50代の2大人気女優、キム・ヘス&チョン・ドヨンの魅力を大解剖!

エクラ世代の代表的な韓国俳優、いや、世代を超えて韓国エンタメ界のトップに君臨する俳優といったら、この2人をおいていないのでは? キム・ヘスとチョン・ドヨン。全く異なる魅力をもちながら、今なお最前線で活躍する2人の人気の理由を、ライター山崎敦子が解説!
  • キム・ヘス

    キム・ヘス Photo / Getty Images

  • チョン・ドヨン

    チョン・ドヨン Photo / Getty Images

 眩いほどのダイナマイトボディを惜しげもなく披露し、大胆ドレスで颯爽とレッドカーペットを闊歩するキム・ヘス(1970年9月5日生まれ)。年齢・性別にかかわらず誰もが思わず“姐さん”と呼びたくなる肝の据わった強さに圧倒されながら、その奥には意外にも繊細に揺れ動く脆さが潜んでいる。

 一方、バレリーナのようにしなやかで華奢な身体にシンプルな上質服を身体の一部のように品よく纏わせるチョン・ドヨン(1973年2月11日生まれ)。儚さと繊細さと可愛さと妖しさを好感度高く映し出しながら、その奥にはクレイジーにも似た底知れぬ激しさを秘めている。

そんないくつもの表情と印象をくるくる自在に操りながら、それぞれ全く違った魅力を放ち続けるこのお2人。50代にして主役はもちろん、ロマンスのヒロインも絶賛現役中の、そう、韓国を代表する押しも押されもしないトップ俳優。

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    キム・ヘス Photo / Getty Images

  • チョン・ドヨン

    チョン・ドヨン Photo / Getty Images

  年齢を重ねてくるとエイジレスビューティに関して気になることも増えてきますが、この2人に関していうと私的にはその言葉がなんだかちょっとそぐわない気がするのです。確かに年齢を感じさせない若さも美しさも半端なく持ってはいるけれど、例えば「年齢は単なる記号」という言葉さえ彼女たちを前にするとなんだか陳腐に思えてしまうというか。


 「55歳ですが、それが何か?」などと、本気で目パチクリされてしまいそうなんですよね。そうなんです。50代なのに若いとか、50代なのに美しいとか、50代なのにキュートとか、そもそも年齢前提で判断している自分の基準が間違っている気がしてきちゃうというか。人を圧倒するほどの輝かしい経歴とオーラを持ちながら、とってもチャーミングだし、怖そうでないし、後輩から崇められながらも、全然、偉そうに見えないし。一体なぜ? なぜなんだ〜。


 ということで、今回は、そんなお2人に改めてフォーカス。それぞれのプロフィールや作品を振り返りながら、その魅力を紐解いてみたいと思います。

“剛”と“柔”の二面性が魅力のスーパースター、キム・ヘス

 まずはキム・ヘス。ほんの一瞬の登場だけで、その人の人生まで想像させちゃう、そんな存在感の深さは、やっぱりこの人の“右に出るものなし”と思えてしまうのですが、いかがでしょう。
ドラマ「未成年裁判」のキム・ヘス
ドラマ「未成年裁判」のキム・ヘス。Netflixシリーズ「未成年裁判」独占配信中

というのも、彼女がカメオ出演した「浪曼ドクター キム・サブ」('16〜'17)。シーズン3まで配信されたハン・ソッキュ主演の人気医療ドラマですが、そのシーズン1の最終話で、いきなりハン・ソッキュ(キム・サブ役)の大学時代の元カノ役としてカメオ出演。国境なき医師団で働く彼女は、HIV陽性者の手術をキム・サブに依頼するためにやってくるのですが、久しぶりに再会したキム・サブに「元気だった?」と屈託のない笑顔で交わす挨拶だけで、2人の関係性から彼女がこれまで歩んできた多くが見て取れちゃうとでもいいましょうか。

 ふとした瞬間に投げかけられるキム・サブへの眼差しも意味深で、なんか、2人は愛し合いながらも、それぞれの使命感と共に別々の道を選択して別れてしまったのでは……、なあんて勝手に深読みすらしちゃうわけなのですね。兎にも角にもそこにいるだけで“いい女オーラ”満々。キム・サブは人の命を救うことに全身全霊で立ち向かうまさに理想の医師なのだけど、好きになる人の人間性まで完璧! と思わせる説得力。さすがです。

