宇宙一の美貌に会いに。映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』公開!【ウェブエクラ編集長シオヤの「あら、素敵☆ 手帖」#13】
3/24から日本公開される映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』をご紹介させてください。”最も大きな影響力をもつアーティスト”と言われたデヴィッド・ボウイが、2016年でこの世を去るまでの、膨大な映像の記録と音で構成された映画です。
ウェブエクラ編集長 シオヤ
50代女性のための雑誌&ウェブメディア「エクラ」のウェブ担当編集長。155cmのアラフィー。ビューティ・小柄担当多め。鈍感肌。盛ってます。
突然に個人的な話で恐縮なのですが……。1984年の12月、テレビで放映された映画『戦場のメリークリスマス』を見ていた当時12才のシオヤは、雷に打たれたような衝撃を受けました。「この、ものすごくキレイな男の人はだれ……!?」 大好きだった坂本龍一やビートたけしと同じ画面で、柔らかそうな金髪をかきあげて英語を喋る人。それが、デヴィッド・ボウイとの出会いでした。来日公演もし、人気絶頂だった当時のボウイのことを覚えているエクラ世代の方もいらっしゃることと思います。親子ほど年の離れたボウイに夢中になった私は、UKロックなどの音楽だけでなく、彼が扉を開いてくれた本や映画、絵画に演劇、カルチャー全般に大きすぎる影響を受け続け、気がつけばファン歴は40年近くに。なんというか私の「心の父」のような存在で、ずっとこれまでの人生を照らし続けてきてくれた人であります。
シオヤのようなボウイファン、というのは世界中にとても多くいます。2016年の1月に彼は69才で亡くなりましたが、その直後からSNSでは世界中のファンが、「私とボウイ」について語り始めました。没後、日本だけでもボウイについての著作がどれだけ出版されたことでしょう。音楽や映像もしかり、です。この『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』という映画は、ボウイをリスペクトしてやまないアメリカ人の映画監督が、膨大な彼の資料を1日10時間以上、週に6日、2年間見続けて、そこから選び出した音や映像を構築して作られました。クレイジー!の一言です。ドキュメンタリーでもなく、もちろんMVでもない、ただひたすらデヴィッド・ボウイという人を、彼の姿と声と共に表現した映画なのです。
映画は章立てされているわけではありませんが、キャリアの若い頃からゆるやかに時代を追っていきます。この画像は、1972年の彼の代名詞的アルバム「ジギー・スターダスト」のツアーで、グラムロックのスターとして、世界中でブレイクした25歳頃のボウイの姿です。デヴィッド・ボウイという人は、意図的にかなり激しく「キャラ変」を続けてきた人でした。なので「自分が知っているデヴィッド・ボウイという人と随分違う」という印象を持たれる方もいると思います。ジェンダーフリーやLGBTといった言葉もなかった50年前に、彼は顔にメイクを施し、山本寛斎デザインのジャンプスーツを着、ジェンダーも人種も惑星さえも?超えたキャラクターで若者たちを熱狂させました。両性具有的、宇宙的……といった言葉で語られていたボウイは、このツアーで1973年に初来日をしています。なんと飛行機ではなく、シベリア鉄道と船で! 当時私がファンだったら(まだ赤ちゃんでしたので)「こんな遠い極東の国まで、よくぞ来てくれました!!」と感涙にむせび泣いたに違いありません。その遠い極東のニッポンを、ボウイはその後何度も訪れます。
「キャラ変」はルックスだけではありません。音楽性も、時代時代でかなり変わっていきます。グラムロックから、アメリカに渡ればソウル、ベルリン在住時代の現代音楽、80年代に大ブレイクしたポップなサウンド……。映画で使われているオリジナルミックスは、およそ40曲。亡くなる直前まで、新しい音楽にチャレンジし続けた彼の音を存分に楽しむことができます。試写を見せていただいたばかりですが、もう今からIMAXシアターへ、再び見に行くことが楽しみでなりません。
