ホスピスドクターが贈る「悔いなく生きる」ための2つのアドバイス

人生の有限性に、ほんの少し気づきはじめるのがエクラ世代。例えば親の介護や自分自身の老後など、これからを考えると不安も確かにあるはず。今とこれからを悔いなく生きるためにはどうしたらよいか、ホスピスドクター・小澤先生に助言をいただきました。

その1.“わかってくれる人がいるとうれしい。その存在は、心の支えになる”

ホスピスドクターが贈る「悔いなく生きる」ための2つのアドバイス_1_1
 家庭や社会でたくさんの責任を抱えるエクラ世代。親の介護問題などもその大きなひとつ。“世間に迷惑をかけてはいけない、どうしたらよいか”と、選択に悩む場面に何度も直面すると思います。自分がなんとかしなければ、とがんばられているかたも多いのではないでしょうか。
 私がお伝えしたいことは、ひとりで悩まないでください、ということです。介護の問題にかぎらず、相談できる先は、複数もっていたほうがいい。支えになろうとする人ほど、支えが必要なのです。
 ひとつは、公的な支援機関を複数具体的に知ることです。そして、もうひとつは、ご自身の生活の中で、頼りになる相談相手をもつということです。さまざまな課題を、家庭や仕事と両立するのは、大変なことです。同じような状況でがんばっている人同士の、横のつながりがあるといいですね。お互いに話を聞いてあげたり、聞いてもらったりするうちに、“同じように悩んでいる人がいるんだな”とか、“これでいいんだな” と思えます。どんな問題についてもそうですが、わかってくれる人の存在は、あなたの大きな支えになります。

   

 親の介護の問題はエクラ世代が直面している課題。「大病をした父の介護が母のストレスになっています。老老介護を続けるのは限界だと思うけど、私も自分の家庭があるのでどうしたらよいか……」「父が亡くなり、ひとり暮らしの母が心配。施設、それとも住み慣れた自宅で暮らすのがよいのか。いつ、どうやって決めればよいのかわからない」など、悩みの内容も深刻。
 負担が大きくなるエクラ世代は、"支えになろうとする人こそ、支えが必要" という小澤先生の言葉を周囲にも広めていきたい。「具体的な話になりますが、介護について知っておいていただきたいことがあります。病院だけでなく、お住まいの近くの地域包括支援センターを訪ねてみてください。情報の最初の窓口になります。介護保険、介護サービスについて相談ができます。さらに、どこの医療機関でどんなサービスがあるかなど、医療に関する具体的なことについては、地域の訪問看護ステーションで聞くことができるでしょう」と小澤先生からのアドバイスも。

  

その2.“深い悲しみをやわらげるのは「心のつながり」です”

 40代、50代になると、ご家族、友人を失うことも増えるでしょう。大切な人を失うことは、誰にとっても耐えがたく悲しく、苦しいことです。
 時間がたてば、だんだん癒える心の傷もあります。でも、長い間、悲しみや苦しみを抱え続けることもあります。“時間がたてば忘れられるから”と慰めてもらったり、“残された人は、前向きに生きなくては”と励ましてもらっても、今、どうすることもできない深い悲しみというのはあるのです。
“悲しみを乗り越えること”とは、決して、大切な人のことを忘れることではありません。悲しむ前の状態の自分に戻ることでもありません。
 大切な人を失った苦しみからなかなか立ち直れないときは、自分が抱えている苦しみを、言葉にしてみてください。言葉にすることで救われることもあります。そして、その深い悲しみをやわらげるのは、亡くなった人との“心のつながり”なのです。その人と“心がつながった”と感じられたときのことを、ていねいに思い出してみてください。大切な人とのそんな“心のつながり”は、今とこれからを生きていく支えにもなります。

「姉が大量の薬を飲んで自死しました。時間がたち乗り越えつつありますが、時折耐えられない寂しさが襲ってきます。もうやり直しも何もきかないのがつらいです」「若いころ、妹を突然の事故で亡くしました。私があの日、行ってらっしゃいと送り出さなければと後悔し、悲しみと失望で涙する日が続きました。エクラ世代となった今は、一日一日を明るく健康に過ごし、もし今日、何かあっても悔いがないよう生きよう、と思うように。そして答えを出せないことは、深く悩まないようになりました」など、大事な人との別れをそれぞれ抱えているエクラ読者も多い。小澤先生の教えてくれた考え方を覚えておきたい。

    

教えてくれたのは…

めぐみ在宅クリニック院長
小澤竹俊先生
’63年東京都生まれ。’87年東京慈恵会医科大学卒業。’91年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士過程修了。救命救急センター、農村医療に従事、’94年より横浜甦生病院内科・ホスピス病棟に勤め、病棟長に。’06年めぐみ在宅クリニックを開院。医療従事者や介護人の人材育成のために、’15年に一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立。

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