50代必見! デビュー50周年を記念した「槇村さとる」展がスタート!【ウェブエクラ編集長シオヤの「あら、素敵☆ 手帖」#52】

「愛のアランフェス」に「おいしい関係」、「イマジン」、そして12月に約10年の連載が完結した「モーメント」まで、50年にわたり漫画を描き続けてきた槇村さとる先生。その初の展覧会が、東京・弥生美術館でスタートし、槇村先生にもお話を伺ってきました!
ウェブエクラ編集長 シオヤ

ウェブエクラ編集長 シオヤ

50代女性のための雑誌&ウェブメディア「エクラ」のウェブ担当編集長。155cmのアラフィー。ビューティ・小柄担当多め。鈍感肌。盛ってます。
「槇村さとる先生のデビュー50周年を記念して、展覧会が開かれます」
そうメールをいただいて、「……ええっ!50周年ですか!?」と心底驚いたシオヤです。
これまで何度かお目にかかったことがありましたが、いつもおしゃれで素敵な槇村先生と「50年」がすぐに結びつかず……。添付されていた資料を読むにつれ、デビューが10代とお若かったことを思い出し、その膨大な量の作品の中から選りすぐりの原画が展示されると聞いて、ワクワクしながら内覧会へ伺いました。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展ポスター
会場は、本郷の東大キャンパスにもほど近い「弥生美術館」です。入口には先生の代表作「愛のアランフェス」を配したポスターが飾ってありました。今回の展覧会では、ほぼ初出の約350点もの原画が展示されるそうです!
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示会場
会場は1階と2階に分かれ、7つのコーナーが作られています。そしてこの日は、槇村さとる先生ご本人が来場され、お話をしてくださいました!
漫画家 槇村さとる先生
いつお会いしても、とてもおしゃれな槇村先生。そしてご挨拶した途端「エクラのこの前の特集のね……」と切り出され、いつもエクラを読みこんでくださっているとか! うれしい……(泣)! ちなみに身に着けていらっしゃる素敵な数字モチーフのネックレスは、ルル フロストのですよね……? と伺うと「そうそう、前にバーニーズ ニューヨークで買ったの。最近は、家にあるMYヴィンテージを探し出して、着たり付けたりすることも多くて」と、笑顔でお話してくださいました。
槇村さとる先生と学芸員さんとのトーク風景
学芸員さんとのトークでは、華やかな原画を前に、この50年を振り返って「いつも、女の子への応援のメッセージを描いてきた」と槇村先生はおっしゃいます。「自分が10代、20代のときに、聞いておきたかった、周りの大人に言ってほしかった! というメッセージ」とも。それは「あなたが生きている、存在するだけでOK!」とすべてを肯定してくれるメッセージ。 ……そう聞いて、胸が熱くなりました。と同時に、これだけの長い間、槇村先生の作品が愛されてきたその理由がわかったような気がしました。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
展示に目を移せば、ほぼ時系列に沿って展示されている会場に、なんとこんな可愛い展示も発見! 手前の、鉛筆で描かれた作品は、先生の小学生時代のものでしょうか? きちんとコマ割りされ、構図も大胆! さすがです……。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
1973年にデビューした槇村先生の人気を確固たるものにしたのが、1978年の「愛のアランフェス」。フィギュアスケートを題材にし、その後のダンス漫画と共に「槇村さとるといえば、美しく躍動的な動き」の絵の印象を強く持たれる方も多いと思いますが、先生のお話によると「当時の担当編集さんが『この子は人間が描けないから、スポ根漫画を描かせよう』と言って、スケートの漫画を描くことになった」とのこと。今では信じられないですが……。しかし、原画の美しいこと! 線の美しさ、色の鮮やかさ、構図のおしゃれさ……これはぜひ、会場でじっくりと見てほしいです!
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
代表作「白のファルーカ」は、1987年開始の作品だそうです。この頃を振り返って「30歳過ぎで、曲がり角でしたね。結婚も出産もせず、新しい若い作家さんも出てくるし、このまま別冊マーガレットで描いていけるのか、その頃はもっと大人むけの雑誌もなかったし……」と葛藤を抱えられていたといいます。しかし、そんなお話を伺いながら拝見する原画は、圧倒的に美しいです。モノクロの原画も、スクリーントーンや写植文字が貼られていて、絵の美しさはもちろんですが、今や歴史的史料といった感があります。
そして、「N★Y バード」「Do Da Dancin’!」……ダンスを描いた作品の躍動感といったら!