映画では、アメリカ、ヨーロッパにアジア(もちろん日本も!)、世界中を駆け巡るボウイの姿が次々と映し出されていきます。この画像は(おそらく)1983年のワールドツアーの時のプライベートな一コマ。ステージで大歓声を浴びる一方で、彼は香港の街中にまぎれ、バンコクの怪しげなバーで飲み、シンガポールを軽やかに歩きます。スーパースターなのに! シオヤは長年、「私はなぜこの人に惹かれるのだろう」と考えてきましたが、その答えは宇宙一の美貌(と、勝手に思っています笑)であるだけでなく、彼はつくづく「未知のものを恐れない、コスモポリタンである」ということに尽きるように思います。実は生まれ育ったロンドンを20代半ばで離れてからは、アメリカ、ドイツ、スイス……と、ボウイは実に様々な土地に居を構えてきました。京都にしばらく滞在していたこともあります。もちろん英語を話す白人男性である、ということがそれをしやすくした点はあったかもしれませんが、若い頃から、様々な人種の人々とセッションし、どんな土地の人々とも交流し、そこの食事を楽しみ、歌い……まだ様々な差別や偏見が今よりはるかにはびこっていた50年前から、そういったことができたスーパースターは、実は少ないのでは、と思っています。
そんなボウイが、映画の後半、ソマリア出身のスーパーモデルのイマンと結婚し、安住の地を見つけた、と語る姿に心を打たれます。ま、当時の私は「えーっ!ボウイ、結婚しちゃうの!!」と歯ぎしりしたものですが。この後、90年代後半にはいち早くインターネットの可能性に気づいて、自らのサイトを立ち上げ、インターネットがつくる、アーティストと人々の間の新しい関係性を予見し喜び、誰よりも早く自分の音楽をネットで配信したボウイ。世界中を軽やかに歩き、常に新しいものを取り入れ、最後まで変化を恐れず、変化し続けたデヴィッド・ボウイの、美しく激しい、めくるめく変化を、この映画で堪能していただきたいと思います。
そんなボウイが、映画の後半、ソマリア出身のスーパーモデルのイマンと結婚し、安住の地を見つけた、と語る姿に心を打たれます。ま、当時の私は「えーっ!ボウイ、結婚しちゃうの!!」と歯ぎしりしたものですが。この後、90年代後半にはいち早くインターネットの可能性に気づいて、自らのサイトを立ち上げ、インターネットがつくる、アーティストと人々の間の新しい関係性を予見し喜び、誰よりも早く自分の音楽をネットで配信したボウイ。世界中を軽やかに歩き、常に新しいものを取り入れ、最後まで変化を恐れず、変化し続けたデヴィッド・ボウイの、美しく激しい、めくるめく変化を、この映画で堪能していただきたいと思います。
CDやTシャツといったグッズとともに、ステージ衣装も飾られています。フォトスポットもあるので、ぜひ! マグカップを買おうか迷いましたが、既に家にはボウイマグカップが2つあり……。そんな中、シオヤのおすすめはこちらの写真集です。
『時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA - 鋤田正義が撮るデヴィッド・ボウイと京都』という名のこの写真集は、70年代初頭から、ボウイを撮り続けてきた写真家・鋤田正義氏が、80年に京都で撮影したボウイの姿を中心にまとめられた写真集です。映画の中にも出てくる「阪急電車に乗るボウイ」の写真や、街の電話ボックス(!もうないでしょうね…)に入るボウイ、喫茶店でセブンスターを吸いながら談笑するボウイ、ライブハウスで若者たちと踊るボウイ……と、そこに収められた京都の町を自在に楽しむボウイの姿に驚かされます。人々に交じって駅のエスカレーターに乗る姿は、まるで「ニッポンに降り立った美貌の宇宙人」のよう! 昨年、京都で行われたこの写真集の展示を見に行ったシオヤは、同じようにボウイが行ったお蕎麦屋さんに入り、錦市場の玉子屋さんを訪ね、画材屋さんで梅皿を買い……と40年後の聖地巡礼を楽しみました。中にはファンにはよく知られた写真もありますが、「日本を楽しむボウイ」の貴重なカットを、今よくぞこの一冊の形にまとめてくださったものだなあ……と感激しています。今なお、多くの人に愛されているデヴィッド・ボウイという人は、死しても人々の心に創造の種を蒔き続けているようです。
映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』
3月24日(金)IMAX®️ / Dolby Atmos 同時公開
ⓒ2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
監督・脚本・編集・製作:ブレット・モーゲン『くたばれ!ハリウッド』『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』
音楽:トニー・ヴィスコンティ(デヴィッド・ボウイ、T・REX、THE YELLOW MONKEYなど)
音響:ポール・マッセイ『ボヘミアン・ラプソディ』『007 ノータイム・トゥ・ダイ』
出演:デヴィッド・ボウイ
2022年/ドイツ・アメリカ/カラー/スコープサイズ/英語/原題:MOONAGE DAYDREAM/135分/字幕:石田泰子/字幕監修:大鷹俊一
配給:パルコ ユニバーサル映画 宣伝:スキップ
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