ドラマ「未成年裁判」のキム・ヘス
ドラマ「未成年裁判」のキム・ヘス。Netflixシリーズ「未成年裁判」独占配信中

 そんなキム・ヘスの俳優デビューは1986年。その頃はもちろん韓流にハマっていなかった私的には当時のリアルタイムな彼女は知る由もありませんが、16歳だったというそのデビュー作ではいきなり百想芸術大賞の新人賞(映画部門)を受賞したというからすでに大物オーラを潜ませていたのかもしれません。

  23歳の時に主演した映画「初恋」では、韓国で最も権威のある「青龍映画賞」の主演女優賞を当時最年少で受賞。10歳年上の演出家に恋する女子大生という初々しいキャラクター(そんな時代もあったのかあ)で当時の韓国国民を魅了したらしいのですが、以来、これまでに出演した作品は映画もドラマも数知れず。もちろん受賞数も多々。青龍賞に関しては主演女優賞になんと3度も輝いているんですね、これが。

ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス
ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス。Netflixシリーズ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」独占配信中

 演じるジャンルも多彩で、ドラマチックなロマンスから、軽〜いラブコメ、時代劇にサスペンスにノワールに本格派ヒューマンまで、難なくこなしてしまう文句なしのスーパースター。なのにトップスターとして崇められるだけでなく、ファンからも後輩からもフレンドリーに親しまれている存在。そこが凄いというか、素敵というか。そんなキム・ヘスの魅力の要となっているのが、幾重にも重なり合う振り幅大きい二面性にあるに違いないと睨んでいるのですが、どうでしょう。

  例えば、映画「コインロッカーの女」。臓器売買にまで手を染める暗黒街の女ボス役を演じているのですが、その眼差しだけで葬れるでしょ! みたいな情け容赦のないドスの効いた強面でありながら、その肚に隠し持っていたのは計り知れない孤独から生まれた大いなる愛だったし。未成年の犯罪者を有無をもいわさぬクールさで断罪する女性判事役を演じたドラマ「未成年裁判」。その非情にも見える選択も、我が子を未成年者に殺された悲痛から生まれた使命感による必然であったし。ドラマ「ハイエナ」の、金のためなら手段も何も選ばない成り上がり敏腕弁護士役では、勝ちをとりにいく豪快さとは裏腹に父のDVに怯える脆弱さをその内にはらませていたし。

ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス
ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス。Netflixシリーズ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」独占配信中

 そうなんです。ちょっとやそっとではびくともしない肝の座ったタフさと、ちょっとしたことでも崩れ落ちてしまいそうな脆さと。そんな正反対の特性を絶妙のバランスで併せ持っているというか。めちゃタフなんだけど、弱さも十分わかっているよ的な。豪快でありつつ繊細。セクシーなのに健康的。かっこいいくせしてお茶目。妖艶でいて無垢。クールそうに見えて優しい。サバサバしていそうだけど程よくウェット。そんな相反する二面性がゴロゴロゴロゴロ。しかも表面に出ているのが“剛”で内に隠し持っているのが“柔”という図式なんですよね。男女問わず後輩からも親しまれる所以がそこにあるのではないのかなあと。