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
学芸員の方が「槇村先生は、実際に全て自分で踊ってみてポーズを描いている、という噂は本当ですか?」と投げかけると「……それはデマです! そんなのできるわけないでしょ!」と笑って答えられた先生ですが、実は社交ダンスをされていて、その美しいお写真も会場には飾られているので、ぜひチェックしてみてください。
目にする原画、すべて「これを手描きで描いているのか……」と目を疑いたくなるほど美しい作品ばかり。ぜひ足を運んで実物を見ていただきたいのですが、色彩の美しさとおしゃれさに目が釘付けになった展示を、いくつか。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
……あああ、可愛いです! 槇村先生の作品って、本当にその時その時代の、可愛いファッションやヘアメイクがしっかり取り入れられていてスゴい! といつも思うのですが、こうして何十年も前の作品を見ても、それが決して古臭く見えないのもまたスゴい! と感心させられました。「流行、とかはとくに意識していない」と、槇村先生は語っていらっしゃいましたが「昔の人がここにきた、とは思われたくないし、いつも”今”の人でありたい」とも。その”今”の空気感がしっかり反映された作品たちは、やっぱりおしゃれで、美しく、見ごたえがあります。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
「おいしい関係」は、ドラマ化もされましたしファンの多い作品ですよね。ヒロインの百恵ちゃんが、健やかで可愛くて。そしてそんな百恵ちゃんを見守る人気のキャラ「千代ばあ」の名言?も飾られていました。千代ばあは、槇村先生が「将来、なりたい」姿なのだそうです。
そしてこの頃、なんともう一作抱えていた連載が「イマジン」!
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
実はシオヤが個人的に一番思い入れのある槇村作品が、この「イマジン」でした。大学を卒業して、集英社に入社し社会人生活が始まったのが1994年。その年に集英社から創刊された雑誌「コーラス」に槇村先生が連載を開始されたのが「イマジン」でした。主人公の有羽ちゃんが自分と同世代のOLさんで、当時在籍していたノンノ編集部で右も左も分からない新入社員生活をしながら「コーラス」が届くたびに(同じ社内なので、新しい号が出ると各部署に届けられるのです)、食い入るように読んでいたのを思い出します。30年前、このお母さんの美津子さん像は、とても新鮮で憧れました!
しかし「おいしい関係」と「イマジン」を同時連載って、ものすごく大変なことだったのでは……? どちらも連載も長く、ドラマ化もされた大人気作です。「いま思えば、体力あった(笑)! 描きたいという意欲がとてもあったし、いい時代でした。2本連載があるのは大変だけど、それぞれ気分も変わるしね」と槇村先生は笑顔でおっしゃいますが、一方で「言葉のリアリティに重点をおくようになった」ともお話されていました。千代ばあや、美津子さんのセリフもそうですが、若かったシオヤも、どれだけそのリアリティのある言葉に励まされてきたことか……。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
そしてもう一つ、2007年連載開始の「Real Clothes」も忘れてはいけません。百貨店の布団売り場から、婦人服フロアに突然異動し、その華やかなファッション業界にくるくると巻き込まれていくヒロインの絹恵。雑誌「YOU」でこの第1話を読んだときの衝撃を、昨日のことのように思い出せます。これがまた、働き方や考え方、着る服まで、それこそ当時の働くアラサー女子の「リアル」で「他人事じゃない感」がハンパなく。絹恵に自分を重ね、また自らを応援してもらったエクラ世代は多いのではないでしょうか。
東京・弥生美術館で開催中の槇村さとる展 展示風景
「モーメント ー 永遠の一瞬ー」は2014年に連載スタートし、この2024年1月号で完結しました。なんと10年近くもの長期連載! 槇村先生は「ちょうど体がつらい時期に連載が始まって……」とおっしゃっていましたが、その間には、浅田真央さんや羽生結弦さんといったスターも活躍し、フィギュアスケート人気がさらに浸透した10年間だったと思います。本当にお疲れ様でした! そして前髪ぱっつんの雪ちゃんの原画がまた、本当に美しいです……!
槇村先生が実際に使われている画材の展示
槇村先生が実際に使われている、画材の展示もありました。使い込まれた筆や、インクの残る梅皿……子供の頃から憧れたプロの「漫画家の画材」は、グッと引き込まれます。中央にある可愛いブルーの丸い缶は、確かシオヤも持っていたリップバームの缶。先生にお聞きすると、可愛い缶が好きで、コフレに入っていたものをずっと愛用されているそうです。
  • 槇村さとる先生のコミックスやエッセイ、単行本の販売コーナー

