大人世代に刺さりまくり!ヒューマンドラマの新名作!【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.54】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、韓国でも大きな話題になった、ベテラン演技派俳優リュ・スンリョン主演の『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』をご紹介。

“誇り”に縛られた50代男の成長ストーリー『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』

 年齢を重ねていくと、自分がそれまでに積み重ねてきたことを“誇り”と思い、知らない間にしがみついてしまうってこと、あると思いません? でも、そんな“誇り”って、実は世間体に振り回されていただけの、とるに足らないちっぽけなプライドでしかなかったりして、それによって本当の幸せとか充実した人生とかを実は見失っていることもなきにしもあらずで……。このドラマのキム部長も多分、そんな一人だと思うのだけど、どうでしょう。
「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」のリュ・スンリョン
Netflixシリーズ「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」独占配信中

“イヤな奴”がイケオジに⁉ 本当の自分と向き合うまでを描く

 主人公のキム部長こと、キム・ナクス(リュ・スンリョン)は、タイトル通り、ソウルに自宅マンションを持ち、人も羨む大企業の部長を務めている50代。そう、エクラ世代の男性なんですね〜。多分、大学もいわゆるSKY(ソウル大、高麗大、延世大)かどっかのいいところを卒業している感じだし。つまり世間から見ると、いわば勝ち組の部類に入るタイプ。
 そんな彼も、まさしく今、人生の岐路に立たされているといいましょうか。次の人事で役員になれるかどうか──その結果次第では、さらなる勝ち組と思われてた立場が、一転して負け組になってしまうやも知れず……。と、こう書いているとなんだか自分もやっぱり世間体に振り回されがちな浅ましくもちっぽけな人間なんだなあと思ってしまうわけなのですが、まあそれは置いといて。
 キム部長には、ヒョン(=兄)とも慕う上司、ペク常務(ユ・スンモク)という強い味方がいるのですね。もう、入社した当初から身を捧げるように働いて働いて、彼(ペク常務)のピンチを何度も一緒に切り抜けてきた──そんな自負があるからこそ、ペク常務が常務の座に就けたのも「半分は俺のおかげだ」と、キム部長は内心思うわけですよ。だからこそ、彼(ペク常務)が必ず自分を引き上げてくれるのではないかって。
 なのですが、最近ペク常務は、若くして部長になった切れ者の後輩ト・ジヌ(イ・シンギ)を何かと頼りにしているようで、それがどうも気が気でない。しかも後輩ト部長は、ソウルで自分よりもはるかに高級なマンションに住んでいるらしいと知り、ますます気が急いちゃう感じ。これは、なんとしてもペク常務にいいとこ見せなきゃって思うキム部長なのだけれど、なんか空回りして逆に失態を犯してしまったり……。
 そんな中、同期入社の親友でもある同僚のテファン(イ・ソファン)が、左遷させられたことから自殺未遂を図ってしまうのです。実はその前から、テファンは何度もSOSを発していたのにも関わらず、見て見ぬふりしていたキム部長。なんとか助かったテファンに安堵したものの、罪悪感のような妙な思いを感じ始めて……。そして、その出来事を契機にしたかのように、今度はキム部長に会社からの不穏な空気が押し寄せてくるというか。
 はたしてキム部長は昇進できるのか、それとも左遷させられてしまうのか、それとも……ということで話は進んでいくのですが、第1話のキム部長が、もうパワハラ・モラハラは当たり前(しかも無意識)、成功は自分のものだが、面倒と失敗は部下のもの、指図は曖昧で、仕事のことより出世のことしか頭になく、偉そうにしているくせにめちゃ小心者で、そう、つまりはすでに遺物と化しているはずの“昭和のオヤジ”そのものって感じなのでありますね。家庭では、専業主婦の妻パク・ハジン(ミョン・セビン)と、おそらくSKYらしき有名大学に通う息子スギョム(チャ・ガンユン)に、こちらも無意識のうちに自分の価値観(つまりは世間体なんだけど)を押し付けているという具合。ソウルに家を持って大企業の部長をしていることが、つまりはこのキム部長の誇りなわけでして。それを、ちびりちびり自慢しちゃったりする姿なんぞ、観てないかたはちょっと想像してみてくださいまし。どう、思います? とはいえ、昭和世代の私的には、そんなキム部長の生き方がわからなくもなく、なあんか身につまされる感じもなきにしもあらずで。
リュ・スンリョン
主演のリュ・スンリョン 写真/Getty Images
 で、このキム部長を演じているのが、『ムービング』のチキン屋を営む不死身の父役とか映画『エクストリーム・ジョブ』の班長刑事役を演じた、そう、つまりは演技派のベテラン、リュ・スンリョンなのですね。ノワールもヒューマンもコメディも、いいもんも悪いもんも自在にこなし、多彩な表現力に味わい深さが増すリュ・スンリョン。今作は、そんな彼のキャラクターづくりが上手すぎて、キム部長がマジでめちゃイヤな奴にしか見えないわけですよ。なもんだから、第1話で離脱しそうになるのですが、韓国ではめちゃ人気だわ、周囲の韓ドラ仲間は推してくるわで、なんとか視聴再開。そしたら、なんと! 多分2025年の私的ベスト5に入っちゃうくらいの名作だったという!
 とにかく、その後のキム部長がすごい。当然いろんな試練が訪れるのですが、そこはずっと順風満帆な会社員生活をしていたせいで、世知辛い世間の免疫ゼロ。だから、メチャ打ちのめされていくのですよ、サンドバッグのごとくズダぼろに。そうして彼は50代にして初めて、ソウルの家とか大企業とかの“誇り”に縛られない本当の自分と向き合っていくことになり……。もう、ここらへんから私なんぞ、ずっと涙、涙なのでありますが、あんなイヤな奴だったキム部長が、どんどんどんどんイケオジになっていくんですね、これが!!!