名監督からのオファーが絶えない世界的俳優、チョン・ドヨン

 一方のチョン・ドヨンです。'07年の映画「シークレット・サンシャイン」で、韓国では初となるカンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得するなど、韓国映画を代表するトップ俳優であるのは皆さんも周知の通り。キム・ヘスの、ほかを圧倒するようなビジュアルとは違って、見た目はどちらかといえば華奢の部類。どこか禁欲的なところを感じさせるプリンシパル体型とでもいうのでしょうか。165cmという身長は、長身の女優が多い韓国にあっては高くもなく低くもなくという感じで、飛び抜けた美形というよりも、隣にいそうな美人のアジュンマ(中年女性)といった風情なんですよね(あくまでも個人的な見解です)。そうなんです。見た目からど迫力のキム・ヘスに比べると、全てが均整取れているゆえにインパクトはかなり抑えられているというか、むしろ地味に見える時もなくはないというか。なのに、韓国名監督からのオファーは尽きることなく。それは、なぜか? 
50代の2大人気女優、キム・ヘス&チョン・ドヨンの魅力を大解剖!_1_7
映画「男と女」U-NEXTで配信中 ©2016 showbox and bom film productions ALL RIGHTS RESERVED.
 ということで、まずチェックして欲しいのが、映画「男と女」('16年)です。コン・ユとの共演でも話題になった作品ですが、雪の北欧で行きずりに出会った男女の道ならぬロマンスを描く純正のラブストーリーです。2人はそれぞれに事情を抱えたまま孤独と閉塞感の中で現実を生きているのですが、その互いの渇きを埋めるように息も凍るような異国の地で一夜の情事を共にし、そしてそれぞれに家庭を持ちながら必然のように激しく求め合っていき……という内容。映画は2人のそれぞれの風景を淡々とした筆致で追いながら、男と女の、でも決して交わることのない心と性を繊細に映し出していくのですが、見終わる頃には、“あ〜、そうだよ男って……”、“あ〜、そうだね女って……”という感慨と余韻に包まれるのです。特に印象的なのがラストのチョン・ドヨン。北欧の女性タクシードライバーと雪道に降り立ち、深くタバコをふかすその佇まいに、ドヨンが演じた女主人公の、というか女という生き物が凝集されているようにすら感じられるというか。
 ちょっとした息遣いに、まなざしの奥に、醸し出す空気感に、女の業ともいえる性や情感をあふれさせる表現力はやはり絶品。しかも、どんなに大胆でも、どんなに激しくとも、どこか可愛らしく、どこか品の良さがあって、好感度を損なうことが決してないのですよ、チョン・ドヨンって。だから、観ているものの心に違和感なくスーッとその感情が入り込んできて、挙句に思いっきり揺さぶられまくるというか。全くなんの根拠もございませんが、もし、向田邦子が生きていたら、きっとチョン・ドヨンというを俳優を好きだったのではないかなって思ってしまうんですよね。彼女の短編小説「かわうそ」とか、私的にはぜひ、演じてみてほしいのですけれど。
映画「ハウスメイド」のチョン・ドヨン
映画「ハウスメイド」U-NEXTで配信中 ©2010 MIROVISION Inc. All Rights Reserved
 プライベートでは'07年に結婚、その約2年後には女児を出産し、その間は俳優業も中断していた彼女が仕事復帰したのが'10年の映画「ハウスメイド」。今なお語り継がれる名作「下女」(1960年キム・ギヨン監督)をイム・サンス監督が時代に合わせてリメイクした作品ですが、韓国の階級社会を抉るかなりな問題作であり、かつ、過激な性描写もあったりと、結構ハードな作品。普通、ブランクがあった後は、ちょっと助走を交えつつ、徐々にハードルを上げていきませんか?と思いがちですが、チョン・ドヨンは違います。いきなりのトップギア。文字通り体当たりで臨んだこの作品で、下層で踏みにじられる“下女”の純真と凄まじさを感情表現豊かにするりと演じてみせるあたり、やっぱり只者ではないのです。

2人のファッションにも注目したい!

 キム・ヘスの魅力といえば、身長170cmで、出るところは出る、引っ込むところは引っ込む的な欧米人に引けを取らないスタイルもその一つ。だから、レッドカーペット用大胆フォーマルだけに止まらず、どんなファッションも個性豊かに着こなしていて、参考になるのはもちろん、それを見るだけでも楽しいし、圧倒されちゃうし。

ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス
ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス。Netflixシリーズ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」独占配信中
ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス
ドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」のキム・ヘス(左)。Netflixシリーズ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」独占配信中

中でも、ぜひ、注目してほしいのが「ハイエナ」のコーディネート。シャツの襟を大きく出したパンツスーツにハイブランドの大きめバッグや携帯ストラップを斜め掛けするディスコスタイルを基本に、原色スエットをジャケットの下から覗かせたり、カジュアルTにボリュームのあるゴールドのネックレスやリングをジャラジャラと重ねたり、5年前の作品ではありますが、当時のコレクションコーデをキム・ヘス流に取り入れたファッションは、今見てもなかなかの洒落ものです。

映画「密輸1970」
映画「密輸1970」U-NEXTで配信中 ©2023 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & FILMMAKERS R&K. All Rights Reserved.

