夏のお供に⭐︎読んでほしい2冊

冷房の効いた部屋でゆっくり読書はいかがでしょう。「水を縫う」と「対岸の彼女」
子どもの頃の夢は小説家。
なのに大人になってからは、
物語の世界から遠ざかってしまいました。

現実逃避、でもないけれど
何か違う世界に身を置きたくて
あまりヘビーでないものならと買った2冊。
2021年、河合隼雄物語賞を受賞「水を縫う」
2005年に直木賞受賞「対岸の彼女」
水を縫う 寺地はるな
「水を縫う」寺地はるな

「男のくせに」手芸が好きな高1の清澄(きよすみ)。
「女なのに」可愛いものが苦手な姉の水青(みお)のため
ウェディングドレスを作りたいと申し出ます。
デザイナー志望だった別れた夫の遺伝かと、
母は息子の裁縫好きに難色を示します。

ジェンダーレスという言葉が広まって、
いろんな価値観が変わりつつあっても、
「男らしく」「女らしく」と、やっぱり決められがち。
秀逸なのは第五章、
家族ではなく、父の友人である黒田の視点から描かれます。
清澄の父からの慰謝料を届ける役割のある彼は
もちろん家族の「一員」ではないけれど、「一部」のよう。
素直な清澄からの言葉に込み上げる黒田の姿にグッときました。

持って生まれた性別は関係なく、
どんな人も「自分らしく」あること。
みんながそういられたらいいなあと思いました。

最後には清澄も家族も、自身から開放されていきます。
針仕事に情熱を傾ける少年の清々しさが心地よい一冊です。
対岸の彼女 角田光代
「対岸の彼女」角田光代

ドラマ化もされた有名作品。
20年近く経つのに古い感じがしないのは、
根本的に女同士って変わらないんだろうな。

女社長の葵の元で、ハウスクリーニングの仕事に就く主婦•小夜子。
たまたま同い年、同じ大学の出身で、距離を縮めていくのですが、
立場や境遇の全く違う二人に少しずつ溝ができていきます。
近づいたと思ったら、イライラすることに見舞われたり。

今が悩ましいのは小夜子、過去が苦しい葵。
その時間軸が交互にやってくる展開、
物語の先が気になって、ページをめくる手が早くなります。

始まった人間関係には変化もあるし、いつか終わりが来ることも。
100%満足していなくても、交わりを続けていきたいこともある。
人にはそれぞれいろんな事情があって、もがいたり悩んだり。

でも人が強い思いを持つ瞬間、決意する瞬間が私は好きです。
だからやっぱりラストは清々しかった。
娘がもっと大きくなったら、読んでほしい2冊。
オトナに読書感想文の宿題はないけれど、
この夏1冊、選んでみませんか?
寺地はるな 角田光代
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yako

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大阪府在住。夫と娘の3人家族。おしゃれ、台所仕事、本 etc好きなものを自分の言葉で綴ります。

Instagram:yako_sugar

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