「特に閉経期を迎えるエクラ世代は、血管の老化を防ぐため、“待ったなし”で生活改善を始める必要があります」
そう語るのは、血管について多数の著書がある池谷敏郎先生。
「人間の体内には総延長が約9~10万㎞(約地球2周半分の長さ)にもおよぶ血管が張りめぐらされ、生きるために必要な酸素や栄養素を体の隅々まで届けています。いわば血管は、生命を守るための“ライフライン”です。ところが、生命線である血管を若々しく保ち、血液をスムーズに流せる“血管力”は、50歳前後から急激に低下するのです」
若いころの血管はしなやかで弾力性があり、血液がサラサラ流れている。しかし、加齢とともに柔軟性が減って血管が硬くなり(=動脈硬化)、さらに食生活の乱れやストレスなどが原因で血管内壁にこぶ(プラーク)が生まれて、血液の流れが悪化。こうして血管系疾患のリスクが高まっていくという。
「血管の老化である動脈硬化は、不規則な生活や運動不足、偏った食事、ストレスなどが積み重なって起こりま
す。女性の場合、更年期に女性ホルモンのエストロゲンが減少することも大きいですね。エストロゲンには血圧の上昇やコレステロールの増加を抑える働きがあり、若々しくしなやかな血管をキープすることに役立っています。それが、閉経を迎えると分泌量がゼロに近い数字までダウン。血管力を保つ最強のアイテムを失った結果、脳梗塞や心筋梗塞のような血管事故が起きやすくなってきます。特に50歳からの10年間で、血管の老化は加速度的に高まり、ついには男性を上まわるスピードで劣化するようになるんです」
アラウンド50は、今後、血管年齢が上昇していくのか、それとも若々しさを保てるかのターニングポイント。
「血管の老化を完全に防ぐことはできませんが、ある程度の血管の若返りは何歳になっても可能。スキンケアと同じように一刻も早く対策をスタートすることが大切なのです。ところが、“若いころから体型が変わらないから”“周囲の人に『年齢より若く見える』といわれる”“昔から血圧が低かった”……などの理由で健康を過信し、血管力の低下を自覚しないまま
50代を過ごす人が少なくありません。下のチェックシートを使って、自分の血管の老化度を確認しましょう。健康診断を定期的に受けている人は、血圧や血糖、脂質の数値からも、現在の血管の状態を知ることができます」
血管力の衰えとともに、①体がだる重く疲れやすい、②肩こりや腰痛が続く、③下肢にむくみを感じる……など、さまざまな身体症状が現れることも。
「いずれも血行障害に起因する不調と考えられ、特に③のむくみは、血液が詰まって下肢にこぶができる下
肢(かし)静脈瘤(じょうみゃくりゅう)の前ぶれである危険性も。気になる症状があるという人は、病院で血管の状態を調べる検査を受けましょう。脈の形や伝わる速さから血管の硬さを測定する“血管年齢検査”、首を走る動脈を超音波で映し出し、動脈壁にできた動脈硬化のこぶの状態を直接探る“頸動脈エコー検査”などがあります」