昨年公開された映画「密輸1970」のファッションは、洒落ものとは違った意味でぜひ、チェックして欲しいのですが、キャンディス・バーゲン(もしくは欧陽菲菲?)ばりのボリューミーな巻き髪ウィッグに、サイケ&ビビッドカラーにフレアパンツという、ヒッピースタイルのようなパンクファッションのような'70年代コーデを当時をデフォルメするように再現していて、これがかなり強烈な印象の組み合わせ。普通に着たら絶対に負けちゃうインパクトなんですが、負けるどころかむしろその強烈さを楽しんじゃってるような懐の深さがあるというか。服を楽しむどころか、弄んでるだ的風情。いやあ、本当に何から何まで舌を巻いてしまうのですよ、キム・ヘス姐さんって。

ドラマ「LOST 人間失格」
ドラマ「LOST 人間失格」U-NEXTにて配信中 © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.
 一方のチョン・ドヨン。しなやかで華奢な身体に服が映えるのは当然といえば当然なのだけれど、彼女が演じる繊細かつ激しい心の内を、シンプルな服のコーデが抑制しているようにも見えて、静謐なエロスというか色香というか、いい感じに色っぽく映るのですね。例えば、ドラマ「LOST 人間失格」。チョン・ドヨンが演じるのは、出版社を辞めて家政婦として働いているヒロインのブジョン。なりたかった作家にはなれず、社会の理不尽に絶望しながら、夫や姑にはそんな心の内を到底理解されず、心を壊してしまうのですが、同じように人生に絶望を感じている男と出会い再生に向かっていく物語で、優しさが静かにじんわりと沁みてくるめちゃ良き作品。でもって、このドラマでブジョンがアイコンのように纏っているのが上質な濃紺のコートと赤いマフラー。そのコーデにヒロインの儚さが滲み出るようで、何度買いに走ろうと思ったことか。
ドラマ「LOST 人間失格」のチョン・ドヨン
ドラマ「LOST 人間失格」のチョン・ドヨン。U-NEXTにて配信中 © JTBC Studios Co., Ltd. all rights reserved.
 最近は映画「キル・ボクスン」('23年)の娘に弱いシングルマザーの凄腕殺し屋役とか、映画「リボルバー」('25年)の復讐に燃える汚職刑事役などスリリングな役どころも多いのですが、ここでのファッションもなかなか粋。50歳にして初のアクションに挑戦したという「キル・ボクスン」では、無頼な男どもにも顔色ひとつ変えずにバッタバッタと刺し殺す伝説の殺し屋の顔と、家では反抗期の娘の子育てに悩むフツーのシングルマザーの顔と、そのギャップが可愛いし笑えたりするのですが、ナイフ一発で男どもを仕留める際のジャケット姿なぞ、めちゃカッコよく。
映画「キル・ボクスン」のチョン・ドヨン。
映画「キル・ボクスン」のチョン・ドヨン。Netflix映画『キル・ボクスン』独占配信中
映画「キル・ボクスン」のチョン・ドヨン
映画「キル・ボクスン」のチョン・ドヨン。Netflix映画『キル・ボクスン』独占配信中
 ちなみにそのうちの一つ、彼女が着ている赤のベルベットスーツは、BTSをはじめ韓国芸能界のセレブ御用達クチュールデザイナー、ジェイ・バック氏の手によるもの。彼のショールーム(JAYBAEK COUTURE)がソウルにあるので、一度チェックしてみるのもおすすめです。「リボルバー」の黒T&黒デニムに派手な刺繍が施されたスカジャンをほぼほぼノーメークで着こなす辛口具合もこなれていて手練れ感満々です。
映画「リボルバー」
映画「リボルバー」U-NEXTで配信中 © 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.
 どうでしたか?キム・ヘスとチョン・ドヨン。全く違った魅力を詰め込んだそのカリスマ性は、同年代としても、ぜひ、チェックしてほしいと思います。
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