使った料理と出雲の地酒のペアリングが楽しい。
露天浴場つきのスイートルーム「ASAMURASAKI」の室内。部屋からは大社の街並みが見える
出雲大社の参道に位置し、神迎や神在祭、早朝参拝にも便利。地元の花嫁衣裳店があった場所に建設された
出雲大社の参道に位置し、神迎や神在祭、早朝参拝にも便利。地元の花嫁衣裳店があった場所に建設された
「吉原木工所」のらせん階段
「Yaku」店内。江津市「Sukimono」に依頼した鳥居がモチーフの椅子が印象的。天井には雲のモチーフが
島根和牛×宍道湖しじみだしの島根ならではのしゃぶしゃぶ
DATA
島根県出雲市大社町杵築南1369の1
☎0853・53・1300
料金/¥53,000~ 1室2名利用時の1泊2食つき1名料金(サ込)
IN15:00、OUT11:00
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