矢野先生が提唱する「1%メソッド」とは、1日24時間の1%(=14分24秒)、約15分間を運動する時間にあてて、血糖値をコントロールする方法。朝昼晩の毎食後に各5分ずつ、軽い運動をすることによって、血糖値の急上昇を抑えることができるのです。たかが1%と侮るなかれ。「継続は力なり」です!
毎食後15分以内に5分間運動すると食後血糖値の急上昇が抑えられる
血液中にブドウ糖が増えてしまう高血糖の背景には、「糖質の摂りすぎ」とともに、肝臓で糖が合成される「糖新生」という働きが関わっています。矢野先生によれば、体内で余剰な糖がつくられる「糖新生」のスイッチをオフにして食後高血糖の上昇を抑えるには、運動が欠かせないのだそうです。
「血糖値は通常、食後30分から1時間の間に一気に上昇しますから、その前に軽い運動を行うのが効果的です。朝昼晩の毎食後5分間、1日トータル15分間の運動を行うことで食後血糖値の上昇が緩やかになります。その際、食後15分以内に運動することがポイント。血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれ、食後高血糖を抑える効果が期待できるからです」と矢野先生。
とはいえ、これまでに運動習慣がない場合、1日3回毎食後に運動するのはハードルが高いといえそうです。
「その場合は1日1回からスタートしたり、1回の運動時間を1~2分にとどめたりしてもOK。体が慣れてきたら、徐々に運動する時間を増やしていくといいでしょう。これまでよりも1%だけ頑張ってみる!という気持ちが大事です。私のクリニックに通院する糖尿病の患者さんたちも、食後に軽い運動をすることによって、血糖値が改善された人たちが大勢いるんですよ」
今回は、矢野先生が提唱する「1%ストレッチ」「1%ウォーキング」「1%スクワット」「1%踏み台昇降」をご紹介します。
まずは「1%ストレッチ」からスタート!背中の筋肉を鍛えよう
別名「バンザイストレッチ」ともいい、立った状態(または椅子に座った状態)で、両腕を斜め上に伸ばしては戻すのを繰り返すストレッチです。背中のなかでも特に大きな広背筋を鍛える効果があります。
「筋肉はエネルギーの貯蔵庫。筋肉を鍛えると血液中に増えたブドウ糖が筋肉に取り込まれ、血糖値の乱高下を抑えることができます。ジムに通ってマシンを使った筋トレをしなくても、このストレッチで十分に効果が得られます」
1. 両足を肩幅に開いて立ち、背筋を伸ばします。手を軽く握ったまま両腕を曲げて、顏の真横に置きます。
2. 両腕を斜め上に伸ばしてバンザイのポーズをします。その後、肩甲骨を背骨に引き寄せるイメージで両腕をゆっくりと下ろし、元の姿勢に戻ります。この動きを5分間繰り返しましょう。疲れたら、休みながら行ってもOK。
「1%ウォーキング」で下半身の筋力をアップ
「1%ストレッチ」に慣れてきたら、「1%ウォーキング」も取り入れてみましょう。歩くときに意識したいのは、小股で素早く歩くのではなく、大股でゆっくりと地面を踏みしめるように歩くこと。
背筋を伸ばし、おなかを引き締め、あごを引いて、まっすぐに前を向いて歩きましょう。足を着地させるときは、地面や床を踏みしめるようなイメージで、少し腰を落とします。
歩数を稼ぐことが目的ではないので、屋外ではなく、自宅の廊下やリビングを行ったり来たりしてもOK。通常の1.5倍くらいの歩幅で、下半身に意識を集中して歩くことで、大腿筋を鍛えることができます。
「運動と血糖値の関係を調べた近年の研究により、食後15分のウォーキングを2カ月続けたところ、空腹時血糖値が平均20ml/dlほど下がり、ヘモグロビンA1c(過去1~2カ月の血液中の糖の状態を評価する指標)の数値が平均1%下がることが明らかになりました。『1%ウォーキング』を続けると、下半身の筋肉量が増えて、血液中のブドウ糖を効率よく消費できる体質に変わっていきますよ」
「1%スクワット」を日課にすると血糖値が下がりやすい
食後に行う1%ウォーキングと同じくらい、下半身の筋力を鍛える効果があるのが「1%スクワット」。腰を落とすときに猫背になると、下半身の筋力をアップする効果が弱まるので、背筋を伸ばして行いましょう。
「近年の研究で、スクワットを1日3セット(1セット10回×3)行うと、血糖値が下がることがわかっています。『自分の体重の負荷がかかってきつい』と感じる人は、椅子の背につかまりながら行ってもOKです」
1. 足を肩幅よりも大きく開き、つま先をやや外側に向けて立ちます。両腕を胸の前でクロスさせ、背筋を伸ばして立ちます。
2. おしりを後ろにつき出すようにして、5秒間かけてゆっくりと腰を落としていきます。太ももが床と並行になったら、その状態を2秒間キープ。5秒かけてゆっくりと元の態勢に戻ります。この一連の動きを約15秒かけてゆっくりと行い、休憩をはさみながら5分間繰り返しましょう。
「1%踏み台昇降」は大腿筋の筋力アップ効果が倍増
最後に紹介するのは、小さな台を使って行う「1%踏み台昇降」です。こちらは大股ではなく小股が基本となりますが、足を上下する動きが加わることによって、大腿筋を鍛える効果が倍増します。大腿筋は体のなかでも大きな筋肉。大腿筋に血液中のブドウ糖が取り込まれることによって、食後血糖値の急上昇を防ぐことができるのです。
「踏み台昇降を行うときは、階段の1段目を利用して行うほか、台を使わずにその場で足踏みするだけでもOK。休みなく続けるのはハードなので、体力的にきついと感じたら、途中でストップしても問題ありません。あまりストイックにならず、『1%だけ頑張ってみよう』と考えるのが長続きさせるコツです」
1. まずは背筋を伸ばして立ち、腕は軽く曲げて体の横に置きます。体が前傾しないように注意しながら、右足を台の上に乗せます。
2. 左足を台の上に乗せて、台の上に乗った状態になります。次に、右足を台の上から下し、左足も元の位置に下して、最初の姿勢に戻ります。この一連の動きを約15秒かけてゆっくりと行い、休憩をはさみながら5分間繰り返しましょう。
「1%」を積み上げていくことで、いつの間にか血糖値が整っていく
1日の1%=15分間の運動であっても、毎日続けることが血糖値のコントールに役立ちます。また、早食いの人は食後血糖値が急上昇しやすいので、『食事時間をあと15分(1日の1%)のばして、よく噛んで食べよう』と意識するのも1%メソッドの範疇といえます。自分なりの1%を無理なく積み上げていくことで、いつの間にか血糖値の乱高下が改善されていきますよ!」
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