血糖値スパイクは医学的な診断名ではありませんが、血糖値が急上昇する状態が慢性的に続くと、将来的に生活習慣病を発症する可能性があります。今回は、血糖値スパイクと糖尿病の関係性のほか、「糖尿病が原因で、動脈硬化や認知症、骨粗しょう症になることもある」というお話を矢野先生にお聞きしました。
血糖値スパイクを繰り返すと糖尿病に移行し、動脈硬化がすすむリスクが!
血糖値スパイクは、『食後血糖値が乱高下する現象』を表わす通称です。
「血糖値スパイクを起こしている人すべてが糖尿病予備軍というわけではありません。しかし、血糖値の急上昇を繰り返すたびに膵臓がインスリンを過剰に分泌し続け、膵臓に大きな負担がかかってしまいます。そのため、血糖値スパイクを繰り返している人は、そうでない人に比べて糖尿病に移行するリスクが高くなるといえます」と矢野先生。
また、血糖値の急上昇と急降下を繰り返すと、血管の内側で大量の活性酸素が発生して内皮細胞を傷つけ、炎症が起こります。さらに、血液中の余分な糖がAGEs(終末糖化産物)という物質を作り出し、血管の内皮細胞にダメージを与えてしまうのです。そのため、血管の柔軟性が損なわれ、動脈硬化を起こしやすい状態に。将来的には心筋梗塞、脳梗塞を招く恐れもあるのです。
血糖値が乱高下すると、血管の内側の内皮細胞にダメージを与えます。そうした状態が10年、20年と続くと、やがては心筋梗塞・脳梗塞を招く恐れが!
近年、糖尿病とアルツハイマー型認知症の関係性が注目されている
「近年では、『糖尿病の人は認知症を併発しやすい』ということが知られています。高血糖の状態が続くと脳内の血管の動脈硬化が進んで、血管が詰まってしまったり、傷ついたりして、血管性認知症を起こすリスクがあるからです。さらに、アルツハイマー型認知症が増えていることも、近年の研究でわかってきました。実は、糖尿病の人はそうでない人に比べて、認知症の原因物質とされるアミロイドβを除去する処理能力が低下してしまうんです」(矢野先生)
アミロイドβは脳内にたまるタンパク質のゴミのようなものですが、糖尿病になると、アミロイドβを除去する速度が遅くなり、むしろ蓄積してしまうのだそうです。
一体どうして、糖尿病の人の脳内でアミロイドβがたまってしまうのでしょうか。
高血糖の状態が続くと、アミロイドβを除去するスピードと処理能力が低下して、アミロイドβが脳内に蓄積してしまいます。そのため糖尿病の人は、そうでない人に比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが1.5~2倍高まると言われています。
「通常、血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げようとする働きが起こります。実は、インスリンを分解する酵素には、インスリンとアミロイドβを両方とも分解する働きもあるんです。ところが、糖尿病の人の体がインスリン抵抗性(血糖値を下げようとする働きが鈍った状態)に傾いて、「血糖値を下げなきゃ」とばかりにインスリンがどんどん分泌されると、インスリン分解酵素がインスリンの分解だけで手いっぱいになってしまいます。すると、アミロイドβの分解が追いつかなくなり、たんぱく質のゴミとして、そのまま脳内にたまってしまうのです。それがもとで、糖尿病の人がアルツハイマー型認知症を招くケースがあるのです。
いまや、あらゆる生活習慣病のごく初期の始まりが『血糖値スパイク』であり、『インスリン抵抗性』であるといっても、過言ではないかもしれません」
糖尿病になると、骨粗しょう症になるリスクも高まる!?
糖尿病の人は骨折しやすいって、知っていますか?
実は、高血糖が続いてインスリンの働きが鈍ると、骨の新陳代謝が起こりにくくなり、骨質を低下させることが知られています。そのため、高血糖の状態が続いている人は、骨密度が高くても骨の成分がもろくなり、骨折しやすい傾向があるのだそうです。
私たちの骨には古い骨を壊して、新しく生まれ変わる「骨代謝」の働きがあります。しかし、高血糖の状態が続くと、骨を新しく作り替える働きが低下して骨質が劣化し、骨折しやすくなってしまいます。
近年の研究で、1型糖尿病(インスリンが分泌されない自己免疫疾患型)の人は、健康な人にくらべて3~7倍、2型糖尿病(インスリンが分泌されていても、血糖値を下げる働きが悪い生活習慣病型)の人は1.3~2.8倍も骨折リスクがあることがわかりました。
「一般的に、『骨密度が高い人は骨折しにくい』と認識されていますが、慢性的に高血糖の状態が続くと、血中にたまった糖が体内のタンパク質と結合して、AGEs(終末糖化産物)が合成されやすくなります。このAGEsが体内に蓄積され、骨の主成分であるコラーゲン繊維を変性させることによって、骨質が劣化してしまうのです。そのため、高血糖の人は骨密度の数値が高くても、骨折リスクが高くなります」
血糖値スパイクは百害あって一利なし。10年先、20年先の健康寿命を守るためにも、血糖値のコントロールはエクラ世代の重要課題です。
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