この作品を支えるのは“妻の存在”。妻役の演技力にも脱帽!

 そして、このドラマで忘れてならないもう一人。それがキム部長の妻パク・ハジン。あんな昭和の遺物的キム部長にも関わらず、ずっと専業主婦として陰で支えながら、家庭を守ってきた妻なのですが、キム部長よりも一足先に自分を見つめ直すのですね。妻として母としてだけでなく、忍び寄る老後の不安に備えるべく一人のパク・ハジンとしても生きたいと。そして、ささやかながら夫の価値観に抗うように世間の冷たい風にさらされつつも仕事を持つ女として少しずつ変わっていくのです。サンドバッグ状態のキム部長を、ずっと優しく見守り応援しながらね。う、う、泣ける。このドラマの彼女の存在にどんなに癒されることか。
ミョン・セビン
妻役のミョン・セビン 写真/Getty Images
 演じているミョン・セビンは、オム・ジョンファ主演の『医師チャ・ジョンスク』で、浮気夫の不倫相手役を演じたのが記憶に新しいですが、古くから時代劇や現代ドラマで活躍している50歳。そう、彼女もエクラ世代。この懐あったかくして透明感ある存在感やブレない優しい強さはぜひとも見習いたいところ。
 息子役を演じるチャ・ガンユンにもぜひ注目を。昨年のドラマ『卒業』の優等生役でデビューしたばかりの’03年生まれなのですが、イ・ジェフン主演の『交渉の技術』とか、『いつかは賢いレジデント生活』とか、脇役ながらも着実にその存在感で爪痕を残してきている彼。今後のライジングスターの予感しかないというか。今回も、素直に育ったいい子ながら大企業を売りにする父に小さき反抗を試みる優等生役をまさにハマり役!という感じで演じております。かわいい女の子にすぐに惚れちゃって、何をするのもその女の子が動機というまだまだ半人前以前の頼りない息子ではありますが、それでも応援したくなる品の良さとかわいさ。ぜひ、彼もまた長〜い目で見守っていただけたらと思う次第。
■Netflixシリーズ「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」独占配信中
山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。インスタ(@harurikuumi)ではドラマシーンのイラスト&勝手な解説を挙げてます。
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