親のサポートのために、まず押さえるべきは?【親が“認知症”になってしまったら⑤】

日々の生活に支障が生じてしまう認知症。となれば、「介護」は避けて通れない。自身も認知症の親を10年以上にわたって介護してきた在宅介護エキスパート・渋澤和世さんに、自身の経験を踏まえた心構えをインタビュー。

教えてくれたのは…

在宅介護エキスパート 渋澤和世さん

在宅介護エキスパート 渋澤和世さん

しぶさわ かずよ●両親の介護を機に、社会福祉士など、福祉に役立つ資格を取得。その経験や知識を生かし、「在宅介護エキスパート協会」を立ち上げ、代表に就任。自治体の介護相談員や、認知症在宅介護講座講師なども務める。
『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』

『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本

渋澤和世 プレジデント社 ¥1,500

入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法まで、幅広く網羅。認知症にかぎらず、介護の入門書としてもおすすめ。

家族だけで介護を続けるのはムリだと割り切る。

「7割できれば合格」くらいの気持ちで臨んで

4年にわたり、父母の遠距離介護を続け、父の死後、認知症の母を夫とふたりの子供と暮らす自宅に呼び寄せ、在宅介護を9年間行ってきた渋澤和世さん。その間ずっとフルタイムで働き続け、在宅介護エキスパートとしても活動している。

「こうした経験から、まず皆さんにお伝えしたいのは、介護に完璧はないと割り切ること。そして、決して無理をしないことです」

認知症の症状には、厄介なものが少なくない。暴言や妄想、徘徊といった問題行動が出ることも。

「介護は毎日のことなので、本当に大変。完璧を求めてがんばりすぎてしまっては、介護者が精神的に追い詰められ、介護うつになりかねません。そもそも今は、核家族化が進んでいるうえに、寿命が延びて介護期間が長くなっているため、家族だけで介護するのはむずかしいのが現状。プロの手を借りながら、『7割できれば合格』くらいの気持ちで臨めばいいのではないでしょうか。介護保険制度の知識を得て、地域包括支援センターに相談に行くなど、情報を集め、親の状態と、自分たちの状況に合ったサポートを利用してください」

介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない。

読者の中には、「大好きな親だから、喜んで介護する」という人もいたけれど、「自分を犠牲にしすぎないで」とも、渋澤さん。

「私は旅行や出張のときは、母を施設のショートステイに預けます。そんなふうに、“今”やりたいこと、“今”しかできないことは、介護より優先するようにしてきました。仕事も続けたかったので、働きながら介護できる方法を考えました。もちろん、自分の時間を確保しようとすれば、その間は、お金を出して母の介護を別の人に頼むことになります。気持ち、お金、時間。どれかを優先すれば、どれかは多少あきらめなくてはなりません。そこもまた、3つとも思いどおりになるのは無理と割り切って、その時々で、優先順位をつければよいのではないでしょうか。自分の生活や、やりたいことを優先したほうが、結果的に、よい介護ができるような気がします。介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにならない。私は、そう思っています」
親のサポートのために、まず押さえるべきは?

介護に正解はない。自分の判断を正当化して。

苦しく、つらかったからこそ工夫をし、考え方を変えた

渋澤さんの母は、昨年他界した。

「今となれば、介護はさほど大変ではなかったといえます。苦しく、つらかったから、自分なりに工夫をし、考え方を変えたおかげでしょう。もちろん、『あのときこうしておけば』という後悔がないわけではありません。でも、介護に正解はないのですから、そのときの判断を正当化し、自分を責めないほうがいいと思います。介護は、気持ちも手も、ほどよく“抜く”のが大切ですよ」

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