  • 槇村さとる先生のコミックスやエッセイ、単行本の販売コーナー

会場では、これまでのコミックスやエッセイなどの単行本も販売。そして今回の展覧会とともに刊行された「THE槇村さとる」という画集も! 大人のおしゃれや、更年期や、エクラ世代なら興味津々のテーマについてもよく書かれている槇村先生のエッセイも、おすすめです。
  • 槇村さとる先生のグッズの販売コーナー

  • 槇村さとる先生のグッズの販売コーナー

  • 槇村さとる先生のグッズの販売コーナー

グッズも発売されています。なにせ槇村先生のイラストって、それだけで可愛いので、グッズになってもどれも可愛くて、目移りします……。
槇村さとる展限定のコラボドリンク
展覧会場では、この期間だけのコラボドリンクも。美容に造詣の深い槇村先生のアイディアによる「なつめ、生姜、オレンジ、はちみつ、クコの実」の5種類がブレンドされた「食べる紅茶」です。槇村作品の名セリフが書かれたミニしおりが一つ付いてくるそう。シオヤもいただきましたが、甘くて香りもよく、一日の疲れがホッと癒されるドリンクでした。
槇村さとる展 展示会場のメッセージコーナー
会場2階には、こんなメッセージコーナーも。槇村先生に読んでもらえると思うと、うれしいですね!
「いつも、女の子たちを応援したい、という気持ちで描いてきた」という槇村先生。10代のデビューから50年続けてきて、進歩し続けているな、とご自身で感じられることはありますか? と伺ったところ「自分の意見や見方が迷わなくなったこと」と答えてくださいました。私たちアラフィー世代も、文字が読みにくくなったり、体力は激落ちしたり、とつい日々の「できなくなってきた」ことを数えてしまいがちですが、この先生のお答えには、勝手ながらなんだか「大丈夫」と首を大きく縦に振ってもらえたような安心感を抱きました。また「若いころ、この先辛いことがいっぱいあるに違いない、と思っていたし、そのことについてしゃべってくれる人が欲しかった」とも。だから先生の作品は―漫画も、エッセイもーいつも「女の子の味方」なんですね。もう若くはないですが(笑)、先生よりちょっと年下のエクラ世代の一人として、これからも槇村先生のメッセージを追いかけたいと思います。

デビュー50周年記念 槇村さとる展ー「愛のアランフェス」から「おいしい関係」「モーメント」までー> 

弥生美術館 

〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3

☎ 03-3812-0012

会期 2024年1月5日(金)~3月31日(日)

休館日 月曜日〔ただし2月12日(月・祝)開館〕、2月13日(火)

開館時間 午前10時~午後5時(入館は16時30分まで)

入館料  一 般 1,000円/大・高生 900円/中・小生 500円

※竹久夢二美術館と二館併せて観覧可能。

下記の会期で、カラー原画の展示替えが行われます。

Ⅰ期/1月5日(金)~2月4日(日)

Ⅱ期/2月6日(火)~3月3日(日)

Ⅲ期/3月5日(火)~3月31日(日)

▶︎公式サイトはこちら

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