家族のあり方は、人それぞれ。“近い”距離で、最善のケアを模索した俳優・羽田美智子さんが語る、大切な親との日々について。
自己犠牲になるならやらないほうがいい
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東京から実家のある茨城へ主な拠点を移し、高齢の母親を支える羽田美智子さん。週3日デイサービスを利用し、近所に住むふたりの兄や叔母とも協力態勢をとっている。
「母は頭はしっかりしているし、寝たきりでもありませんが、足が少し不自由で。自分でできることを奪わないように、必要なときだけ誰かしらが手助けするようにしています」
転機は4年ほど前。父親の死をきっかけに、少しずつ母親の生活にほころびが現れた。掃除や食事がおろそかになり、入浴中にヒートショックを起こすなど、「今までと違う」ことが次々と起こりはじめたのだ。
「母はとてもしっかりした人だったから、最初は『嘘でしょ?』の連続。現実を受け止めきれなかったし、兄たちとうまく連携をとれないもどかしさもありました。でもその後、母が骨折して入院し、車椅子が必要になり、いよいよ向き合わざるを得なくなったのです」
当時、東京での仕事が立て込んでいた羽田さんは、いったん母親を施設に預けることに。ところが、施設のルールや雰囲気が母親に合わないと感じることが続き、心配や申しわけなさが募っていった。
「ずっと不平不満をいわず気丈だった母が、初めて『早く出たい』と弱音を吐いたんです。それを聞いて決心しました。あれこれ気を揉むくらいなら、私が面倒を見よう、残された時間をできるかぎり一緒にいようと」
最初はうまくいかないことばかりだった、と振り返る。問題にぶつかるたびに現実的な対処法を探し、ふたりの兄に「腹を割って話して」協力を求め、行政やケアマネージャーからアドバイスをもらいながら、最近ようやく見守りのかたちが整ってきたのだという。羽田さんが常に心に置いているのは、無理をせずまわりを頼ること、自分のために行動していると忘れないこと。
「ひとりで抱え込んだり、行動と心が一致しないと、私も母も不幸になってしまう。自己犠牲の気持ちや被害者意識が少しでも出てきたら、やらないほうがいいんですよね。母は申しわけない気持ちがあるようで、よく謝ってくるんです。だから伝えています。『お母さんが大事だから、そばにいさせてね。私がしたくてしているのよ』『仕事も大事だからセーブしないよ。応援してね』って」
「介護はギブではなくテイク。たくさんの愛をもらっている」
――俳優・羽田美智子さん
母は最後まで私に大事なことを教えてくれる
これまで自由に人生を謳歌してきたという羽田さん。「まさか50代後半で親と過ごすことになるなんて、ねえ」と笑うが、その想定外から得たものは、思いのほか大きかった。
「母は、私や兄、叔母、介護士さんなどに、ことあるごとに『ありがとう』というのです。私が仕事から戻っただけで『わあ、みっこが今日も帰ってきた! うれしい!』と喜んでくれる(笑)。その感謝の言葉と素直な心にみんなが救われ、やりがいにもなっているんです。それに、たいていのもめ事は『やってもらって当然』という傲慢から生まれるんだよなと、自分の言動を反省したりもして。そして今の母の姿は、私の将来の姿でもある。先を勇敢に歩いて大事なことを教えてくれている気がして、つくづくかなわないなと」
見守りのかいあって、羽田さんの母親は「しっかり食べてよく眠り、たくさんおしゃべりして」穏やかに過ごしているという。
「一緒に時間を過ごすようになって、母は目に見えて元気になりました。もちろん、今後の不安はあります。でも、前もって策を講じても思うようにいかないのが介護なので。なるべく後悔しないように、笑顔で見送れるように。母と過ごす今を大事にしていきたいです」
はだ みちこ●’68年、茨城県生まれ。映画や舞台、旅番組など幅広く出演。YouTube『羽田美智子のChange of Life』では更年期世代の生き方のヒントを発信して人気に。番組発のエッセー『羽田美智子、素敵なおばさんやってます』(KADOKAWA)が10/2発売。
撮影/藤澤由加(羽田さん) ヘア&メイク/木下 優(ロッセット/羽田さん) スタイリスト/入江未悠(Linx/羽田さん) 取材・原文/熊坂麻美 ※エクラ2026年11月号掲載